●連載・海外文化交流 (5)いつでも始められる・ 国際交流学習 (2007年04月23日)
東北学院大学養学部 准教授 稲垣 忠
▼いつでもはじめられる(はずの)
国際交流学習
インターネットを使って海外の子どもたちと交流すると言うと、
何やら大がかりで、先進的でなかなか踏みだしづらいイメージがあるかもしれません。
それでも学校がインターネットに接続されるようになってすでに10年以上が経ちます。テレビ会議、電子メール、
電子掲示板といった交流ツールも随分とコストの面からも、手間の面からも容易になってきました。
さらにこの連載でご紹介しているアートマイルプロジェクトのように、国際交流を支援してくれる団体・組織もあります。
「やってみようかな」そう思った先生は、最初の一歩を踏み出しさえすれば、寄って集ってサポートされて、
子どもたちと国際交流を楽しめる・・・はずなんですが、どこの学校でも実践されているかというとそうでもないようです。今回は、
交流する手間、時間に見合った価値ある学びに高めていくポイントについてご紹介します。
▼交流学習がもたらす価値は?
交流の目的や手段にもよりますが、
交流学習には、一般的な教科の学習では得難い力をつけるチャンスが豊富にあります。
たとえばコミュニケーションの力を伸ばすには、スピーチの練習を繰り返すだけでなく、相手の意見に耳を傾けたり、
相手に伝わるように表現を工夫するといった相手を意識することが重要です。交流学習の相手は、
子どもたちにはお互いに未知の相手です。同じ時間を過ごすクラスメートとの濃密なやりとりとはまた違った、
自分たちのことを知らない相手に言葉を尽くし、表現を工夫してしっかり伝えるトレーニングの場面になります。
一方で教科の学習をより広げたり深めたりすることにも役立ちます。社会科で言えば、
自分たちの地域をより深く調べないとなかなか相手に伝わりませんし、
相手の地域の暮らしや産業と自分たちの地域を比較することで、より広い視野から社会を見つめることができます。これは環境問題、
国際社会とのつながりといった地域に限定されない課題を学習する際にとても有効です。「遠く離れたホンモノの他者」
の存在を感じながら進める学びは、インターネットがあるからこそ実現した学びのかたちと言えるでしょう。
▼交流学習をデザインする3つのC
最後に、
交流学習の授業をデザインする「3つのC」をご紹介しましょう。一つめはCommunication。
交流するスキルを育てることが最初のハードルです。次はCommunity、
つまり仲間意識です。自己紹介にはじまり、少しずつお互いを知っていくことで、いっしょに学習する仲間感覚が育ち、
安心してコミュニケーションできる関係が出来てきます。最後がCollaboration、
どんな共同作業(コラボレーション)を実現するかという目的意識の視点です。アートマイルでは、
共同の壁画制作というコラボレーションを設定しています。筆者は、
研究者の立場からこのアートマイルプロジェクトの取り組みを拝見しています。アートマイルの壁画制作に見られる共同制作活動は、
制作のテーマ、分担の仕方など、お互いの子どもたちがしっかり意思疎通をしないと実現しません。その分、
交流学習を通して得られる魅力のすべてがつまっています。現在、昨年度の実践の分析をしているところですが、
あわせて10時間程度からはじめられるモデルプランも開発しています。さぁ、皆さんの学校でもチャレンジしてみませんか?
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投稿者 kksblog : 2007年04月23日 10:38
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