●思春期に刺激の多い環境で過ごすと、脳の左右差と協調リズムが出現 (2013年04月21日)
独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、ラットを使った実験で、刺激に富む環境で飼育すると、脳の海馬の左右間に発達の差が出ることを発見しました。
この発見は、飼育環境の違いという外的因子により、脳機能の左右非対称性が促進されることを示します。
大脳の内側に位置する海馬は、空間学習や認知に関わっています。そのため、記憶の形成に重要な働きをしている部位ということになります。この海馬を損傷すると、新しい物事を覚えられなくなる順行性健忘を発症するなど、重篤な記憶障害が生じます。
これまでの研究で、思春期にあたる生後3週~6週のマウスやラットを遊具付のケージで集団飼育すると、空間記憶などの学習能が向上することが知られていました。これは、遊具による視覚や体性感覚、および集団による社会性の刺激が海馬機能に影響していることを示しています。
ところが、具体的に海馬の神経活動にどのような変化が生じているか?については、十分にわかっていませんでした。また、海馬は脳の左右に一対存在しますが、神経活動を左右の海馬で同時に計測した実験は少なく、飼育環境の違いによる左右の海馬の神経活動変化については未解明のままでした。
今回の研究では、生後3週~6週目のラットを1匹だけでケージで飼育する「隔離飼育群」と、遊具を入れたケージで集団飼育する「豊かな環境飼育群」とに分け、左右の海馬CA1領域の脳波活動を計測しました。その結果、豊かな環境飼育群では、脳波の1つであるガンマ(γ)波の振幅が大きくなり、とりわけ右側のγ波の振幅が左側に比べてより大きくなっていることを発見しました。
さらに、豊かな環境下のラットは左右のγ波のリズムが同期することも明らかになりました。
こうして、リアルに環境による影響について知ると、日々の生活を見直してみたくなりますね。
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投稿者 kksblog : 2013年04月21日 01:51