●イギリス児童文学の成立過程を辿る展示会「ヴィクトリア朝の子どもの本」 (2011年11月16日)
上野にある、国立国会図書館国際子ども図書館で、展示会「ヴィクトリア朝の子どもの本:イングラムコレクションより」が12月25日(日)まで開催されています。
「イングラムコレクション」とは国際子ども図書館所管の特別コレクションのうちのひとつで、主としてイギリスの18世紀から20世紀にかけての児童書1,157冊で構成されています。イギリスのヘレフォード大聖堂主教座名誉参事会員エドワード・ヘンリー・ウィニングトン=イングラム師が、ヴィクトリア朝の道徳的、精神的価値観に沿った児童文学をテーマに収集を開始した資料です。展示会では多様なジャンルの作品約60展が展示されています。
「子どもの文学」が誕生したのは18世紀のイギリスだとされています。子ども向けの書籍出版を始めた出版人の代表格であるジョン・ニューベリーや世界に名だたるグリムやアンデルセンの童話集、そして19世紀にかけてはルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」に代表されるようなファンタジー文学、フェアリーテイル、冒険小説というようにジャンルに広がりが生まれます。さらに当時は出版技術の進歩により、子どもの本の挿し絵などにも革命的な変化がもたらされた時代でもあります。
出展資料の一部を見てみると、先述の「不思議の国のアリス」や「マザーグース」、「ロビンソン・クルーソー」など、現代の日本でもよく知られている物語がいくつもあります。「カラバ侯爵の絵本」は耳慣れないですが、その中に収録されている「長ぐつをはいた猫」はおなじみですね。
さらに、イングラムコレクションとヴィクトリア朝の子どもの本をもっと知るための参考文献が掲載されています。この展示会を開催するにあたって参考とされた文献ですが、印刷の文化から児童文学の歴史、挿し絵の歴史など、近代児童文学についてより深く知りたい人にとって、興味深いものが一覧となっています。
もちろん、児童文学の研究者でなくても18世紀から20世紀のレトロな書籍の味わい、子どもの頃にわくわくしながら読んだ名作に出会う楽しさがあります。現代にも読み継がれる、数々の名作が生まれた児童文学の黎明期、その時代を垣間見てみませんか。
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投稿者 kksblog : 2011年11月16日 18:34