8月27日(金)・28日(土)と「第58回 日本PTA全国研究大会」が千葉県で開催される。開催に先立ち、千葉県が地元でもある社団法人日本PTA全国協議会の相川敬会長に、昨今のPTA事情や学校との連携、今後のPTAのあり方についてお話を伺った(大会の詳細は2面)。
‐教育のあり方が見直され、新学習指導要領が一部先行実施されています。また、保護者の意識変化も指摘され、モンスターペアレントという言葉も生まれているなか、PTAの役割とはどのようなものだと思われますか
PTAはあくまでも、子どもたちのための環境作りのための組織です。学校や地域という子どもが育つ場所で、PTAが前面に出るのではなく、先生や地域の人たちを支える、そういう役割を果たして欲しいと思います。そして、それぞれが自分の考えを主張してうまくコミュニケーションが取れない時、PTAが入ると物事がスムーズに進む、という存在になってもらいたいと考えています。
役員のなり手がいないなど、PTA不要論もささやかれますが、本当に無くなってよいのか、と感じています。役員を引き受けるのが嫌だとか、いわば、人とのコミュニケーションがわずらわしいという理由で、PTAに参加するのを止めてしまうのは簡単なこと。地域の子ども会の役員、育成ボランティア、補導員など、街の様々な委員を担う人にはPTAの経験者が多いことをご存知でしょうか。そのような立場の人たちは、もともと社会的な問題に関心があったのではなく、PTAを経験したことにより、その後社会に出て行く機会があった時に、もう少し携わっていこうという意識が生まれたのでしょう。そういう意味で、「PTAは人づくりの場」でもあると私は考えます。
‐日本PTA全国協議会は文部科学省に対して少人数制学級の実現を求めていますが、そのほかにどのようなことが学校現場では必要だと思われますか
基本的なことは当然、国にお任せすることですが、これからは、現場に任せる部分も必要になってくるのではないでしょうか。過疎地域もあれば児童・生徒数が急激に増加している地域もある、といった地域性は国レベルでは十分に把握しきれていません。各教育委員会、場合によっては学校にある程度の独自性を持たせても良いと思います。
どうしても様々な規則・規定を作ってしまいますが、私は、それは少なければ少ないほどいいと思います。ただ従っているだけだと、考えなくて良くなってしまいます。ともすると、社会全体が自分で考えなくても良い風潮になってしまいますが、規則・規定が少なければ、自分で判断し、考えていくでしょう。
|
‐それは子育てにも通じるように思えます。子どもはどのように育てるのがよいと、会長はお考えですか
子どもはある程度自由に育て、だめなことはだめだとはっきりしてあげる、それさえ分かれば後は本人の問題だと思います。もちろん、学力の問題は保護者として大きな関心事ですが、これは個人的な問題です。社会の一員として、決められたこと、やってはいけないことさえはっきりさせておけば、他は自由にしてあげるようにしています。
また、失われた20年社会などと言われ、社会が後ろ向きになっている昨今、「穏やか」で「朗らか」で「気持ちがまっすぐ」という明るい性格の子どもを育てるというのは、非常に大事なことでしょう。我々人間は個々の生活がありますので、地位が高くて収入が多い方が良いという現実もあります。しかし、最終的には人間性が一番大事だと思いませんか。
この歳になって分かるのですが、例えば「一杯飲みに行こう」という時や、「どこかに遊びに行こう」という時に、「○○さんに声をかけよう」とか、「誰か○○さんを呼んでよ」と声をかけたくなる、その人がいるだけでなんとなく雰囲気が柔らかくなる人がいます。そんな人間に育って欲しいですね。声をかけられるのは、その人の人柄があってこそだと思います。
‐最後に、全国大会(千葉大会)の参加者にメッセージをお願いします
PTAとして、積極的に学校や地域に携わってください。そして時間が空いた時には、少しでも気にかけて欲しいと思っています。気にかけるということは、学校に行っている子どもたちを見て、無関心にすれ違うのではなく、子どもたちを「振り返って見てあげる」「目を向けてあげる」ということです。それだけで違うのです。我々PTAが、大人がちょっと気にかけてあげることが今必要なのではないでしょうか。全国大会に参加した皆さんはぜひそれを学びとっていってください。
◇ ◇
相川敬(あいかわ・たかし)=1953年千葉県南房総市出身。千葉市内で単Pの会長を3年、2009年6月から日本PTA全国協議会会長を務める。一男一女。
【2010年8月21日号】