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東大とトレンドマイクロ 共同研究成果の一部を発表 (2008年01月29日)

産学連携事業の共同研究を成果を見える形で進めるため、研究成果に主眼を置き、 共同研究に取り組む前の段階で企業と大学間で徹底した議論を行う、価値創造型産学連携創出スキーム「Proprius21」 を実施している東京大学。同スキームによる研究成果の実社会での活用が期待されるなか、1月28日にはトレンドマイクロとの共同研究として 「Webリンクの構造解析」の成果の一部を発表しました。

Webリンク構造解析に関する共同研究成果報告記者発表 
写真左から
増田直紀 講師(東京大学 大学院情報理工学系研究科)
藤田隆史 教授(東京大学 産学連携本部長)
大三川彰彦氏(トレンドマイクロ 上席執行役員日本代表)
近藤賢志氏 (トレンドマイクロ 事業開発室テクノロジーリサーチマネージャー)

安全サイトからも数ステップで危険サイト
07年6月から08年1月にわたり東京大学とトレンドマイクロの間で行われたこの共同研究では、 トレンドマイクロのWebコンテンツ評価データベースからランダムに700のURLを抽出、 各ページ内のリンクを3ジャンプ先まで辿りアクセスできる全ページが研究の対象とされました。

研究にあたった東京大学大学院情報理工学系研究科講師の増田直紀氏は、 38のカテゴリに分類された1200万以上のWebサイトを各種可視化ツールで解析。

その結果、安全なカテゴリから出発して、1ジャンプ先で性的カテゴリに到達する率は平均0・27%に過ぎないものの、 2ジャンプ先から3ジャンプ目に移ると、2・69%にまで上昇することがわかりました。 一見安全なサイトからもいくつかのリンクを辿れば危険なサイトにアクセスできることが示された格好です。

そのほか、ユーザーがリンクを作りやすいblogやbbsなど書き込み可能なコンテンツほど他のカテゴリと結びつく傾向が強く、 安全なカテゴリから悪性コンテンツのホストにリンクされ易いこと。

また相互リンクの密度が性的カテゴリでは特に強いこと。 更にはStreamingMedia/MP3カテゴリでは相互リンクが密接で関係性は強いが、 不動産カテゴリのでは階層化されたリンク構造が多いなど、各カテゴリに特徴的なリンク構造があることも明らかになりました。

Webリンクの構造を可視化するとカテゴリごとの特色が浮かび上がります  
全てのカテゴリにあるページのリンク構造を可視化すると
カテゴリごとの特徴が見え隠れします
(レッドはアダルト系、グリーン、ブルーはニュースグループやスポーツ・トラベルなど一般系)

「クリーク」(相互にリンクを結び合い緊密につながることで完全なリンクを持つ状態)を調べると、 930のホストをもつ巨大クリークの存在も確認されました。この巨大クリークは、 それぞれドメイン名は異なるがコンテンツは全て同じアダルトサイトに接続する仕組みになっていたと言います。

増田直紀(東京大学 大学院情報理工学系)研究科講師 増田氏は「人間関係を考えた場合、 多くてせいぜい10~20名程度で100人全員が仲の良い知人ということはあり得ない。 だがインターネットは人工物で自然界にあるネットワークとは異なる」と説明します。

このようなクリークは商業的意図を持って作成されており、クリックしても簡単には他のサイトに出られない仕掛けになっているようです。

複雑・巧妙・巨大化するネットの脅威に
求められる新たなテクノロジー

Webサイトの脅威の有無について、一般的なチェック体制では、精度の高い目視によるデータベースの更新、 機械処理的にテキスト内容からカテゴリを類推するテキストマイニングが使用されていますが、 急速に巨大化するネット上の全てのコンテンツを目視でチェックすることは現実的ではありません。 またテキストマイニングも言語対応の問題で課題が残ります。

そうした急激な変化への対応が求められるトレンドマイクロ上席執行役員日本代表の大三川彰彦氏は、「日々、 Webページが300億ページ更新されており、目視による判断やテキストマイニングなど従来のテクノロジーでは限界にきている。 新しいテクノロジーを適材適所に配置して融合していく必要がある」と述べ、 先進的な研究者を数多く有する東京大学との提携の意義を説明しました。

グローバルな産学連携に意義
先駆的な文理融合による共同研究に成果

一方の東京大学では、この共同研究を「日本の大学が国際的な産学連携に取り組むことはあまり事例がないが、 この研究によりグローバルな展開を行うトレンドマイクロと行うことができた。また単に理工系だけの研究ではなく、 経済研究科の研究者も共同研究者に加わり、先端的な異分野の融合領域である情報セキュリティ分野の研究ができた」 (東京大学産学連携本部長の藤田隆史教授)としています。

今後の研究について、近藤賢志氏(事業開発室テクノロジーリサーチ課テクノロジーリサーチマネージャー)は「半年の研究では、 充分に解析できていないものもある。今後も可視化手法だけでなく他の手法を取り入れたり、 データ収集の規模や元となるソースの種類を拡大しながら継続的に研究を進めていきたい」と語りました。

Web閲覧で危険度の予測も可能に
急速なスピードで拡大・展開する現代に対応するには、相応のレンジとスピードを備えた体制が欠かせません。産学連携による共同研究の多くが、 教授など研究者が属する学会等を通じて個人的なネットワークで行われることが多いのに対し、研究の母体となった「Proprius21」 では産学連携本部が積極的に企業にアプローチして、互いの席につく段階からオープンな議論を重ね、 産学の強みをすり合わせながら狙いを持った共同研究に取り組んでいます。

これまではあくまでアクセス時に危険か否かの判断がなされていたに過ぎませんが、この研究で得られた成果は、 Web閲覧時に危険度を事前に予測する技術への応用や、カテゴリ類推・分類技術の精度向上などに役立てられることになりそうです。 (吉木孝光)



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投稿者 kksblog : 2008年01月29日 23:39


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