● 情報教育対応教員研修全国セミナーはじまる JAPET (2006年08月09日)
学校の夏期休暇にともない、今年も情報教育関係者向けセミナー 「情報教育対応教員研修全国セミナー 」(主催 社団法人日本教育工学振興会-JAPET-)が各地で 実施されている。
新宿NSビル(東京都)では7月末、 「すぐに役立つ!情報モラル指導者セミナー」(協力 スズキ教育ソフト株式会社ほか)が開催。
永野和男教授(聖心女子大学)の基調講演や、野間俊彦教諭(東京都北区赤羽台西小学校・主幹)による講義などが行われ、 小学校から高校までの情報教育担当者など、120名を越える教育関係者が会場に足を運んだ。
永野教授は基調講演「情報モラルをどう捉え、どう実践していくか」のなかで、 発達段階に応じた指導の必要性や情報モラルのカリキュラム構成について説明。
「情報モラルの基礎は『道徳』の『人に温かい心で接し、親切にする』『友達と仲よくし、助け合う』
といった日常モラルの骨組みの中にある。日常モラルは9歳までに形成されると言われているが、
小学校3年生までに善悪を子どもに教えると素直に吸収する。
だが小学校6年生になると情報社会の影の部分を逆手にとっていたずらすることもある。小学校低学年では、
大人が見守るなかで一緒になって情報の良い面を体験させながら日常モラルを優先させて教えることが重要だ」と述べた。
「家庭との連携不可欠」
野間俊彦先生は「学校における情報モラル指導について」のなかで、東京都教職員研修センター調査等を紹介しながら、
子どもたちに新しく普及している携帯電話への対処や家庭と連携した指導の必要性について語った。
◇ ◇
小学校では 情報モラルに関する項目が学習指導要領に位置付けられていない。
また大人の教師はコミュニケーションの経験が豊富で情報機器を用いたコミュニケーションでも判断を誤ることが少ない。そのため、
なかなか危機感を持てずに情報モラルの指導の優先順位が下がってしまっている。
情報モラル教育は、交通安全教育や生活安全教育に加えられる新しい時代の安全教育。 交通安全教育と生活安全教育は大人も子どもの頃に受けてきたが、情報モラル教育を今の大人は受けておらず、家庭に指導を任せるのは難しい。
だがその一方で学校の指導だけでは限界があり、家庭との連携が欠かせない。 居場所のない子ども達がインターネットや夜の時間帯に外へ出てトラブルに巻き込まれることから、家庭には『子どもが相談できる親になろう』 と伝え、『子どもの居場所をつくろう』『家庭内のコミュニケーションを増やそう』『我が家のネットや携帯利用のルールをつくろう』 『フィルタリングソフトを入れましょう』とお願いしている。
本校では3年生以上の総合的な学習の時間で年間20時間の情報教育を実施しており、そのうちの4、5時間を情報モラルに当てている。
なかには45分の授業は難しいと感じる先生もいるだろうが、そのような時は何かの教科で関連する項目を10分でも良いので指導して欲しい。
何を教えたいのかが大切だ。
「学校としてのカリキュラム作成を」
学校内研修の場で、学校としての情報モラル教育用カリキュラム作成を指導する中村武弘研修主事(三重県教育委員会)は、小・
中学校での研修事例を紹介した。
◇ ◇
先生には真面目な方が多く完璧を求めすぎるため、多忙感が生まれてしまう。80%の完成で良いので一人で頑張りすぎず、
楽しく皆でカリキュラムを考えてもらうよう指導している。年間カリキュラムを作成する際には、
全て大事だからと大量に細かいカリキュラムを作ってしまう学校もあったが、それでは全部できない。忘れがちだが、
使ってもらえるカリキュラムにするためには、何を何のためにその学年で教えるのかを示すことが大事だ。
また中学校では夏休みを前にした中学1年次の1学期の指導が大切になる。警察と連携しながら犯罪と絡めた指導を行い、 家庭とも連携して社会性を指導する。最後には人権について触れながら「しっかり考えないと訴えられる」と明言する学校もある。
情報モラル教育を効果的に実践するためには、小学校は2年単位、中学校では3年を通して「この学年でこの項目を行う」 という強い意志や、全職員で取り組めるような工夫を盛り込みながら学校としてカリキュラムを全員で作成し、 それを教室や職員室に掲示することが必要になる。ワークショップ形式の研修を行うのも一つの方法だ。
財団法人コンピュータ教育開発センター(CEC)が昨年3月にまとめた調査で、小・中・高の多く(約9割) の教職員が指導の必要性を認識しているものの、実際に行われている指導は2割にも満たなかった情報モラル教育。
関連教材が数多くWeb上に揃うほか、同セミナー会場でも展示された 「あんしん・ あんぜん情報モラル」(スズキ教育ソフト)など情報モラル教育に役立つ教材も充実してきた。今後の指導が期待される。
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投稿者 kksblog : 2006年08月09日 11:23
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