●正しく判断することの重要さ~本当の安全とは?~ (2007年07月16日)
Occupational Hazardsの記事、「The Myths of Safety」(「安全に関する神話」)では、感情に流されて間違った判断を下すことの恐ろしさを強く訴えています。
by bjearwicke
1989年にオイル・タンカーExxon Valdez(エクソン社)がプリンス・ウェリアム諸島(アメリカ合衆国のアラスカ州)で座礁し、油が大量に海に流出して環境に大きなダメージを与えました。
このダメージは海で生活していた生物にも大きな影響を与え、2800匹のラッコ、25万羽の海鳥などが死亡しました。そこでエクソン社は責任を取る形で、21億ドルの費用をかけて海の清掃作業を行いました。最終的に海の50%の清掃が完了しました。
この清掃から6年後―。
「生態の回復」を調べるための研究で、驚くべきことが発見されました。研究者によると清掃されなかった地域の方が、野生動物、水、土などの回復が明らかに進んでいたのです。つまり21億ドルをかけて清掃したことが、逆に環境破壊を促していたという結果になってしまいました。
この流出事故が起こった当時、エクソン社はこの清掃が異常なほど高価でしかも無意味であることを承知で、無理やり清掃に踏み切りました。この背景には、世間からの大きな批判がありました。世間がこの事故に対して何かをするべきだ、とエクソン社に圧力をかけたのでした。
同じような事例で、DDTとマラリアの関係についても取り上げられています。DDTはマラリアを媒介する蚊を殺す薬ですが、この薬は同時に鳥や動物などへの健康に悪い影響を及ぼすとして、やがてDDTは使用禁止になりました。しかし、DDT使用禁止でマラリアが流行し、そのせいで何百万もの人が今もアフリカで死亡しています。
この流出事故はTVなどを見た多くの一般人に衝撃を与えたことでしょう。「かわいそうなラッコを助けてあげたい」と思ったことでしょう。しかしこの衝撃的な映像は人々の心を感情的にし、正確な判断を下すのを遮ったともいえます。
この流出事故の例やDDT使用禁止の例のように、間違った判断は大きな代償となって返ってきます。これからの教育ではさまざまな方向から物事を見て、真の正しい判断ができるようにしっかりと指導していく必要があるのではないでしょうか?
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投稿者 kksblog : 2007年07月16日 20:34