●短時間の運動で記憶力が高まることが明らかに~筑波大学 (2017年02月11日)
筑波大学の研究グループは、ヒトにおいて、短時間の中強度運動が記憶の成立に不可欠な類似記憶の識別能力を高めることを初めて明らかにしました。
多くの動物実験から、運動は学習・記憶能を司る海馬に有益な効果をもつことが明らかにされてきました。しかし、海馬は脳の中心部に位置する非常に小さな領域であることもあり、ヒトでの検証は進んでいませんでした。今回の研究では、記憶の成立に不可欠な海馬の機能である類似記憶の識別能力を評価できる特別な記憶テストを用いることで、短時間の中強度運動後に類似記憶の識別能力が高まるかどうかを検証。その結果、10分間の中強度運動後に類似度が高い(難しい)問題の正答率が向上することを見出し、短時間の運動により海馬が司る記憶機能が向上することを、ヒトで初めて明らかにしました。
実験は、21名の健常成人に10分間のペダリング運動後に記憶テストを行う「運動条件」と、運動の代わりに10分間の座位安静後に記憶テストを行う「対照条件」の2回を、無作為に割り当てられた順序で行いました。
記憶テストとしては、類似記憶の識別能力を評価するテストを行いました。このテストには、覚える問題と思い出す問題の2つのパートがあります。まず、覚える問題では、日常生活で目にするような物体を見せ、それを覚えさせました。思い出す問題では、覚える問題で出題した物体と同一、類似、無関連いずれかの物体を提示し、参加者には全く同じか、似ているが全く同じではないか、初めて出てきた新しい物体か、の3択で回答させました。そして、類似物体に対する正答率から類似記憶の識別能力を評価しました。なお、類似物体は類似度により3段階に分類して成績評価しました。
実験の結果、類似度が低~中程度の問題(簡単)に対する正答率は運動した場合としなかった場合で差は見られませんでしたが、高い類似度の(難しい)問題では運動後に記憶テスト行った場合の方が高い正答率となり、短時間の中強度運動が類似記憶の識別能力を高めることが明らかになりました。類似度が高い記憶の識別には、海馬の中でも歯状回と呼ばれる領域の機能が特に重要であることから、今回確認された効果の背景には海馬歯状回の機能向上が関与している可能性が示唆されました。
認知機能への短期的な運動効果が長期的に効力を持ち、記憶力を恒常的に高めるかどうかは、これからの重要な検討課題です。動物では習慣的な運動により海馬の神経細胞が増えるように、ヒトでもそうした変化によって記憶力の維持・向上が期待できるかもしれません。短時間の運動は、健康な体づくりだけでなく、学習面でもその効果が期待できることからも、毎日実行していくとよいかもしれませんね。
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投稿者 kksblog : 2017年02月11日 00:44