●「不気味の谷」は人間・ロボットの挟間ではなく、心の距離のパラメーター? (2012年06月22日)
「不気味の谷」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。人は、ロボットの外観や動作が人間らしくなるにつれて、好感や共感を覚えますが、ある次点で突然強い嫌悪感に変わる、その感情的反応を示したグラフが深い谷のようになっていることから名付けられたものです。この「谷」は人間とロボットに特有のものなのか、それが「赤ちゃんとお母さん」により検証されました。
東京大学大学院 総合文化研究家の岡ノ谷一夫教授と、JST戦略的創造研究推進事業ERATO型研究「岡ノ谷情動情報プロジェクト」の松田佳尚氏らは、赤ちゃんの「感情の発達」と「母親を認識する能力」の関係を研究し、母親と他人を半分ずつ重ね合わせた「半分お母さん」の顔を見ようとしない「不気味の谷」現象を発見しました。
生後半年以降の赤ちゃんは、母親と他人を区別したうえで、どちらも好んで見つめます。両者は全く違う存在ですが、赤ちゃんが両方を好んで見るため、どのように母親と他人の区別をしているのか分かりませんでした。研究グループは、この問題を解決するために正誤7〜12ヶ月の赤ちゃん51名が、母親、他人、そして母親と他人の顔をCGによって50%ずつ融合させた「半分お母さん」の顔の映像を見ている時間を比較しました。
この結果、赤ちゃんは母親と他人の映像をよく見る一方、「半分お母さん」の映像は長く見ようとしませんでした。また、7〜8ヶ月、9〜10ヶ月、11〜12ヶ月の3郡に分けたところ、9ヶ月以降で「半分お母さん」の映像を見なくなりました。一方で「半分お母さん」ではなく「合成された顔」が嫌いなのでは、という可能性を確認するため、2人の他人の顔を50%ずつ合成した顔を見せたところ、元の他人の顔と同じくらい見ていました。
研究グループはさらに、成人にも同様に「半分お母さん」を見せる調査を行ったところ、10人中8人が「気持ち悪さ」を感じていました。しかし「有名人」と「他人」を合成した「半分有名人」には嫌悪を感じず、気持ち悪さは自分にとってごく身近な人や重要な人が合成された場合に感じるということが示唆されました。
この検証から、「不気味の谷」は人間とロボットに特有なものでなく、「親近感」や「目新しさ」といった他のカテゴリーの挟間にも存在することが分かりました。この現象を応用すると、赤ちゃんに見せた人物と、その赤ちゃんとの「心の距離」が計れそうですね。でも、日々育児を頑張っているお母さん達には、そんなことをしなくても大丈夫、自信を持って、と言ってあげたいです。
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投稿者 kksblog : 2012年06月22日 09:19