●「情報モラル」テーマに授業 千葉大附属で (2006年11月22日)
「新しい事象に遭遇しても、適切に対処できる生徒を育てたい」
千葉大附属中・三宅健次先生
千葉大学教育学部附属中学校では、11月7日、公開教育研究会が実施された。「生徒自らが成長を実感する教科の指導」をテーマとし、研究期間は3年間。今年度は3年目と集大成の年でもある。3年B組では三宅健次先生が「情報とコンピュータ」で「情報モラル」について授業を行った。
「公益性があるかどうか」
「手段方法が適切と判断できるかどうか」
本時の題材は「情報発信と自己責任~自分だったらどうする?」。
生徒らに提示された問題は6種類。
情報発信における匿名性の是非、情報発信と自己責任、確信犯による情報発信の是非、言論・表現の自由とその限界について各個人の判断を促す授業展開となり、生徒らからは興味深い意見が出された。
情報モラル研修教材2006を活用し「すし屋に行ってお腹をこわした、行かないほうがいい」という趣旨の掲示板への書き込みの是非について各自が「支持」「非支持」とその理由をワークシートに記載、その後意見を交換した。「真実であればしかたがない」という支持派の意見と「確かにお腹を壊したのは事実かもしれないが、掲示板への書き込みは良い手段とはいえないのでは」「掲示板を見る側の判断であり、営業妨害とはいえない」という非支持派の意見が生徒から出た。
これらの意見に対し三宅先生は、行為の是非の判断基準として「公益性があるかどうか」「手段方法が適切と判断できるかどうか」を上げた。
アメリカのサーバにアップされていると
日本では「裁けない」という事実
次に、2001年の読売新聞の記事を提示。児童虐待事件の加害者を実名で掲載するホームページの是非について。作成者は「子どもたちを虐待する人間は許しておけない」「抑止効果がある」と主張しているが、当の作成者は不明、かつ米国のサーバに公開されている。
この行為について、生徒らからは「犯罪を繰り返すケースが多いと聞くので被害者保護のためにも必要。情報を選択して掲載しているならば支持する」という支持派の意見が出た。一方非支持派からは「加害者の身内が被害を受ける可能性がある」と指摘。
三宅先生はこれらの意見に対し「被害者側と加害者側どちらの立場に立つかで意見が分かれるところ。アメリカでは、性犯罪に特化して情報を掲示している州もある。このサイトの特徴は、アメリカのサーバに情報がアップされている点。アメリカのサーバにアップされていると、情報の是非について異を唱えたとしても、アメリカの州法で判断されてしまう」と述べた。
ハンドルネームへの中傷は
名誉毀損になる?
ネット上の掲示板などではハンドルネームを使用するのが一般的だが、ハンドルネームに対する誹謗・中傷は名誉毀損になるのか。これについて判断を下す際、「名誉毀損」について自主的にネットで調べ、判断材料のひとつとする生徒も見られた。支持派の意見としては「友好関係は崩れるかもしれないが、名誉毀損にまでは至らない。ハンドルネームを変えればすむこと。ハンドルネームから個人が特定されることはない」。それに対して非支持派からは「名誉毀損には至らないとしても、誹謗中傷じたい支持できることではない」「ハンドルネームは分身のようなもの。名誉毀損になる」といった意見が出た。
三宅先生はハンドルネームの誹謗中傷に関しては既に裁判事例が多くあることを述べ、「ハンドルネームだけでは確かに個人情報にはならないが、それに付随した情報がどれだけネット上で出ているかが、名誉毀損にあたるかどうかの判断事例となっている」と述べた。
授業のねらいについて三宅先生は「『情報』の判断は、常に自分に任せられている。何が問題なのかを理解でき、判断することこそが情報モラル教育が求める実践力。これから新しい事象に遭遇しても、適切に対処できる生徒を育てたい」と述べた。
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投稿者 kksblog : 2006年11月22日 10:56
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