●日本語50音図にまつわるものがたり (2007年07月16日)
日本語の50音図にまつわるお話を、モントリオール大学東アジア研究所の金谷武洋さんが紹介しています。
カリフォルニア大学ロサンジェルス校(UCLA)のデータバンクにある世界の499言語の統計によると、言語の平均音素数は31ですが、日本語の音は20〔母音が5つ、子音が13、半子音が2(y.w)〕しかないとのことです。日本語は、ほかの言語と比べてはるかに少ないことから、音声面においては世界でも珍しいほど簡単な言葉であるといえます。ちなみに、英語が45、仏語が36、それにハワイ語はなんと13しかありません。
日本語を学ぶ際、最初の山となるのはやはりひらがな46字ですね。
以下の点、お気づきでしょうか。
●ひらがなとカタカナがよく似た文字
「り・リ/へ・ヘ/や・ヤ/こ・コ/し・シ/つ・ツ/と・ト/も・モ/せ・セ/う・ウ/ら・ラ」
●ひらがなの前半だけでカタカナになる文字
「の・ノ/ふ・フ/そ・ソ/な・ナ/お・オ/き・キ/か・カ/め・メ/ま・マ」
●ひらがなの後半がカタカナになる字
「に・ニ/れ・レ/ぬ・ヌ/ほ・ホ」
これだけで、もうカタカナの半分以上学んだことになります。大半のカタカナはひらがなと同じ漢字から作られているので、比較的覚えやすいですね。外国人に日本語を教えるときに、この法則を知っている、知っていないのでは差がありますし、また学ぶ側としてもすんなり飲みこめるはずです。
次に、「あ・か・さ・た・な・は・ま・や・ら・わ」という並び方についてですが、「あ行」から「わ行」までの横の(子音の)配列には実は重要な決まりがあります。これは、発音するときに口の中で舌の接する(あるいは震える)位置、つまり調音点が「奥から前」の方に移動していく順です。
始めの「あ行」は母音なので、声帯から出てくる音そのままですが、「か行」からが子音で、子音は母音の流れをさえぎります。「か」の場合は口の奥の方で息を破裂させ、それが「さ、た」と前へ移動します。「た」と「な」の調音点は同じですが後者では息を鼻に抜かし、また「ま」は両唇音となります。「ま行」の後にさらに3行ありますが、ここでの問題は半子音の「Y」と「W」の間に子音「R」が挟まれていることです。「ら」は本来日本語になかった音なのかもしれず、今でも「ら行」ではじまる単語のほとんどは外来語です。
調音点の位置によって子音に並べるという方法は、実は日本人が考えたものではありません。ルーツを発見するキーは、日本最古の50音図(11世紀初め)が真言宗の醍醐寺に残されていることにあるといわれています。50音図をはじめて作ったのは平安末期の真言宗や天台宗の学僧たちで、彼らは仏教を支えるサンスクリット語の音韻学を学びました。50音図は漢字音表記の補助手段として実用的に用いられたとおもわれ、初期の50音図がカタカナで書かれているのもそのためです。サンスクリット語の音素は日本語より多いですが、共通するものだけを拾っていくと、母音では「アイウエオ」、子音では「K,S,T,N,H,M,Y,R,W」の順になります。そして、子音に母音を付けて音節としてあらわしたものが「カサタナハマヤラワ」というわけなのです。
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投稿者 kksblog : 2007年07月16日 10:30