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昆虫社会でも、防衛行動と長生きにつながる「おばあちゃん」の力 (2010年06月24日)

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東京大学院総合文化研究科は、昆虫の雌が繁殖を終了した後も生存し、自らを犠牲にして他の個体を守るという現象を発見しました。

繁殖終了後も長く生存し、血縁者の繁殖を助ける例は、ヒト、クジラなどの知能の高い哺乳類で知られています。これは、近年の研究から、閉経後の生存は、自らの繁殖を犠牲にしてでも、孫の養育など血縁者の繁殖を助けることにより、進化的に維持されている「おばあちゃん仮説」として提唱されています。

今回の発見は、昆虫の社会における「おばあちゃん効果」の発見といえそうです。

哺乳類以外の社会性生物では、繁殖終了後の個体による利他的行動は詳細に調べられていませんでした。昆虫においては、アリやミツバチなどで社会性が知られていますが、アブラムシの仲間にも社会性を持つ「社会性アブラムシ」が存在します。研究は、その社会性アブラムシであるヨシノミヤアブラムシを対象にし、住みかに侵入する捕食者に対して、自己犠牲的な防衛行動を行なうことを発見しました。

ヨシノミヤアブラムシは、常緑樹のイスノキに虫こぶ(昆虫類などの寄生の影響により、植物の芽や葉などの一部がふくれて変形したもの)を形成し、住みかとします。そこへ天敵であるテントウムシ幼虫を導入する実験を行なったところ、翅を持たない無翅成虫が粘着性の液体を分泌して張り付くことにより、虫こぶ内への侵入を防いでいることがわかりました。無翅成虫はいったん敵に付着すると離れることが不可能となり、捨て身で防衛することにより虫こぶ内の他個体を守っているようです。

防衛した無翅成虫を解剖してみると、ほぼすべてが子を産み終えていました。そこで、防衛を行う時期の無翅成虫を実験室内で飼育したところ、大部分の個体が繁殖能力を失った後も長く生存し、腹部は敵に張り付く際に用いる分泌液で満たされていました。つまり、繁殖を終了した成虫が防衛物質を蓄えることで防衛を行うと考えられます。

ヒトはおばあちゃんが蓄えた知識・経験が社会の中で役立ちますが、ヨシノミヤアブラムシでは繁殖を終えた雌の成虫が自己犠牲的な防衛を行うことにより血縁個体を助けることが判明。今後の研究によって、繁殖終了後の延命をもたらす進化学的・生理学的メカニズムの解明にもつながることが期待されます。

ヒトも昆虫も、次世代を育てる、守る行動が延命につながる、生物、生命の神秘、力を感じさせますね。


昆虫の社会における「おばあちゃん効果」の発見:東京大学



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投稿者 kksblog : 2010年06月24日 21:06


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