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教育用ソフトウェアはテストの成績に影響を及ぼさない 米教育省の調査結果 (2007年05月30日)

米教育省の主導の下、教育用ソフトウェアの効果測定が行われました。授業にソフトウェアを導入したとき、テストの成績には効果があるのかないのか、調査したのです。調査対象となった教科は、リーディングと算数でした。

結論から言うと、教育用ソフトウェアを使おうが、使うまいが、テストの点数に影響はないと出ています。その代わり、授業の進行や態度形成などに影響がありそうだ、とのこと。実調査を行ったのは、Mathematica Policy ResearchとSRIインターナショナル(スタンフォード大学から分離独立した研究機関)です。

classroom

photo by A is for Angie

この記事は、こちらの資料を基にして、書いています。
Effectiveness Of Reading And Mathematics Software Products: Findings From The First Student Cohort(PDF)


【目次】
■調査の概要
■この調査って、つまり何を調べてるの?
■教育用ソフトウェアは、テストの成績に影響を及ぼさない
■教育用ソフトウェアは、テストの成績とは別の効果がある
■一方、日本はPCとプロジェクタを使った


■調査の概要
この調査では、ソフトウェアを前もって選定した上で(全部で4科目16種類)、調査対象に使ってもらい、その効果を調べています。調査に参加したのは33の地区の132の学校(今までに、類似の教育用ソフトを使ったことがない学校を選んでいます)。調査対象となったのは、439人の教師(と、その担当するクラスルーム)です。この調査対象には、4つのグループがありました。

1:1年生・リーディング:13地区、42校、教師158人、2619
2:4年生・リーディング:11地区、43校、教師118人、2265
3:6年生・算数:10地区、28校、教師81人、3136
4:6年生・代数:10地区、23校、教師71人、1404

※:代数は一般的には9年生で教わります。

こうして選ばれた先生達は「ソフトウェアを使う」「ソフトウェアを使わない」の選択肢をランダムに割り振られます。先生の自主的な選択ではないので、「PCを使い慣れている・いない」とか「教育用ソフトウェアの使用に前向きである・前向きでない」「教師の力量が高い、低い」といった、個々の先生側の要因は結果に影響を及ぼさないことになります(どのグループにも、均等に入っているであろうと期待されます)

また、調査は学年の最初から最後まで行われており、「ソフトウェアを使う」に割り振られた先生は、ずっと「ソフトウェアを使う」ことになり、「ソフトウェアを使わない」に割り振られた先生は、ずっと「ソフトウェアを使わない」授業を行います。その間に、3回のデータ収集が行われ、その結果を元に統計的な分析がなされています。

また、学区や学校によって生徒の成績は異なると考えられるので、階層的線形モデル(階層差があるタイプのデータで、階層からの要因を抑えることができる統計的モデル。つまり、この調査の場合、学区間や学校間で生じる家庭の生活レベルによる成績の違いを吸収し、ソフトウェアの使用効果だけを見られるようにしてくれる)を使用しています。

こうした調査デザインのもとで、教育用ソフトウェアが、テストの得点・クラス活動・先生、生徒の役割にどう影響を及ぼすのかを調べているのでした。


■この調査って、つまり何を調べてるの?
お上が選んだソフトウェアを使って授業をしたクラス、使わないで授業をしたクラスとで、成績を比較しましょう、ということです。

注意点として、この調査は「米教育省が選んだ教育用ソフトウェアの影響」にフォーカスしていることが挙げられます。これらのソフトウェア以外は、インターネットを使おうが、プロジェクタを使おうが、ワープロソフトを使おうが、プレゼンテーションソフトを使おうが、何を使ってもかまいません、としています。

その理由は「いや、そもそもテクノロジー使わないでの授業なんて、成り立たないじゃん?」と言ってるんですが、この辺、米国と日本との差を感じますね。


■教育用ソフトウェアは、テストの成績に影響を及ぼさない
テストの点に関係があったのは、ソフトウェアを使用している・使用していないではありませんでした。今回調べていたグループで、点数に有意に差を与えそうだという要因は2つ。「生徒一人当たりの先生の量」と「ソフトウェアの使用時間」です。

「生徒一人当たりの先生の量」は1年生のリーディングで、「ソフトウェアの使用時間」は4年生のリーディングで、それぞれ微々たるものの、効果があらわれています(「ひょっとしたら、これも関係ないかもしれない」くらいの書き方)。ほかの要因(先生の経験年数や最終学歴、クラスの人種の割合)は、関係がなさそうとのこと。算数の場合は、特に有意に効いている要因が見つからなかったようです。

■教育用ソフトウェアは、テストの成績とは別の効果がある
一方、教育用ソフトウェアは、テストの成績とは違った効果があるようです。効果というか、まあ、ソフトウェアを使っていったら、こんなことが起こりました、という感じですかね。

1:先生が勉強することで自信を持つ
この調査に先立って、先生に対してソフトウェアの勉強会を行いました。それで自信がついたみたいです。でも、実際に使ってみるとうまくいかず、自信をなくす先生が多かったようです。

2:ソフトウェアを使っていきたいという先生は、多い
先生はタフでなければ生きていけない。自信をなくしても、ソフトウェアを再度使っていきたいという先生がほとんどでした。

3:ソフトウェアを使っている方が、生徒は自発的に課題に取り組みやすい
先生は、生徒の事を見やすくなって学習の促しがしやすくなってそうだ、のこと。これはソフトウェアの設計にも左右されてそうです。


■一方日本では、PCとプロジェクタとを使った
その一方、日本においては、ICTを使った授業はテストの成績に効果があるという結果が出てきています。

100人の教員村では「ICTは教育に効果がある」と96人の教員が思いました

こちらの調査の主導は、文部科学省。こちらでは、主にPCとプロジェクタを使った授業の効果を測定しているようですね。その辺の使用を前提とした上で、ソフトウェアの効果を調べている米国調査とは単純に比べられないでしょうが、参考までに(榊原)



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投稿者 kksblog : 2007年05月30日 20:31


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