●「当たってラッキーなんだよ」という価値観を共有しておく 日本協同教育学会セミナーレポート2 (2006年08月17日)
8月5日、6日、愛知県の南山大学で日本協同教育学会第3回大会が開催された。その際に行われた「協同教育基礎講座I」 に出席してきたので、そのレポートを。2回目。今回は、協同教育とも(おそらく)大きく関わる内容でありながら、 セミナーの内容とは大きく違ったところに参ります。
今回の内容は、「指示や呼びかけ、対応の仕方で参加感を高める方法」について。
『先んじての注意1』
筆者は協同学習の専門家ではありません。また、日本協同教育学会員でもありません。書く内容は「協同教育基礎講座I」に沿って、
正確を期すように心がけますが、内容が協同学習の正統的なものになっている事は保障しません(というよりできません)。したがって、
今回のレポートも、手法を記す、いわゆるHowtoものを目的としているのではないということを明記しておきます。また、
そのようにも書いておりません。
というより、今回の主たる内容は、協同教育とは異なります。
協同学習に興味のある方は、学会にアクセスするのが一番良いと思います。
日本協同教育学会
http://jasce.jp/
『先んじての注意2』
前回の内容
「共に学んでいくには「責任」が大切 日本協同教育学会セミナーレポート1」を読んでおかないと、今回の話の内容はともかく、
流れはよく分からないと思います。
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■参加型セミナーの醍醐味が口を開ける:想定されていない質問と、場の混乱
■「参加する」と「参加感を持つ」とは違う~まずは「参加感」を持ってもらう
■【セキタ式】参加感を上げるテクニック
■参加型セミナーの醍醐味が口を開ける:想定されていない質問と、場の混乱
ここで話は、セミナーの受講理由をグループメンバーで共有する時間まで戻る。グループでの共有(集団思考)がなされた後には、 長濱氏が適当に人を当てていった。グループ内で集団思考を行って共有した内容を、全体に発表してくださいというのだ。グループ内で 「セミナーの受講理由」を共有したあとに、セミナーに参加したメンバー全員への共有を図る。もう一段階進んだ集団思考。ねらいは、 いろいろな受講理由があること、メンバーの多様性を、メンバーに分からせるとったところか。
ここで、長濱氏が2人目に当てた人から、セミナーの流れの意図と全然関係ない質問が出される。『生徒は、こうやっていきなり当てられると 「えー」とかいって嫌がるが、どうすればよいのか』と50がらみの、ごま塩頭の男性。起こる笑い。しばし戸惑う長濱氏。
おっちゃん、ナイス。
この男性は、『グループ内で集団思考を行って共有した内容を発表』して欲しいという、講師の想定 (質問の答えが一定の枠内にあるだろうという想定)範囲からまったく外れた質問を繰り出し、場を混乱に持っていきました。 全て分かって質問を出したのならたいしたものだし、分かってなくて出したのなら別の意味でたいしたもの。こういう状況がいきなり起こるのが、 参加型セミナーの醍醐味です。
長濱氏の答え。
当てられるのを「えー」と生徒が嫌がることは確かにある。これを防ぐには、
・当てること(発表になること)をはじめに言っておく
・不平等にならないようにする(長期的には全員当たるようにする)
・「当たってラッキーなんだよ」という価値観を共有しておく
「当たってラッキーなんだよ」という価値観をあらかじめ共有しておくというのは、とても素敵な手だと思います。協同学習の定義のひとつ「 「協同」の体験的理解が促進されている」にも沿っているし。
余談ですが、『当てられるのを「えー」と嫌がる』に対しては、心の準備をさせておくという手もあります。 参加者の参加感がある程度高くないと使えないですが、『目線をあらかじめやっておく』『個人思考時に軽く話しかけておく』などして、 さりげなく前振りしておくと、心の準備ができる。参加者の「いきなり当てられる」感を相当減らすことができます。
■「参加する」と「参加感を持つ」とは違う~まずは「参加感」を持ってもらう
ここからは、セミナーの内容とはずれたお話。
このように、参加型のセミナー(授業も同じです。この先は、文言を「セミナー」で統一します)をおこなった際、 メンバーに質問を出すと講師の予想していた答えとまったくずれた答えが返ってくることが、多々あります。これは、 上記したように参加型のセミナーの醍醐味のひとつです。そして、チャンスでもあります。想定外の問答は、好意的な空気の中で起きてさえいれば、 非常に楽しいものです。話が広がりやすいし、笑いも起きる。
こういう状態の楽しい雰囲気では「参加感」が高まります。実際に問答に答えている訳でなくても、「え?」と頭の中で考えたり、「さあ、 先生はどうやって答えるかな?」と興味を持った瞬間に、そのメンバーは参加をしている気分になる。場に自然に入っていきます。
参加型のセミナーを行う際には、いきなりハードルの高い「参加」を呼びかけるのではなく、対個人/対全体で「参加感」を高めてから、 「参加」へ繋げる工夫が必要になります。
「参加感」を高めるには、大きく分けて、2種類ある(ように思われます)
1:カリキュラムそのものの構造で高める
2:指示や呼びかけ、対応の仕方で高める
とっさに行え、さらに、応用範囲が広いのは、「2:指示や呼びかけ、対応の仕方で高める」方法です。どんなカリキュラムでも行えますし、 参加人数の数もあまり問題にしません。すこし工夫すれば、1対1の状態でも使うことができますし、1対大人数の状態でも使うことができます。
■【セキタ式】参加感を上げるテクニック
前回に述べたように、8月6日の「協同教育基礎講座I」セミナーは、長濱氏、関田氏と、二人の講師が担当されたのですが、 中でも関田氏は2番の方法で参加感を上げることに非常に長けてらっしゃいました。まあ、ストレートに表現してしまえば、講師・ ファシリテーターとして上手い。そこで、関田氏が使っていたテクニック(ご本人がテクニックとして使っているかどうかは分かりませんが)を、 敬意を表して勝手に「セキタ式」と名づけ、ここでいくつか公開しておきます。参考になると思います。
【セキタ式・質問や意見の受け方】
1:質問や意見を再構成する
「~ということですね?」
2:ほめる
「いや、大変に鋭い!!」
3:色々な回答を述べる。決め付けない。すかさずほめる
「答えはいくつか考えられると思いますが、ひとつはこう考えられる。こうも考えられます」
「なるほど、それは、これからとても必要になってくる分野なのかもしれませんね」
【セキタ式・課題の出し方】
1:課題の全体を先に述べる
「では、今から「もし【お話タイム】を実際の現場で使うとしたら、どういう使い方があるか、まずは個人思考をしてください。
この個人思考のあとは、グループでの集団思考。考えを広げる時間になります」
2:例示をする。例示を行っていく中で、簡単に答えられるものについてだけ、メンバーに質問をする。すかさずほめる。
「例えば、この質問文の中の「課題」ってなんでしたっけ? その通りです!! (違う人に)じゃあ、「時間」は何秒でした? 正解です。
素晴らしい!!」
3:課題を再度言う
「では、今から「もし【お話タイム】を実際の現場で使うとしたら、どういう使い方があるか。個人思考の時間です」
4:実践に入る
【セキタ式・課題最中のコミュニケーション】
・ほめる「もう、3つできちゃったんですか? すごい!!」
・簡単な促し。あくまでもほめる「どうですか? 悩んでらっしゃる? お、その発想、素晴らしいですね。その方向で、ぜひいってみましょうよ」
(榊原)
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投稿者 kksblog : 2006年08月17日 08:58
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