●宇宙年齢10億年未満のころに存在した「原始銀河団」の発見 すばる望遠鏡 (2012年05月10日)
宇宙には、100個から1000個を超えるほどの明るい銀河の集まった「銀河団」と呼ばれる銀河の集団がいくつも見つかっています。しかも銀河団はお互いに結びつきあって、「宇宙の大規模構造」と呼ばれる巨大なネットワークを形成していることが分かっています。しかし銀河団がどのように形成されたのかについてはまだ謎が多く、これを解明することで宇宙の大規模構造と銀河進化という大きな謎に迫ることができると考えられています。
すばる望遠鏡による観測で、127億2000万光年先にある「原始銀河団」が発見されました。これは現在知られている中で最も遠い原始銀河団で、すなわち137億年の宇宙の歴史の中で、宇宙年齢が10億年にも達しない初期宇宙に銀河団が存在したことを示しています。すばる望遠鏡の広い視野、暗い銀河まで見つけ出すことができるほどの大口径という特長を活かしたことが、今回の功績につながりました。
この観測を行ったのは、総合研究大学院大学の利川潤氏、国立天文台の柏川伸成准教授。京都大学の大田一陽GCOE特定研究員を中心とした研究チームです。研究チームは銀河団形成について、その誕生に焦点を当てました。それは宇宙の歴史を大きくさかのぼる必要があるということです。宇宙観測では遠くを見ることで過去にさかのぼることができますが、遙か彼方の宇宙の最深部から届く微弱な光を捉えるのはとても困難なことです。
研究チームはすばる望遠鏡を用いて遠方銀河の探査を行ったところ、遠方銀河の数密度が周辺よりも5倍も高い領域を発見しました。これが127億2000万光年先にある原始銀河団です。この原始銀河団の内部構造を詳しく調べてみると、いくつかの銀河のグループを形成しているような傾向が見られました。これはさらに巨大な銀河団を創るために小さな銀河集団が集まる、その始まりの瞬間なのかもしれません。
すばる望遠鏡には現在、新しいカメラの搭載準備が進んでいます。これにより、従来の7倍もの視野を一度に観測することが可能になり、より広範囲の原始銀河団を観測できます。遠方銀河団の発見の積み重ねは、銀河団形成のしくみの解明にもつながると期待されています。
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投稿者 kksblog : 2012年05月10日 09:41