●校務情報化を安全に (学校情報セキュリティポリシーセミナー報告) (2008年01月11日)
「情報セキュリティーポリシーが効果的に運用されていると言える方は手を挙げてください」
講師からの問いに手を挙げた参加者は10名にも届きません。校務の情報化が進むなか、学校を舞台とした情報漏洩は後を絶たず、 行政や企業と比べ、学校を取り巻く情報セキュリティ環境は未だ整備されていないのが現状です。また実際にセキュリティポリシーを策定しても、 有効に機能していない学校もあり、その効果的な策定・運用が求められています。
そこで今年8月、安心して学校の情報化が推進できるよう、学校に求められる情報セキュリティの調査研究を行う 「教育ネットワーク情報セキュリティ推進委員会(ISEN)」 が発足、平成19年12月23日には、 「学校情報セキュリティポリシーセミナー」 を開催しました。
会場となった東京国際フォーラムには、全国から教育委員会や学校の情報担当、事務職員ら約70名が参集、 情報セキュリティポリシーをいかに学校で効果的に策定・運用していけば良いのか、 講演だけでなく参加者はワークショップ等で積極的に意見を交換しました。
当初予定の50名を大きく上回る申込となった ISENセミナー。
現場の期待は大きい
欠かせない教育委員会と学校のコラボレーション
出来ることからひとつずつ
情報セキュリティポリシーが効果的に運用されていない現状を受けて、 基調講演で藤村裕一氏 (ISEN委員長・鳴門教育大学准教授)は、 「基本方針と対策基準を教育委員会が示し、 実施手順は学校の実態に応じて策定する。実効性のある教育版に特化したセキュリティポリシーの策定には、 そうした教育委員会と学校のコラボレーションが必要になる」と述べ、 策定にかかる支援の必要性を説明しました。
◇ ◇
パネルディスカッションでは、西田光昭教諭(千葉県柏市南部小学校)が学校でセキュリティポリシーが策定・運用されない原因として、 「用語が分かりにくい」、「内容が実際の状況と合ってない」、「目的がはっきりしていない」 と現場で指導する立場から従来からのセキュリティポリシーの課題を説明。
専門用語でなく一般教職員でも理解しやすい日常的な言葉で、ポリシーの策定・ 運用により何が良くなるのかをはっきりさせることが必要だといいます。
「最後は人が鍵になるので、教職員一人ひとりの理解が欠かせない。できることから少しずつ実行する。 手をこまねいているよりも動いていくことで周りに伝わる」(西田教諭)
メディア等で情報漏えいに関する報道がある度に同僚の教職員に啓発用の文書を配布するなど、 情報セキュリティ対策の必要性を日常的に周囲へ働きかけている西田教諭。最初から大掛かりな変革を狙い周囲の抵抗や無理解を生むよりは、 まずは身近なところから着実に、はじめの一歩を踏み出すことがポイントになります。
年間行事で扱う情報とToDoを関連付けたガイドブックが好評
新潟県上越市立城北中学校の二見恵美子氏は、事務職員の立場から同市で取り組んでいる校務の情報化を説明しました。
同市では、現場の先生方が理解しやすいよう、小・中学校と幼稚園における個人情報取扱いハンドブックを工夫。 なかでも年間行事と執務で扱う個人情報を関連付け、月毎にすべきことをまとめて示した「年間行事・執務内容一覧表」が好評だといいます。
一覧を見ると、新学期が始まる4月には、辞令交付式、新年度準備・学級発表、部活動等の緊急連絡網、家庭環境調査票、 保健に関する調査、新任式、始業式、入学式、職員会議、企画運営委員会、評価会議、学習参観、PTA総会、定期健康診断、発意行く測定、 フッ素洗口と、学校には実に様々な行事があり、扱いに気をつけるべき個人情報に触れる機会が多いことが伺えます。
その時々で扱う個人情報とその取り扱い上のポイントが示されているため、
忙しい先生方にとっても具体的でわかり易いつくりになっています。
二見氏はガイドブックについて「誰もが簡単にセキュリティが大事ですべきことがわかる」とその工夫を説明しました。
同市では個人情報に違反したら罰金が科せられますが、まとめた表にはケースに応じた罰金額も示されていて、
その作業が漏えい等の問題を起こした際にどのような結果を生むのか、
現実の問題として認識しやすいことも教職員の意識を高めることにつながっています。
なお、同市のガイドブックはWebサイトから閲覧することができます。Webサイトはコチラ。
最後に藤村氏は「策定して終わりでなく、それはあくまでスタート。PDCAサイクルのように、策定した後で見直し、
改善しながらポリシーの実効性を上げることが大切になる。
子どもたちに指導することが本業の先生方が完璧なセキュリティの知識をもつのは難しい。
ISENではポリシーの策定や運用面で役に立つ情報提供など、セミナー等を通じて先生方を支援していきたい」とまとめました。
予想を上回る教育関係者が参集したISENセミナー。今後のISENの取組みに期待がかかります。(吉木孝光)
【関連記事】
個人情報の安全管理に関するモデル基準を策定
【東京都】
情報漏えいが発生したときの対応ポイントとは
Winnyなどを通じた情報の漏えい等の防止についての関連情報
ストレスレスの
「校務情報化」模索(藤村氏インタビュー)
<情報セキュリティ対策>書籍・
冊子3冊紹介
« 高校生におサイフケータイ機能は必要? | トップページへ アメリカ・天才青年からのアドバイス 仕事で成功をおさめるためのステップ »
最新記事一覧
- 汚れが気になる人向け、「MONO」シリーズから黒色消しゴムが新登場(2013年10月08日)
- きれいな文字が書ける『文字力アップノート』発売~ナカバヤシ
- 教室とeラーニングをシームレスに連携させるシステム タブレット版も登場
- ソフトバンクの選手といっしょに練習できる野球教室 参加者募集中!
- 授業改善に役立つパンフレット『授業アイディア例』を作成~国立教育政策研究所(2013年10月07日)
- 『ジェットストリーム』から操作性、高級感を両立した社会人層向けペンが登場
- 教育用ICT機器は市場拡大の一途、タブレット端末が牽引する見込み
- この秋、東京国立博物館のワークショップで歴史上の「文化」を体験しよう
- クリスマスを外国で過ごせる学生向けホームステイ語学研修
- サッカーキッズ育成「オンライン自主練サービス」の試験運用が開始されています(2013年10月05日)
- 日本人の国語に関する意識や理解の現状について調査~文化庁(2013年10月04日)
- スマートフォンやタブレットを使っていても、やっぱり仕事の相棒は「ノート」
- 日本食文化・川場の食材・自然写真を融合「KAWABA国際自然文化サミット」【10月5日~20日、10月18~20日群馬県川場村】
- シヤチハタより「おりがみ工場」大人向けパッケージ版が発売されています
- 偏差値やイメージに隠れた大学の真の姿を公開したデータ集を刊行(2013年10月03日)
投稿者 kksblog : 2008年01月11日 14:57
このエントリーのトラックバックURL: