●マダガスカルで言葉の通じない子達と遊ぶ(後編) (2006年03月22日)
今回のPick it up!!も、ちょっと番外編。マダガスカルにて、日本語・英語の通じない(僕が言葉でコミュニケーションできない)こども達を相手にいろいろ遊んできました。もとい、遊んでもらってきました。画像を混ぜつつ、その様子をご紹介。今回はバオバブの木などがあります。
■3月4日 フォートドーファン
└ こどもたちと追いかけっこ、水遊びをする(前編)
■3月5日 フォートドーファン
└ こどもたちとリアルままごと、砂浜サッカーをする(前編)
■3月6日 ムロンダヴァ
└ こどもたちと脱力する
■3月7日 アンタナナリボ
└ こどもたちとジャグリングをする
■3月8日 アンタナナリボ
└ こどもたちとにらめっこをする
■3月9日 アンタナナリボ
└ こどもたちとおはじきをする
マダガスカル南端の街、フォートドーファンから、西海岸の街、ムロンダヴァに向けて出発。朝一番の飛行機であるにもかかわらず、飛行機到着が30分遅れる。まあ、この国ではあまりにも当たり前ではある(というより、世界の大部分では、こっちが普通のような気がする)。この時の、パイロットと飛行場関係者の言葉に聞き耳を立てていると、
「なんかさあ、飛行機の調子悪いんだよね。気抜くと、ちょっと空中で傾くのさ」
「んー。そうな。ひょっとしたらお客さんの荷物の積み方が悪いのかもしんないな」
「じゃ、あっちっ側に積みなおしてみてみよか?」
「そうすっか」
150人乗りのジェット機のバランスって、そんな程度のことで取れたりするもんなんでしょうか。ひとひらの不安を抱えつつ、この作業を見まもる。でも、なんとかしようというその態度はえらいと思います(補足:マダガスカルの人、お願いをすると何とかしようとします。「できません」とか、あんまり言いません。でも、「何とか」がえらい見当違いのことが多いです。でもがんばります。どちらかというとボケ役向きです)
さらに30分延長。結局、予定を1時間超過して離陸。
赤茶けた土地が飛行機から見える。マダガスカルでは赤い土壌が多いようだ
ムロンダヴァに着き、バオバブの木を見に行く。こんな感じ。
「星の王子様」で有名な木、バオバブ。現地では、巨人がいたずらして、木をさかさまに植え替えてしまったという伝説が残っている。マダガスカルには8種類あるらしい
バオバブは水を好むようで、水の近くにはえていることが多い。
絡み合ったバオバブ。恋人のバオバブと呼ばれている
地平線から「天使のはしご」がのびて、バオバブの木を含めた辺り一帯を染めている。
夕日に染まったバオバブを見ていると、こども達が近寄ってきた。リンゴを食べている。もらった。食べた。
リンゴは首都アンタナナリボの近くで取れる。自然な甘さと、水気をとるという感じ。
この時、連れの面々は一所懸命に記念写真やらなんやら撮ってましたが、僕はなんとなく疲れていたので、この子と一緒に、交互にリンゴをかじって、夕日を見てました。ぼーっと。そしたら、女の子が近づいてきて花をくれたので、思わず頭に飾りつつ、3人で交互にリンゴをかじって、夕日を見てました。ぼーっと。まあ、何も遊びを仕掛けてるわけではないですけれど、こういうのも大好きです、僕。
【脱力する、振り返り】
○そこに一緒に居て心地良いなら、むりくり何かをやる必要もない。
アンタナナリボに到着。マダガスカル共和国の首都。近くのベッドタウン部もあわせると、人口400万人強。この国の4分の1ほどの人間が住んでいる街。気候は、初夏の軽井沢といったところか。
1896年、この国を植民地化したフランス人たちの多くは、この場所にかたまって住んだ。もともとメリナ王朝の時代から首都ではあったし、高地(海抜1200m強)で気候的に過ごしやすい上、マラリヤの心配が少なかったからである。この後、この街全体をフランスの文化が覆っていくことになる。だからだろう。アンタナナリボは、遠景の街並みがぐっとヨーロッパっぽい。(補足:ついでに、こういう歴史があるため、この街はフランス料理とフランスパンとケーキとがとても美味しいです)
ヨーロッパの地方都市っぽい街並み。
宿についてゆっくりした後、散歩に出かける。石を2つ持って、お手玉をしている二人の女の子たちを見かけた。思いつきで、この子にジャグリングを教えてみようと思い立った。石を貸してもらって、もうひとつ石を拾って、しばし3つの石でジャグリングをしてみせる。
じっと見ている。
石を返す。
3つ目の石を受け取らない。二人は、2つの石を持って、駆けていってしまった。
【ジャグリング、振り返り】
○すこし急に過ぎたかもしれない。女の子と同じように2つの石でお手玉をやるという時間をすこし過ごしてから、3つの石でジャグリングをすれば、一緒にジャグリングを練習するというところまで到達することができた可能性がある。一昨日のフォートドーファンでは自然とできていた遊びのやり取り、
「単純な行動で少しずつ刺激を上げて行くと、言葉が通じなくてもお互いに乗りあっていくことが比較的容易にできる。(■3月4日 フォートドーファン「追いかけっこ」参照)」
「同じやり取りを繰り返したあとに自分の動きを変化させると、その変化した動きが繰り返されるやり取りになる可能性が高い。(■3月4日 フォートドーファン「水遊び」参照)」
を、ジャグリングのやり方を「教える」という事が頭にあるだけで、僕は自ら破ってしまっていたのだった。
→馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない。
→遊びでは、「何かが向上することはある、かもしれない」程度の鷹揚さが良い。
「Jumbo」に行く。アンタナナリボで数店舗出店している大型のスーパーマーケットだ。外国人滞在者や高所得者層を対象にしており、食料品からNintendo DS(売り切れでした。店の人曰く、入ってきてもすぐ売り切れるとのこと。Nintendoの力を、マダガスカルで見せつけられるとは思わなかった)まで売っている。店舗の形は正方形に近い。一辺は150メートル以上あるだろうか。
ここで、同行者連がお土産の買い物に没頭。お土産品に興味のない僕は、ずいぶんと手持ち無沙汰になってしまった。そこで、暇にあかせて、物価のチェック。
原材料系のものは安い(牛肉が1キロで135円とか)。テレビやラジオなど、少し高級品に分類されるような工業製品も、実は意外と安い(もちろん、日本と比べて、という話。現地の人には、なかなか気軽には手が出せないはず。27インチのブラウン管式テレビが8000円弱とか)。
日本より妙に高いなと思ったのは、その中間にあるようなものだ。具体的には、日本で100円ショップで売っているようなもの(プラスチック容器や筆記用具、食器など。この辺りが300~500円前後で売られていたりする)。後はヨーロッパブランドのもの。これも高い。
(参考:2006年3月現在でのマダガスカルの最低賃金は約110円/日。守られてないところも多いという)
・・・ということを一通り見て、ふむふむと納得したものの、依然同行者連の買い物熱はおさまりそうにない。仕方がないので、アイスでも食べて暇つぶしをしようとすると、レジのところに居る、兄妹だろうか、5~10歳くらいの3人のこどもがしゃがんだり寝そべったりしながら何かを一所懸命に見ている。
僕もしゃがんで視線をあわせてみる。その視線の先にあるのは、熱帯魚。なるほど。確かに、熱帯魚は、マダガスカルではちょっと珍しいのかもしれない。
熱帯魚は、育てるために電気機器(ポンプや浄水器、温度調整用のヒーターとサーモスタット)が不可欠になる。
しかし、マダガスカルでは、電気のインフラがまだしっかりしていない。2、3秒という短い時間の停電が実に良く起こる。少し激しい雨が降ると、10分くらいの停電もざらだ(雨季だという条件が重なったものの、3日間の滞在の間に短い停電は10回以上、長い停電は2回ほどあった)。こんな状態なので、マダガスカルでは電気料金は結構高い。電気は、生活に不可欠な財というより、多くの人にはある意味での嗜好品の一種だ。
こんなことを考えながら、こども達のほうを振り返ってみてみると、6つの瞳は熱帯魚ではなく、僕を興味津々に見ているじゃありませんか。なんですか。スーパーの床で寝転がるようにしゃがみながら、店の水槽の熱帯魚を見ている大人がそんなに珍しいですか。珍しいですね。熱帯魚より希少価値かもしれませんね。ご注目、本当にありがとうございます。
寝転がるようにしゃがみながら、しばし視線をあわせた後、均衡を破ったのは僕なのでした。
「ほらほら、顔びろーん」
くちびるをつまんで、横に伸ばします。僕のくちびるは横に伸ばされて(以下略、詳しくは「やけくそのボディランゲージ」参照)
したら、
顔びろーん
顔びろーん
顔びろーん
6つの瞳がそろってやり返してくるじゃないですか。
「ほらほら、顔きゅー」
目じりを真横にまっすぐ伸ばす。僕の目はきつねのように(以下略、詳しくは、同上「やけくそのボディランゲージ」参照)
したら、
顔きゅー
顔きゅー
顔きゅー
6つの瞳がそろってやり返してくるじゃないですか。
このあと、彼らのお母さんが6つの瞳たちを引っ張っていくまで、僕らは延々とにらめっこをやり続けた。
「ふう、いい勝負だったぜ」
立ち上がって彼らを見送り、ふと気づくと、6や24ではきかない数の老若男女の瞳が、熱帯魚ではなく、こどもでもなく、僕を興味津々に見ているのでした。なんですか。スーパーの床で寝転がるようにしゃがみながら、こどもとにらめっこをしている大人がそんなに珍しいですか。珍しいですね。ご注目、本当にありがとうございます。これが日本男児の生き様というものです。
【にらめっこ、振り返り】
○複数の人間でワークをする(含む、遊び、勉強、運動)ときには、メンバーのパーティシペーターシップ(一種の参加感)が必要になる。パーティシペーターシップの度合いにより、その「場」から得られる楽しさや、学べるものの度合いも、大きく変わってしまう。
その「場」におけるパーティシペーターシップには2種類あると考えられる
- 参加者間で醸成されるもの
- 個人が資質として育ててきたもの
醸成されるパーティシペーターシップには『■3月4日 フォートドーファン こどもたちと追いかけっこ、水遊びをする』での振り返りで考えたことなども大きく効いてくると思われる。アイスブレイクなどは、このパーティシペーターシップを醸成するための方法のひとつだと捉えることもできる。
では、個人の資質としてのパーティシペーターシップとは何か?
朝。散歩をしていると、謎のゲームをしているこどもたちがいた。ビー玉を使って遊んでいる。2、3回見せてもらっているうちに、だいたいのルールが分かってきた。
こどもが赤ちゃんを背負って遊ぶ風景は、この国ではまだ、普通だ。
○基本動作
ビー玉を指ではじく
○目的
1.ビー玉を、ゲートに通す。
2.他のビー玉に自分のビー玉をぶつけて弾き飛ばす。
1の後、2を行なう。すべてのビー玉ゲートに通す、もしくは相手を弾き飛ばすことができたら、連続してはじくことができる。
ゲームの順番は、遠いところからビー玉を投げて、ゲートに一番近いところに位置どれた人からという事になっているようだ。
おはじきというか、ゲートボールの簡易バージョンというか。ちょっとやらせてもらったが、ちょっとシンプルすぎて、あっという間に終わってしまうのだった。一番初めの打順の人がだいたい勝ってしまうので、はじめの位置取りの時点で勝負が見えてしまうのだ。
【全体、まとめ】
○シンプルであることは大事(はじめの一歩、認めあうサイン)
○変化をすることはこわくない(乗りあっていれば)
○変化しないことはこわくない(気持ちよければ)
○違っているということは、大切
○「知らないこと」が「こわいこと」になるか、「どきどきできること」になるか。「知っていること」が「つまらないこと」になるか「さらに突き詰めたいこと」になるか。分水嶺の鍵のひとつは、パーティシペーターシップにある、かもしれない→これについては、今後考えていきます。
次の予定の時間が迫って来たので、手を振って「みさおちゃん」宿に戻ることにした。宿に向かって歩いて行くと、学校帰りだろうか、制服を着た少年の背中が見えてきた。使い古しの、ぼろぼろの乾電池を蹴とばしながら歩いている。
少年の蹴りそこねた乾電池が、こちらに転がってくる。乾電池を少年に蹴りかえした。
乾電池が少年の方に転がっていく。少年は、僕のほうを向いて乾電池を蹴る。僕は、また蹴りかえす。彼も、また蹴りかえす。速くなる。どんどん速くなる。僕らは走っていく。蹴りながら走っていく(榊原)
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投稿者 kksblog : 2006年03月22日 12:21
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