●長期間の記憶から行動の意思決定をする、脳の働きの様子を明らかに (2013年06月03日)
私たちは、過去に起こった、学んだ出来事から、いろいろな行動の選択を行っています。信号が赤なら「止まれ」、青なら「進め」というように、外部からの刺激や情報が、自然の中では全く関連のない行動を決定づける要因になるのです。こうした行動プログラムの選択には、大脳皮質―基底核回路と呼ばれる神経回路が関わると考えられていますが、その中での変化については明らかにされていません。
生物が記憶に基づいて意思決定を行う時、脳の神経系はどのように働いているのか、これを理化学研究所の、理研脳科学総合研究センター・発生遺伝子制御研究チームが、小型熱帯魚のゼブラフィッシュを用いた実験から、可視化することに成功しました。
ゼブラフィッシュは脊椎動物の原型であり、動物の行動プログラムにおける脳の役割を研究するのに適しています。研究チームは、2つの部屋に分かれた水槽の中で、ゼブラフィッシュに赤色ランプを見せ、反対側の部屋に逃げなければ軽い電気ショックを与えるという試行を繰り返して、回避行動を学習させました。次に、脳の神経活動を蛍光強度の変化で計測する方法を使って、回避行動のプログラムを思い出しているときの神経活動を計測しました。
この実験の結果、ランプが点くと反対側に逃げて電気ショックを回避する、という行動を学習して、24時間経過した個体だけが、大脳皮質に相当する領域に神経活動が観察されました。この領域を回避学習する前に破壊すると、学習する能力や、学習した行動を30分程度の短い時間で思い出す短期記憶能力への影響はありませんでしたが、24時間以上経過した場合、学習した回避行動を思い出せなくなることが分かりました。
この研究成果により、ヒトを含む動物の行動プログラムが、脳でどのように書き込まれ、保存され、読みだされて、意志決定されているのかを解明する研究が進むと期待されます。脳の仕組みはまだまだ解明されていないことがたくさんあります。私たちが毎日使っている脳のふしぎ、もっと知りたくなりますね。
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投稿者 kksblog : 2013年06月03日 00:28