●「公立学校で5年以上勤務経験のある教員は採用しない」株式会社立 朝日塾学園高等学校 (2007年08月02日)
6月28日、教育家庭新聞社主催で「第8回私学経営セミナー」が実施された。テーマは「少子化に対応する私立学校経営と企業的視点」。3人の講師は「顧客満足」そして「マインド」「情熱」と異口同音に述べた。本号では全国初の株式会社立学校を教育特区にて設立した「朝日塾中学高等学校」学園長・鳥海十児氏の講演を掲載する。
前小泉内閣の構造改革により、教育特区が認められ、株式会社立の学校法人が可能になった。全国初の株式会社立学校として先陣をきったのが「朝日塾中学高等学校」だ。現在全国に株式会社立の学校は14校あるが、うち13校が通信制。全日制で義務教育に参入した全国で唯一の学校となる。鳥海理事長は塾経営から始まり、26年間で幼稚園から高等学校まで設立した。
塾から幼児教室の経営を開始後、幼稚園を設立。専門家を多く取り入れるなど塾の経営方針を活用した授業内容は好評を博した。「幼稚園での頑張りが続けられる小学校が欲しい」という保護者の声から、小学校を設立を決意。小学校でも教科担任制や習熟度別授業を取り入れた学校経営を行う。初年度から全員が中学受験にトライ、合格率は97%以上で「中学受験に強い小学校」という評判が立つ。
さらに「中学や高校も欲しい」という要望に応えようと学校法人の認可申請をするも、当時35億の負債を理由に認可は下りず。そこで小泉内閣の構造改革による特区制度を活用し、株式会社立の学校を設立。特区制度第一号の学校となった。
「特区」があったからこその設立が実現したが、「特区」があるから学校を作ろうと考えたわけではない。
◇ ◇
新幹線通学している子どももおり、高速道路を使ったスクールバスも運行。その人気は高い。では運営状況はどうなのか。
カリキュラムに自由度がある、認可がとりやすいなど「株式会社」であることのメリットもあるが、デメリットもある。補助金はなく、株式会社なので税金がかかる。中学校を経営して4年目だが、3月末決算で1億8000万円の赤字。しかし6年後には単年度黒字となり、さらに6年経ると累積赤字が消えるという。
特筆すべきは「学校債」「利付け債」の導入だ。入学者には1人あたり50万円の「学校債」の購入を義務付け、卒業の際には無利子で返還するというもの。また、「「利付け債」は年率2%で保護者に債券を発行する。「2%の利息は、この時代、保護者にとってもメリット。学校にとっても銀行から借りる利息よりはるかに安く、我々にとってもメリット」。こうして運転資金を調達している。
◇ ◇
無駄な経費は削減、必要なところに手厚く―をモットーに学校を経営している。教員用の机やロッカー、スクール用のバスはリサイクル品を活用する。そのかわりに生徒用の机は新品、教室にもクーラーを導入、より良い環境の提供に心を砕く。新品購入の場合も、複数の業者に相見積もりを取らせ「実質定価の4割」での購入を目安とするなど、コスト意識は高い。
「学校にとって教員が財産。生徒を伸ばす教員が欲しい」だから「公立学校で5年以上勤務経験のある教員は採用しない。危険だから」と述べる。逆に「塾や中小企業などで苦労してきた人がいい先生になる可能性が高い」とも。
年俸制と評価制度を導入しており、自己評価、他者評価(管理職や主任)などを取り入れ20項目300点満点で評価。その点数に応じた昇給・減給となる。
「合格保証制度」も朝日塾ならではの導入だ。中2の段階で「この学校に合格できる」と判定、もしその学校に不合格であったら3年間の授業料を返還する、というものだ。「例えば、数学の点数が悪くて不合格になった――ということになると大変なので、本人だけではなく、教員も頑張るようになる」という。幸いなことに、合格保証制度で学費を返還する必要のある子どもは1人もいなかったという。
「学校はサービス業の一種。生徒や保護者は顧客。顧客満足度を如何に高めるか」を主軸に、学校経営を行っている。
« 「親の学習」プログラムから学ぶ子どもとの接し方 | トップページへ インターネット親子セーフティ講座実施中 【東京都】 »
最新記事一覧
- 日本人の大人読解力・数的能力は1位 IT活用はOECD平均並み(2013年10月08日)
- 汚れが気になる人向け、「MONO」シリーズから黒色消しゴムが新登場
- きれいな文字が書ける『文字力アップノート』発売~ナカバヤシ
- 教室とeラーニングをシームレスに連携させるシステム タブレット版も登場
- ソフトバンクの選手といっしょに練習できる野球教室 参加者募集中!
- 授業改善に役立つパンフレット『授業アイディア例』を作成~国立教育政策研究所(2013年10月07日)
- 『ジェットストリーム』から操作性、高級感を両立した社会人層向けペンが登場
- 教育用ICT機器は市場拡大の一途、タブレット端末が牽引する見込み
- この秋、東京国立博物館のワークショップで歴史上の「文化」を体験しよう
- クリスマスを外国で過ごせる学生向けホームステイ語学研修
- サッカーキッズ育成「オンライン自主練サービス」の試験運用が開始されています(2013年10月05日)
- 日本人の国語に関する意識や理解の現状について調査~文化庁(2013年10月04日)
- スマートフォンやタブレットを使っていても、やっぱり仕事の相棒は「ノート」
- 日本食文化・川場の食材・自然写真を融合「KAWABA国際自然文化サミット」【10月5日~20日、10月18~20日群馬県川場村】
- シヤチハタより「おりがみ工場」大人向けパッケージ版が発売されています
投稿者 kksblog : 2007年08月02日 16:54