●ヒトと同様にチンパンジーも技を盗む?効率のよいテクニックを他者から学ぶ (2013年02月08日)
山本真也 霊長類研究所特定助教、Tatyana Humle Kent University(英国)講師、田中正之 野生動物研究センター准教授らの共同研究グループにより、チンパンジーが道具使用「テクニック(技法)」を観察によって学習し、他者が見せる効率の良いテクニックへと方略を改善させることが明らかになりました。
霊長類研究所で行った実験で観察された道具使用は、ストローでのジュース「吸い」と「浸し釣り」の2つ。どちらも同じ道具(シリコンチューブ)を使い、同じ場所(壁にあいた直径1cmの穴)で同じ対象(ジュース)に対して行われる「テクニック」ですが、効率が大きく異なります(「吸い」:容器内の50ccを30秒以内、「浸し釣り」:1試行10分間で最高でも20cc)。
9個体を個別にテストしたところ、4個体は「吸う」テクニックを、残る5個体は「浸し釣る」テクニックをみせました。そこで、この「浸し釣る」5個体を「吸う」モデルとペアにしたところ、最終的にすべての個体がより効率の良い「吸う」テクニックを観察して学習するという結果になりました(4個体はチンパンジーモデルを見て、1個体はヒト実験者が「吸う」のを見て学習)。
この研究のポイント(先行研究と異なる点)は、(1)単純な模倣戦略(刺激強調)では説明できないテクニックの社会学習、(2)効率のよいテクニックへの改善、の2つです。
社会学習によるテクニックの改善は、ヒトに特有であると考えられている累積文化進化の基盤として重要な役割を果たすと考えられます。
テクノロジーの発展にみられるように、ヒトはベースとなる行動からよりよい技法が編み出され、それが個体間に広まって文化が発展していきます。今回の研究では、このような累積文化進化の認知的基盤をチンパンジーも持っていることが示唆されました。
このような知識を子どもたちとも共有することにより、知らないことを知る面白さを実感できそうですね。
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投稿者 kksblog : 2013年02月08日 23:59