●乳児は弱者を助ける正義の味方を肯定する~京都大学 (2017年02月07日)
京都大学の研究チームは、乳児を対象とした実験から、発達の早期に弱者を助ける正義の行為を肯定する傾向がみられることを明らかにしました。
ヒト社会では、攻撃されている他者のために身を投げ出して助けるような行為は「美徳」として受けとめられ、道徳、正義、ヒロイズムといった概念と結びつけてイメージされます。これまでの研究では、正義の行為が見られるのは就学前頃であることが示されてきました。しかし、こうした正義の概念は、生後の学習によって獲得されるのか、あるいは生後早期からすでに見られる傾向であるかについては未解明のままでした。
そこで、正義の概念の原型は発達の早期にすでに認められると仮定し、乳児を対象に6つの実験を実施。その結果、ヒトは生後早期から、攻撃者、犠牲者、正義の味方の関係性を理解し、正義の味方のような行為を肯定する傾向を持つことがわかりました。
実験では、赤ちゃんに攻撃者、犠牲者、その相互作用を止める・止めない第3者を見せ、その後に第3者の実物を提示し、赤ちゃんに選択させました。攻撃相互作用を止めるアニメーションのほかに、無生物の衝突や中立な相互作用を止めるアニメーションもありました。そして一連の実験結果は、ヒトは生後早期から、攻撃者、犠牲者、正義の味方の関係性を理解し、正義の味方のような行為を肯定する傾向をもつことを示していました。正義の行為を理解し、肯定する傾向は、学習の結果というよりも、ヒトに生来的に備わっている性質である可能性が高いのです。
攻撃されている他者のために、その身を投げ出して助けるような行為は、一般的には正義の行いとみなされ、ヒトはそのような行いに魅了されます。正義への憧憬は、ヒトに生来的に備わった性質であり、正義を肯定する本性をもつがゆえに魅了されるのかもしれません。今後は、本研究で示された発達初期の正義を肯定する傾向が、どのような要因によって発達するのか、その後発達する、より高次な正義感とどのような関係にあるのか、を解明していくことが必要です。
弱者を強者から守る行為がヒトに自然と備わるものであるなら、それがずっと心に刻み込まれ、失われることがなければ、いじめ問題なども生まれないのかもしれませんね。
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投稿者 kksblog : 2017年02月07日 20:42