●幸せ感情と幸福度の関係と脳の関連が明らかに~生理学研究所 (2016年07月21日)
生理学研究所が、幸せと脳との関連に注目し研究をすすめたところ、楽しい過去の記憶の想起や、明るい未来を想像するといったトレーニングにより、持続的な幸福が増強する可能性があることがわかりました。
幸せには、好きなものが得られた時などに経験する「幸せな気持ち(幸せ感情)」としての一時的な側面と、自分は幸せである、と比較的長期にわたり安定して認知される「幸福度」としての長期的な側面の2つの側面があります。
幸福度が高い人は日常生活の中で幸せ感情を感じやすく、逆に日常生活において幸せ感情を多く経験すればするほど幸福度が上がっていくというように、幸せの2つの側面は相互に関連していることはわかっていましたが、なぜ2つの側面が関連するのか、その生理学的基盤はよくわかっていませんでした。
研究では、磁気共鳴画像装置(MRI)を用いて、幸せに関連する脳領域を構造面・機能面から調べました。実験参加者にポジティブな出来事(好きな人に告白してOKをもらったなど)、ネガティブな出来事(好きな人に告白してフラれたなど)、感情的にニュートラルな出来事などをMRIの中で想像してもらい、ポジティブな出来事を想像している時に特に強く活動するとともに、幸せ感情喚起の程度と関連して活性化する脳領域があるかどうか、参加者の幸福度に対応して構造が変化する脳領域があるかどうか、などを調べました
その結果、幸福度が高い人(自分は幸せであると強く感じている人)ほど、内側前頭前野の一領域である吻側前部帯状回と呼ばれる脳領域の体積が大きいこと、ポジティブな出来事を想像している時に感じる幸せ感情の程度が高い人ほど吻側前部帯状回の活動が大きいこと、さらにポジティブな出来事を想像している時の吻側前部帯状回の活動はその場所の体積と相関していることなどが明らかとなりました。
このことは、幸福度が高い人ほど、ポジティブな出来事に直面した時に幸せ感情を感じやすいことを意味しており、その生理学的基盤が吻側前部帯状回の構造と機能との関連で説明できることを示しています。
「幸せ感情」と「幸福度」という、相互に関連する2つの側面はお互いを強化しあう関係であることが明らかになったことは、日本国民の幸福度の向上に結びつく重要な知見として期待されます。
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投稿者 kksblog : 2016年07月21日 11:02