●親子の時間が子どもの言語理解と関連脳領域に影響することが明らかに (2015年02月13日)
東北大学加齢医学研究所が、長時間、親子で一緒に過ごすことが、脳の右上側頭回の発達性変化や言語理解機能に好影響を与えていることを明らかにしました。
これは、小児の縦断追跡データを用いて、日々の生活で、親子でどのくらいの長さの間ともに時間を過ごすかが数年後の言語理解機能や脳形態の変化とどう関連しているかを解析したことによります。脳画像解析、大規模なデータ、数年の期間をおいた縦断解析といった手法を用いて発達期の親子の相互作用の言語機能などへの好影響の神経メカニズムを新たに明らかにした点などから、従来にない画期的な研究成果といえます。
乳幼児に対する言語的働きかけ、反応や小児における親子の相互作用、特に言語のそれの量が、言語スキルや言語知識といった言語発達指標を長期的に上昇させることが数多くの横断心理学研究などにより明らかにされてきました。一方、これまでの研究において、健常の小児が発達中期以降に神経回路の刈込みと呼ばれる現象が背景にあると考えられる灰白質量の減少を示すことが示されてきていました。また、脳の上側頭回が、言語的理解や非言語的コミュニケーションの理解などに関わることも知られています。同様に、親による子どもへの言語的虐待や、親の逆亭による心的外傷後ストレス障害などが子どもの言語機能の低下と上側頭回の脳灰白質形態に影響を与えることも示されてきました。しかし、これらの言語機能と関連する領域の発達に、健常な親子における相互作用がどのような影響を与えるのかは明らかにされていませんでした。そこで、研究では、健常小児において、親子の相互作用の量の生活習慣が脳形態や言語機能に与える影響を解明することを目的としました。
研究は、一般より募集した親子が平日と休日に一緒に過ごす平均時間と言語理解指数という標準的知能テストの四大因子の1つ、脳の局所の灰白質濃度の関連を解析。次に解析に必要なデータがそろっている親子の初回参加時と2回目参加時のデータを解析し、初回参加時における平日と休日に親子が一緒に過ごす平均時間が、どのように各参加者の初回から2回目参加時における言語理解指数、脳の局所の灰白質濃度を予測していたかを解析しました。
解析の結果、初回参加時における長時間親子で過ごすことは、初回参加時に高い言語理解指数と関連し、初回参加時から数年後の2回目参加時へのより一層の言語理解指数増大につながっていました。同様に初回参加時において長時間親子で過ごしていたことは、初回参加時の両側の上側頭回等の局所灰白質濃度の低さと関連しており、さらに初回参加時から数年後の2回目参加時への右上側頭回の発達性変化への負の影響と関連していました。
さらに親子でさまざまな内容の会話をより多く持っているという因子が親子で過ごす時間と同じような言語性理解指数や右上側頭回の局所灰白質濃度の横断的関連と縦断的変化への関係も示すこともわかりました。
研究成果として、小児において長時間親子で一緒に過ごすこと、とくに会話をもつことで脳の言語機能に関わる領域が影響をうけ、これが長時間親子で一緒にすごすこと、とくに会話をもつことによる言語機能発達の増加と関連することが示唆されました。就学期前の子どもだけでなく、発達期においても親子で多くの時間を過ごすこと、会話を持つことが言語関連脳神経機能の良好な発達に重要であることも明らかに。発達期の親子で一緒に過ごす時間の大切さがあらためて示されています。
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投稿者 kksblog : 2015年02月13日 21:45