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義務教育改革に対する産業界からの意見 「改正賛成・早めによろしく」 (2006年05月02日)

産業界から、義務教育改革について、相次いで意見書や提言が出されている。4月18日には経団連から「義務教育改革についての提言」が、4月20日には日本商工会議所・東京商工会議所から、要望「教育基本法の早期改正を望む」が、それぞれ発表された。基本的に双方とも「改正賛成・早くよろしく」という論調だ。

今回はこの2つを取りまとめて紹介をしてみよう。

◇ ◇

それぞれ、公表されている場所は、こちら

経団連:義務教育改革についての提言

商工会議所:要望「教育基本法の早期改正を望む」


■改革を行わなければならない理由
 ~ 信頼を取り戻すため・環境が動いているため

それぞれが、教育改革を求める基礎的なロジックは、少し違う。

○経団連:既存の教育システムは社会の信頼を失っている
○商工会議所:環境が動いているのに教育が変わらないのはおかしい

というものだ。

経団連は、既存の教育システムはすでに社会の信頼を失っていると説く。

(経団連) 昨年10月の内閣府のアンケートによれば、現在の公立小学校、公立中学校に「満足」と答えた保護者はそれぞれ12%、10%にとどまる一方、「不満」としたのは32%、37%にのぼっている

こうした現状が塾通いや私学偏向へのスピードを向上させているとする。これは、義務教育が画一的で均質的な教育にとどまっていたせいだとし、義務教育が社会の信頼を取り戻すためにも、変わらなくてはならないとする。

商工会議所は、社会環境が動いているのに教育が変わらないのはおかしいとする。

(商工会議所) 現行教育基本法は、昭和22年制定以来、半世紀にわたって一度も改正されずに今日に至っている。しかしこの間、科学技術、情報技術の進化、グローバル化の進展とともに、少子高齢化、核家族化、地域コミュニティの変容等、われわれを取り巻く環境は急激に、かつ大きく変化し、それに伴い、教育をめぐる様々な課題・問題が顕在化している。

教育界で問題が起こるのは、まわりの環境が変わったのに、教育そのものが変わってないからだ、という考え方。


■だからどうしろと?
 ~ 現場ベースの改革・現場の教育力向上

その上で、行うべきだと考えている内容は、「現場を重視せよ」という意味では双方とも似ている。

○経団連:現場ベースで教育改革を行える環境づくりを
○商工会議所:現場の教育力を向上させる規定づくりを

経団連は、こう述べる。

(経団連) 教育現場の発意と創意工夫が、保護者や地域社会との協力とあいまって、学校経営や授業の具体的な改善に結びつく必要があり、そのための環境整備が求められる。

商工会議所は、こうだ。

(商工会議所) 現場の教育力を着実に向上させるためにも、「教員の資質向上」「家庭教育・親の教育責任」「学校・家庭・地域社会の教育力の再生と相互の連携強化」の重要性・意義を、この法律の中で明確に規定すべきと考える。

基本的に、現場での教育を重視すべき、地域社会と協力すべき、という視点は双方とも変わらない。


■具体的にはどうするの?
 ~ 切磋琢磨は大事です

では、その現場での教育を重視すべきという視点から、具体的に何をするか。この点に関しては、経団連の提言だけが踏み込んでいる。商工会議所の要望には、具体的な改革案は書かれていない。

経団連の提言には、以下の3つの具体的な改革案が記されている。

(1)学校選択制の導入
(2)教員評価を含めた学校評価の実施・公表
(3)教育の受け手の選択を反映した学校への予算配分

この3つ、基本的には「学校にいる人たちも切磋琢磨しましょうよ」と主張するもの。そのために「評価制度を導入しましょう」としている。

(1)では学校が、(2)では教員と学校が、それぞれ評価の対象となる。こうして評価を行わなくてはならない理由のひとつは、(3)の予算配分の判断のベースとなるから。「お金には限りがある。高評価のところに多く配分しましょう」ということになる。


■「愛国心」はどうするの?

商工会議所の要望には、具体的な改革案は書かれていないが、現在ある意味でホットなトピックスである「愛国心」について書かれている。(経団連の提言には、そういった記述はない)

(商工会議所) 「日本の伝統・文化の尊重」「郷土や国を愛する日本人としての誇りと国際社会の一員としての意識の涵養」という新たな理念を示すことが極めて重要と考える。

この記述の前に「公共の精神・道徳心・自律心の涵養」という一文もあり、「愛国心」というよりはシティズンシップ育成に近いことを想定しているのかもしれない。


■おわりに
 経済同友会と青年会議所の教育に対する見解

他に、日本での経済団体として、経団連と並んで述べられることの多い経済同友会がある。また、日本青年会議所という若手経営者のための団体もある。この二つは義務教育・教育基本法改正についての公式見解を(近々では)出してはいない。

しかし、教育基本法改正に絡めて、教育に対しての見解を示す部分は、それぞれのサイトにある。

○経済同友会
「04月18日北城恪太郎経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨」

「日本社会は多民族で生活することを受け入れるような社会基盤、いわゆる教育や医療、年金、治安を含め、社会体制の整備をしつつ、国民がそれを受け入れる土壌を作ってから受け入れるべき」

「社会の価値観も含め、ニートやフリーターが出ないような教育も必要」


○日本青年会議所
「倫理・道徳教育に関するアンケート」

「対外発信誌の掲載記事に関するアンケート」

日本青年会議所のサイトには、メンバーの意見のアンケート結果が掲載されている。日本青年会議所にいる層(「籍・人種・性別・職業・宗教の区別無く、20歳から40歳までの志の高い青年経済人によって構成されております」同サイトから抜粋)の教育に対する意見として参考になる。

また、同会議所のトップページには「教育基本法 与党の改正案決まる! あなたはどうお考えになりますか?」と題した特集ページが組まれ、教育基本法改正法案が全文掲載されている(4月30日現在)
(榊原)


要望「教育基本法の早期改正を望む」を関係方面に提出

義務教育改革についての提言



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投稿者 kksblog : 2006年05月02日 13:37


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