●子供たちに和食の素晴らしさの継承を~日本冷凍めん協会等がセミナー開催 (2014年11月28日)
日本冷凍めん協会、全国製麺協同組合連合会、全国めん類衛生技術センターは11月11日、都内でセミナーを開催しました。京都大学農学研究科の伏木亨教授と、東洋史家で学術博士の宮脇淳子氏を講師に招き、食や文化についての講演を行いました。その中から「おいしさの科学」をテーマにした伏木教授の講演をご紹介します。
■おいしさを感じる脳のメカニズムとは
「おいしい」と感じるのは、人間の脳です。では人間の脳は、どんなメカニズムで「おいしい」と感じるのでしょうか。
伏木教授によると、「おいしさ」の要素は①生理的なおいしさ ②食文化に合っているかどうか ③情報 ④報酬(快感)の4つに分解されるそうです。
「①生理的なおいしさ」とは、人間だけでなく他の動物にもあるもので、体が欲しているもの、特に生死にかかわるもの(塩や、エネルギーに関わるカロリーの高いものなど)のおいしさです。
「②食文化に会っているかどうか」では、子供の頃からの食文化が大きく影響します。食べなれないものや初めて食べるものに対して、人間はとても不安になります。自分の理解できるものは、安心して食べられます。特に「匂い」は重要です。食べ物の香りに違和感があると致命的で、強く抵抗を感じてしまいます。
「③情報」は、きわめて人間的な要素です。子供が周囲の大人達から「おいしいよ」と言われて、学んでいくことも「情報」です。お酒などが例に挙げられます。また食べる前からわかること、例えばメーカー、値段、ブランド名、周りの人からの情報、消費期限の日付なども「情報」です。
私達は、安全を文字情報から得ており、「人間は安全のために『情報』を選択した」とも言えます。そして引き換えに、五感が鈍化したり、情報に過剰に依存するようになってきました。
「④報酬(快感)」は、“やみつき”になるおいしさです。みんなが大好きなチョコレートやケーキ、ラーメンなどの共通点は「脂肪」「砂糖」「だし」。これらは必ずしも必要なものではありませんが、本能が“快感”を感じます。
■和のおいしさを継承する
だしは世界中にあります。西洋や中国では、牛豚鶏などの肉や骨を素材とし、長時間煮てうま味を抽出。うま味の他にゼラチン質や油脂分を含んでいます。一方で日本のだしの場合、油脂分の少ない乾燥食品から短時間でうま味を抽出しています。
伏木教授は「だし味を主体とした日本の味わいは脂肪を多く含む料理に比べて、低いカロリーで十分な満足感・幸福感が得られる。子供たちにもだしのおいしさを教えたい」としています。
味覚と嗅覚が合わさって「だし」のおいしさを感じるのですが、嗅覚は「②食文化」でも触れているように、子供の頃から馴れる必要があります。食の嗜好は遺伝するものではなく後天的なものなので、放置すれば1世代で消滅しかねません。意識して子供たちに引き継いでいく必要があります。
現在、離乳食~幼児食は3歳ごろまで、と言われていますが、完全に離乳が終了する(つまり大人と同じ食生活になる)のは小学生頃、と考えられます。その時期に日本のだしのうま味や、それをベースにした健康的な食生活に親しんでおくことが大切です。
そうすることで、成長過程や大人になって、一時期カロリーの高い食生活になったとしても、さらに年齢を経た時に、離乳期に覚えた、だしをベースにした健康的な食生活に戻ることもできます。
昨年末にユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」。その「おいしさ」を子供たちに引き継いでいきたいですね。
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投稿者 kksblog : 2014年11月28日 15:29