教材はHPから利用可
情報化社会と共に、手で文字を書くことが相対的に少なくなってきた昨今。このことが子どもの学力や大人のコミュニケーション力に悪影響を及ぼしている可能性を危惧して、手書きの価値や意義、楽しさ、効用などを広く社会に伝える「書育推進協議会」が発足。4月28日には設立発表会が都内で開催され、コンセプトの説明及び、書育教材の発表も行われた。
我が国では、平成17年に文字・活字文化振興法が制定された。この法律は、文字・活字文化が、人類が長い歴史の中で蓄積してきた知識及び知恵の継承及び向上、豊かな人間性の涵養並びに健全な民主主義の発達に欠くことのできないものであることに鑑み、知的で心豊かな国民生活及び活力ある社会の実現に寄与することを目的として制定された。
その約2年後、日本筆記具工業会が社会貢献活動の一環として「書育」活動を宣言し、書育検討の委員会を設け、考えを進めてきた。そこに5名の学識経験者を交えて話し合いがもたれ、文部省視学官、千葉大学教授を歴任してきた久米公氏が会長となり、今年2月に設立。
同協議会は、当面「学習力」「コミュニケーション力」「創造力」を育むために開発した教材の普及活動に務めることを決めており、ホームページからのダウンロードによる利用、CD‐ROM版の提供により、「書育」活動を普及させていく予定だ。
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【書育教材】
学習力・創造力・
コミュニケーション力
重視した教材
提供する教材は、(1)児童・生徒用ワークシート(B4・19頁)(2)教師用指導書(A4・46頁)(3)書育教材集 利用の手引き(2010年版/A4・8頁)(4)DVD〈教材の活用事例〉(全15分)。
児童・生徒用ワークシートは、子どもたちが書き込みながら楽しく学べるように工夫され、「学習力」のパートでは、サッカー日本代表の中村俊輔選手が17歳から書き続けているノートの意義について学んだり、自分のノートのとり方について客観的に考えることで、書いて理解する力が養われるようになっている。
「コミュニケーション力」のパートでは、大人でも書く機会が少なくなった手紙について考え、メールとの違いなどを学び、手紙が社会を動かした例なども紹介されている。
また、「創造力」のパートでは、マインドマップやブレインストーミングについて説明し、実際にそれを子どもたちが実行していくこともでき、「手書きへの興味」のパートでは、手書きが原点となる仕事についての紹介や、いろいろな筆記具についても学ぶことができる。
同協議会の久米公会長は、協議会が推進する「書育」と、文字・活字文化振興機構において用いられる「読育」の語は、車の両輪をなすものであり、「『知育・徳育・体育』の語は、バランスのとれた人間育成を表しているが、言語教育においては、“読育”と“書育”とによるインプットとアウトプットによって保たれるだろう」と発表会であいさつ。
なお、副会長には昭和大学客員教授でメディア教育開発センター名誉教授の小野博氏、群馬大学教育学部教授で同附属小学校校長の河野庸介氏、鹿児島国際大学・同大学院教授の千々岩弘一氏、日本筆記具工業会会長の堀江圭馬氏が就任。
問合せ=03・3891・6161(日本筆記具工業会内)http://www.jwima.org/shoiku/index.html
【2010年5月15日号】