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高周波ガンマ波の同期は作業記憶の呼び出しに重要~理化学研究所 (2014年05月06日)

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理化学研究所は、脳波の一種である高周波ガンマ波が、脳の海馬-嗅内皮質間で同期することが、動物が空間的な作業記憶(ワーキングメモリ)を正しく読み出し、実行するために重要な役割を果たしていることを発見しました。

私たちの脳は、必要な事柄を一時的に覚え、必要となった時にその情報を呼び出して実行に移す機能「ワーキングメモリ」を備えています。ワーキングメモリには、記憶の符号化などの役割を担う海馬および海馬傍回の働きが重要とされてきました。しかし、そのメカニズムはいまだ明らかにされていません。また、私たちは行動するときに、起こした行動が正しいか間違っているかをモニターし、必要があれば行動を修正します。こうした行動は「意識」あるいは「メタ認知」と呼ばれる心理学用語で説明されていますが、その神経科学的なメカニズムはほとんど解明されていません。

研究所は、空間的ワーキングメモリを呼び出す際に記憶の形成/読み出しに重要とされる海馬と大脳嗅内野間での情報処理がどのように行われるかを解析し、高周波ガンマ波の同期が、ワーキングメモリを正しく読み出し、実行するために極めて重要な役割を果たすことをマウス実験で実証。また、間違いに気付いて行動を意識的に修正する、いわゆる“お手つき”のような試行では、高周波ガンマ波の同期が時間的、空間的にシフトすることを発見し、意識的な自己修正の神経メカニズムの一端を初めて明らかにしました。

実験にて、マウスはまず、T字型の迷路の分岐したどちらか一方だけのアームに置かれた餌をもらうサンプル試行を行います。その後、サンプル試行で餌の置かれたアームとは反対側のアームに餌を置いてテスト試行を行います。このようなサンプル試行とテスト試行を組み合わせた課題が何回も繰り返されると、マウスは初めのうち、テスト試行中にその前のサンプル試行で餌をもらったアームを探そうとして不正解します。しかし、学習が進むとその反対側のアームに餌があるというルールを理解し、正解するようになります。つまり、テスト試行中、マウスはサンプル試行で訪れたアームを一時的に記憶し、その記憶をもとに反対側のアームを選ぶ作業を実行しなければ餌にありつけません。迷路の分岐にさしかかる直前に、海馬-嗅内皮質間における局所電場電位のうち高周波ガンマ領域における位相同期性が著しく高くなることを発見。高周波ガンマ領域における位相同期性は空間記憶を正しく呼び出すことに関与すると考えられます。

ワーキングメモリは、日常会話をスムーズに行うなどといった、私たちの生活の中の高次精神機能に直結していて、その研究は私たちの精神活動のメカニズムを解明するという大きな課題だそうです。課題解決が、記憶障害等のメカニズム解明につながることが期待されます。


海馬-嗅内皮質間の同期性は記憶を意識的な行動へ変換する過程に重要 | 理化学研究所



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投稿者 kksblog : 2014年05月06日 21:34


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