●植物の「伸びる・伸びない」を決めるのは、3つのタンパク質の力関係 (2012年11月30日)
大きな花が咲く、大きな実がなる、葉や茎が長く大きくなる…作物や園芸用植物において、「大きくする」ことを目標にした育種は、過去から続けられてきました。しかし植物の大きさは、日照、温度、土壌など多くの要素が絡み合っており、植物の内部のしくみにおいては解明されていませんでした。
産業技術総合研究所(産総研)の植物機能制御研究グループは、植物の細胞の長さが3種類のたんぱく質が拮抗することによって調節されていることを解明しました。植物の細胞の長さは、樹高・草丈や、葉や実の大きさに直接影響します。研究グループは、植物に細胞の長さを伸ばす2種類のタンパク質と、逆に伸びを抑制する1種類のタンパク質が存在することを発見しました。この3者のバランスが、最終的に細胞の長さ=植物の大きさを決定するというのです。
この研究では、シロイヌナズナをモデル植物として、細胞を伸ばす働きをもつタンパク質「PRE1」と「ACE」、そして細胞の伸びを抑制する「AtlBH1」を同定しました。このうち、直接細胞を伸ばす働きをするのは「ACE」で、「AtlBH1」は「ACE」の働きを邪魔することで細胞の伸長を阻害し、「PRE1」は「AtlBH1」の働きを邪魔することで「ACE」が邪魔されることを防ぐ役割をしていました。こういったタンパク質同士の拮抗阻害機構は、これまでにヒトについて奉公されていますが、3因子によるものはこれまでに報告例がありませんでした。
植物の場所ごとにタンパク質の量を調べてみたところ、「ACE」を助ける「PRE1」は茎の先端や若い葉、若い実などに多く存在し、「ACE」を邪魔する「AtlBH1」は固くなった茎の下の方や、年老いた葉、大きくなった実などに多く存在していました。このことから、これら3種類のタンパク質による「伸びる・伸びない」のせめぎあいは、植物の成長段階ごとにさまざまな細胞の伸びを調節している可能性があります。
細胞の伸びは、植物自体を大きくするだけでなく、花が咲く、倒れても新しく伸びた茎は上を向くなど、植物の重要な機能にも関係しています。こういった植物の成長に関わる物質の存在と働きを知ることで、農作業効率の向上や、新しい園芸作物の開発などに応用されることが期待されます。また新しく生物の謎が明らかになりました。こういう話題から、子どもたちの興味の芽が伸びるといいですね。
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投稿者 kksblog : 2012年11月30日 14:26