日本養護教諭教育学会は、10月9日・10日の両日、大阪府教育会館たかつガーデンで、「第18回学術集会」を開催する。「今、改めて養護教諭の教育を問う」をメインテーマに、講演やシンポジウムを通じて、養護教諭教育について話し合われる。見どころの紹介と、学会長である四天王寺大学の楠本久美子教授のインタビューを紹介する。
講演は3講演行われ、学会長・楠本久美子氏による基調講演「これからの養護教諭養成教育を考える」に始まり、奈良県医師会(元奈良県教育委員長)の岡本和美氏による教育講演「今、学校保健に求められる健康教育」、四天王寺第111世管長の奥田聖應猊下による特別講演「仏教と教育」が行われる。
シンポジウムは、大阪教育大学の北口和美氏をコーディネーターに、「今、求められる養護教諭の教育」について、大阪府学校保健会養護教諭部会会長で熊取町立西小学校の日垣慶子氏、三重県教育委員会事務局研修指導室主幹兼研修主事の南川慶子氏、日本養護教諭養成大学協議会会長で岡山大学大学院教育学研究科教授の高橋香代氏がシンポジストとなり、話し合われる。
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ワークショップは兵庫大学の辻立世氏をコーディネーターとする「アレルギーのある子どもへの対応」と、四天王寺大学の津川絢子氏をコーディネーターに、阪南中央病院婦人科医師で性暴力救済センター大阪SACHIKO代表の加藤治子氏が「産婦人科診察室からみた10代の生と性」について話す。
他、ランチョンセミナーやポスター発表などが多数催される。
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期日/10月9日(土)午後0時30分〜10日(日)午後4時
会場/大阪府教育会館たかつガーデン
参加費/当日4000円、学生2000円
問合せ=072・956・3181(四天王寺大学教育学科保健教育コース楠本研究室)
‐「日本養護教諭教育学会」の設立とその役割について教えてください。
1997年に設立され(前身は1992年設立の全国養護教諭教育研究会)、養護教諭の資質を上げることを目的としており、現在約700人が所属しています。養護教諭には専修、1種、2種と免許状があり、養成機関も教育系、看護系、学際系等と多種多様で、共通した教育内容を全員が受けているわけではありません。とは言え、子どもたちの健康全般に関わる必要があります。
そこで、それぞれ養成機関が違っても養護教諭に共通した「基本の柱」を構築しようと、本学会が設立されました。活動内容は、「学術集会」を研究発表の場として設けているほか、年に3回機関誌「ハーモニー」を発行し、年に1回学会誌を作っています。
‐現場の養護教諭が抱える課題は何でしょうか。
養護教諭は基本的に一人職種です。自らの職務を的確に取り組む努力や校内の教員とともに、目標に向けて協力する力が必要です。
現在の子ども達の健康課題の多様化・複雑化に伴い、学校内外、特に保護者との連携、さらに子どもたちの訴えを見極める洞察力と課題解決に向けた実践的能力がより求められるようになっており、普段の研鑽が重要になってきています。体を見ながら心を見る、心を見ながら体を見る、心と体は一体のものです。養護教諭は両方をみることができる重要な存在です。
‐養成課程にいる学生さんたちが実習に行ったり、巣立つにあたり、求めることはありますか。
実習前に現場のベテラン養護教諭の豊富な経験談を聞く機会を設け、教育現場についての実感を持たせるとともに、実習校および児童・生徒に期待される学力、責任感、熱意などが要求されることを自覚してほしいと思います。
実習に参加したら、積極的な姿勢を持ち、できるだけ多くのことを学んできて欲しいと思います。救急処置については、具体的な処置や医療機関及び家庭との連携を理解することが必要です。また個別や集団を対象にした保健指導についても経験することで、子どもたちに対する言葉遣い、気配りなども体験できるでしょう。学級に配属され、子どもたちの活動や給食を一緒に食べることを通して、現状を捉えることができます。
実習では、いろいろな体験をさせていただけたらと思います。
‐校内で果たす役割が年々増えている養護教諭ですが、みなさんにメッセージをお願いします。
学生たちに「なぜ養護教諭を目指しているのか」と質問すると、理由は様々ですが、自分の出身校の養護教諭との関わりが、非常に大きく影響していることがわかります。養護教諭の教員としての「人間性」が大変重要なのです。
また、養護教諭には「子どもたちに、自分自身の健康状態を認識し、判断する力」を育てることが求められています。保健室で子どもたちに手当てをしている最中にも、「この傷は何日経ったらどのように変化する」といったことを教える、保健教育の指導力をつけていってください。その際には、学校と家庭、地域との協力しあう養護教諭の「調整能力」も求められます。
‐では最後に、学術集会の参加者へのメッセージをお願いします。
今回は、「今、改めて養護教諭の教育について問う」というテーマで行います。
参加者それぞれの立場で、テーマの研修を深め、積極的な参加をお願いいたします。
さらに、その後の広がりを強く願っています。ご自身の研鑽の継続が大切だと思います。
【2010年9月18日号】