●「軽微な忘却」は運動指令を最適化~予想外の効果を論理的に証明 (2012年07月11日)
東京大学大学院教育学研究科の助教 平島雅也氏と教授 野崎大地氏により、軽微な忘却が運動指令を最適化することが理論的に証明されました。
忘却は、古くよりニューラルネットワークの分野において、ネットワーク性能を高める効果があることが知られています。同研究では、忘却が運動制御系において有効に機能し得るかどうかが理論的に調査されました。
その結果、1)極めて多くのニューロンが運動課題に参画すること、2)誤差情報に基づいた運動学習が長期間行われること、3)忘却率が学習率に比べて極めて小さいこと、などの条件が揃えば、ニューラルネットワークは必ず最適な状態に達し、最も効率のよい神経活動パターンを出力できるようになることが明らかになりました。
一方、忘却が全くない場合には、学習に伴って運動誤差は減少するものの、神経活動レベルは減少せず、最適な状態に達する前に学習が終了してしまうこともわかりました。
また、忘却が大きすぎる場合には、必要以上に神経活動レベルが低下して運動課題の遂行ができなくなってしまうことが明らかになっています。つまり、軽微な忘却を有する時のみ、ネットワークは最適な状態に達することが可能です。
もし実際の脳において忘却が機能しているのだとすれば、忘却を有したニューラルネットワークモデルは、実際の脳活動パターンを予測できるとし、一次運動野および筋骨格系の解剖学的知見を用いてニューラルネットワークモデルを構築。軽微な忘却条件下において長期間の運動学習を行わせました。
その結果、さまざまな運動課題において、霊長類の一次運動野で観察されるのとほぼ同じ神経活動パターンを再現できることがわかりました。
神経生理学の分野では、到達動作中の一次運動野ニューロン群の至適方位の分布には偏りがあることが知られており、その発生機序に注目が集まっています。
2次元到達動作中および3次元到達動作中の至適方位の偏りがともに、忘却による最適化によって生じうるという統一的な理論で説明した点も同研究の大きな成果の一つとなっています。
忘却は程度の差こそあれど、老若男女に共通する悩みでしょう。子どもたちにとっても、とくに暗記科目で興味深い話題なのではないでしょうか。
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投稿者 kksblog : 2012年07月11日 21:34