●「脳内マリファナ類似物質」は、発達期の脳の興奮性神経伝達を抑制する (2008年02月22日)
このたび、乳幼児の脳の過剰興奮を抑えるしくみが解明されました。
by 金崎 修
脳内マリファナ類似物質『内因性カンナビノイド』が、発達期の脳で、興奮性神経伝達を抑制する働きがあることが発見されました。この発見は、理研脳科学総合研究センター津本研究ユニットと群馬大学との共同研究によるものです。
発達期の脳では、抑制性シナプスの生育が遅れていて、成熟脳で抑制に働くGABAも、逆に神経細胞の興奮を引き起こすために、抑制能力がなく、熱性けいれんなどの過剰興奮を起こしやすいとされています。
今回、発達が未熟な脳で、抑制機能が強化されるまでの間、「内因性カンナビノイド」が機能するメカニズムが明らかになったことにより、脳の正常発達の理解に役立つだけでなく、発達障害の解明や、治療法に欠かせない知見をもたらすこととなります。
私たちの脳内では、目、耳、鼻などがとらえた感覚情報、学んで吸収した知識情報など、膨大な情報がこの脳内の神経回路で正しく処理されています。
この神経回路は、神経細胞が「軸索」と呼ぶ突起を伸ばして、誘導因子や反撥因子の影響を受けながら相手を見つけ、シナプス結合を作って形成されます。その後、必要な結合は強化し、不要な結合は刈り込んで、回路が成熟していくと考えられています。
この神経回路網には、神経細胞を興奮させる興奮性シナプスと、逆に興奮を抑える抑制性シナプスがあり、興奮性シナプスは“グルタミン酸”、抑制性シナプスは“ガンマアミノ酪酸(GABA)”が主要な神経伝達物質として働き、情報を正しく伝えています。
ところがこのGABAが、出生直後の乳児期の脳では興奮を起こすため、発達期の脳では何が興奮を抑えているのかが、わかっていなかったというわけです。
GABAも、興奮を引き起こす出生直後には、「内因性カンナビノイド」が長期増強を抑制し、神経組織の異常興奮を抑えています。ところが、発達が進むにつれて活動の弱い周りのシナプスだけを抑制するようになって、活動の多いシナプスを周りから浮き上がらせるように働くと考えられます。
こうして、「内因性カンナビノイド」の未熟脳における興奮性シナプス抑制作用は、発達につれて変化することがわかりました。
脳内は複雑で、常に研究が行われているわけですね。
発達障害や病気についての研究は、これからもまだまだ解明できることがたくさんありそうで、期待してしまいますね。
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投稿者 kksblog : 2008年02月22日 00:31