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授業の終わりにコメントを言わせる (2006年05月24日)

今回は、授業の終わりにコメントを言わせる方法について考えてみる。

コメントは、なにも生徒から先生に出すだけではない。基本は、書かせてから言わせることと、互酬性の原則を守ることである。

◇ ◇

■基本は、「考えさせる」→「書かせる」→「言わせる」

当たり前ながら、人間、考えてないことは言えない。したがって、前もってコメント発表するための何かを書かせておいて、言わせるという流れを用いることで、コメント発表はかなりやりやすくなる。

ただ、講義型の授業は知識伝達が中心になっているため、板書した内容のノート書きとなることが多い。これだけだと、コメントを言ってもらうのは難しい。ノートには板書されたことがそのまま写されているだろうと考えられるので、ノートをいくら見てもそこにあるのは考えたことではなくて、教えられた知識。「考えさせる」という要素は、そのノートの中には薄い可能性が高い。

そこで、質問形式で子どもの頭を働かせ、板書とは別のことを書かせる必要がある。たとえば、その日の授業の内容が安土桃山時代の話で、次の授業から江戸時代に入るというのであれば、授業終了5分前に

「これで争いが続いた時代が終わって、江戸幕府の時代に入っていくんだよね。300年近い幕府の統治で、ちっちゃいいざこざは起こるんだけど、日本中を巻き込むような戦争はなくなりました。ところで、この境目の時代に武将だったとしたら、徳川統治といくさと、どっちが好きになりそう?」 (考えさせる)
「「徳川統治」と「いくさ」。選んだほうをノートに書いて。できれば理由も」 (書かせる)
「徳川統治」 「平和が良い?」 「平和が良いなあ。いくさだと死んじゃうかもしれないし」 「徳川統治の世だと、武将の意味無くなっちゃうかもだよ。そこで何する?」 「引退して、水戸黄門みたいに全国回る」 (言わせる)
「いくさ」 「ほう、徳川と争うんだ」 「天下統一したいから」 「徳川破っちゃうんだ。破れるかな?」 「うん、真田のへたれは駄目でも、俺ならいける」 (言わせる)

上の展開なら、「実際、江戸時代に全国を回るのは関所とかあってかなり面倒だったんだよね。特に武士に対して、そういう規則を細かく決めて、各地に徹底して守らせる工夫をすることで、徳川は全国に対する支配権を堅固にしていったんだ」とか

下の展開なら、「この後、徳川の世になるんだけど、統制に不満を持つ人とかもやっぱり居て、何度か大騒動が起こっていたりします。代表的なのが大塩平八郎かな。別に、大塩は天下統一したかったわけじゃないけどね」とか

コメントはコメントで納めるだけでなく、次からの内容の前振りに使うこともできる。


■もうひとつの基本
 ~ 互酬性の原則

互酬性というのは、とても難しい考え方ではあるものの、まあ平たく言えば「お互いさま状態を保とうとするところが人間にはある」ということ。

互酬性が破れると、こういうことも起こる。

「生徒へ自筆コメント-ありのまま下手な字も個性-朝日新聞秋田版朝刊」

生徒に感想を書くことを求めていたプリントに、「自分は字が汚いから(一種一級の身体障害者の方です)、子どものプリントを汚してしまう」という理由で、ハンコを押す事で対応をしていたら、感想をまったく書いてくれなくなってしまった。そこで、一念発起してコメントを書き始めたところ、子どもとのコミュニケーションがはかれるようになった、という話。

これを、互酬性の考え方から言うと、子どもたちは、自分たちの「感想・コメントを書く」という行動に対し、先生の「ハンコを押す」という行動を、同等のものとして見なしていなかったということになる。先生は一生懸命にプリントを見ていたのだが、子どもたちはハンコが押されているということから「どうせ先生は見てないんだろうし」と考え、コメントを書くのをやめてしまった。

つまり、子どもにコメントを言ってもらうためには、ひとりひとりの子どもに対して、きちんとコメントをしているか、少なくともコメントを言える状態に、先生が成っている必要がある。これが互酬性の原則から導かれる、もうひとつの基本。

では、先生は30~40人もの生徒を相手に、どうやってコメントをするだけの観察をしていくことになるのか。その話は、また次回に(榊原)



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投稿者 kksblog : 2006年05月24日 19:07


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