●脳は倫理的ジレンマにどう対処するか 米グループの研究発表 (2008年05月19日)
効率か、公平さか、どちらか一方を選ばなければならないとき、あなたならどちらを選ぶと思いますか?
イリノイ大学とカリフォルニア工科大学の研究グループが、「飢餓地帯に食料を分配するにあたって、分配の『効率』と『公平』のどちらかを優先しなければならない」という場面を想定して、意志決定の際に脳が働く領域を調べ、その結果を科学雑誌サイエンス誌に発表しました。
みなさんも想像してみて下さい。トラックに食料100キロを積み、飢餓に見舞われた地域へ運んでいます。そこにいる全員に食料を配布するのに時間を費やすと、20キロ分の食料は腐ってしまう。半数の人にだけ配るのであれば、腐らせてしまうのはわずか5キロですむ。あなたは、最大限多くの食料を配布するために、半数の人にだけ配りますか?それとも15キロ分を犠牲にしてでも公平に分配しますか?
この研究により「効率」か「公平」かを選択する決定を下しているのは、同一の部位がどちらにするのかを選んでいるのではなく、それぞれ違う領域が関与しているということが分かりました。効率を選ぶ決定には、脳の奥深い中心部分、大脳基底核にある「被殻(ひかく)」という領域、公平を選ぶ決定には、これも奥の方に隠れている「島」という領域が関わっていました。
「被殻」は報酬信号の処理に携わる領域、「島」は情動の処理に携わる領域であることが分かっています。このことから研究グループは、公平性についての判断は、理性よりも感情に基づくものであると述べています。また実験の結果、食料を無駄にしない代わり一部の子どもが食べ物を得られない「効率」よりも、少量ずつでも全員が食べ物を得られる「公平」の方が好まれる傾向にあることが確認されたということです。
「公平」とは理性的な考え方かと思えますが、実は感情から来ているものと言えるのですね。ヒトは社会を作り、その中で生活するようになったことを考えると、限られたものを分配することが、人間の感情に刷り込まれているのかもしれませんね。
■関連記事
脳科学総合研究センターより「ゆめみる脳科学地図」無料配布開始!
褒められることは子どもにとっての報酬?脳の喜ぶ姿を画像で公開
脳は倫理的ジレンマにどう対処するか
« 児童生徒の健康づくりのための学校・地域保健の連携~茨城県教育委員会 | トップページへ 外出先から手書きメモを送信―airpenNOTE POCKET発売 »
最新記事一覧
- 汚れが気になる人向け、「MONO」シリーズから黒色消しゴムが新登場(2013年10月08日)
- きれいな文字が書ける『文字力アップノート』発売~ナカバヤシ
- 教室とeラーニングをシームレスに連携させるシステム タブレット版も登場
- ソフトバンクの選手といっしょに練習できる野球教室 参加者募集中!
- 授業改善に役立つパンフレット『授業アイディア例』を作成~国立教育政策研究所(2013年10月07日)
- 『ジェットストリーム』から操作性、高級感を両立した社会人層向けペンが登場
- 教育用ICT機器は市場拡大の一途、タブレット端末が牽引する見込み
- この秋、東京国立博物館のワークショップで歴史上の「文化」を体験しよう
- クリスマスを外国で過ごせる学生向けホームステイ語学研修
- サッカーキッズ育成「オンライン自主練サービス」の試験運用が開始されています(2013年10月05日)
- 日本人の国語に関する意識や理解の現状について調査~文化庁(2013年10月04日)
- スマートフォンやタブレットを使っていても、やっぱり仕事の相棒は「ノート」
- 日本食文化・川場の食材・自然写真を融合「KAWABA国際自然文化サミット」【10月5日~20日、10月18~20日群馬県川場村】
- シヤチハタより「おりがみ工場」大人向けパッケージ版が発売されています
- 偏差値やイメージに隠れた大学の真の姿を公開したデータ集を刊行(2013年10月03日)
投稿者 kksblog : 2008年05月19日 12:54