●日本は科学者が育ちにくい?―第1回基礎科学力強化懇談会より (2008年11月28日)
文部科学省は、11月7日に開かれた第1回基礎科学力強化懇談会で出された意見をまとめ、公表しました。
この懇談会は、日本の基礎科学研究の力を強化するために必要な施策について話し合うものです。ノーベル賞受賞者を中心に、日本学術会議会長、日本学士院長、中央教育審議会会長らが参加し、基礎科学研究の研究環境や、財政支援などについて意見を出し合い、今後の基礎科学力強化の施策に反映させるということです。
第1回の会合では、アメリカなど海外での研究で成果を挙げた科学者を中心に、海外と比べて日本の教育の在り方や、財政支援の在り方が若手研究者が育ちにくい環境になっているという意見が多く出されました。
海外と日本の比較で特に問題点が指摘されたのが、財政面です。
日本の高等教育への公財政支出は、OECD加盟国中最低です。会合では、こうした財政の少なさが、研究環境の整備に影響し、若い研究者の海外流出につながっているという意見が出されました。
また、「国立大学の資金は政府からのものがほとんどで、寄付金の割合が高いアメリカと異なり、競争が生まれにくい」といった意見も出されました。このほか、「財政的にも社会に役立つ応用研究が重視されがちだが、基礎なくして応用は発展しない」など、基礎研究を重視する政策が必要という意見も出されました。
海外と比べ日本の教育の在り方に問題があるという意見も多く出されました。
例えば、アメリカでは日常的に激しく議論する雰囲気があることや、研究に専念できる環境があるため、若手研究者が育ちやすいということです。一方、日本の教育は、「新しいことを独自にやろうとするとKY(空気読めない)などと言われる」、「自分より優れた弟子を作ることを望まない先生がいる」など、自由な議論や独自性が生まれにくいことが問題であるとしています。
先日、日本人のノーベル賞受賞が大きな話題となりましたが、日本人の理系分野のノーベル賞受賞者の多くが海外での研究で成果を上げています。日本の基礎科学力を向上させ、若手の海外流出を防ぐには、彼らの意見はとても重要なものになるのではないでしょうか。
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投稿者 kksblog : 2008年11月28日 15:38