●マダガスカルで言葉の通じないこども達と遊んでみる(前編) (2006年03月15日)
今回のPick it up!!は、ちょっと番外編。マダガスカルで、日本語・英語の通じない(僕が言葉でコミュニケーションできない)こども達を相手にいろいろ遊んできました。うそです。ちょっと見栄はりました。遊んでもらってきました。画像を混ぜつつ、その様子をご紹介。おまけとして、横っ飛びで有名なサル、シファカの写真などもあります。
▲マダガスカルでのミッション「現地の子達と1日1回遊ぶ」
実は、行く前からもともと考えていたのです。自分の知っている言葉が通じない子達を相手に、どれだけ遊べるものなのであろうかと。1日1回くらい、現地のこどもたちと遊んでみたいなあと思っていたのでした。どうやって遊ぶか、ねたは特に考えてなかったのですが、何とかなるであろうと。要は、行き当たりばったり、いつもの通りってことです。
▲行き当たりばったりで、こうなりました 遊びのメニュー
■3月4日 フォートドーファン
└ こどもたちと追いかけっこ、水遊びをする
■3月5日 フォートドーファン
└ こどもたちとリアルままごと、砂浜サッカーをする
■3月6日 ムロンダヴァ
└ こどもたちと脱力する(後編)
■3月7日 アンタナナリボ
└ こどもたちとジャグリングをする(後編)
■3月8日 アンタナナリボ
└ こどもたちとにらめっこをする(後編)
■3月9日 アンタナナリボ
└ こどもたちとおはじきをする(後編)
■3月4日 フォートドーファン
こどもたちと追いかけっこ、水遊びをする
バンコクからアンタナナリボにつく。そこから、国内便に乗って、フォートドーファンに。フォートドーファンは、マダガスカル島の南端に位置する典型的なリゾート地。海ぞいにホテルなどが立ち並ぶほか、近くにいくつかの自然公園がある。
ホテルについてから、タクシーに乗って、近くの海岸に。
マダガスカルでは海岸が近隣住民のトイレの替わりになることも多いため、海岸を散歩するときに気をつけなくてはならない。ここは海水浴場になっており、そういうことが禁止されているようだ。比較的きれいな海。
海岸に着くと、年のころ10~13くらいのこどもたちが寄ってくる。別に日本人が珍しいというだけで寄ってきているわけではない。物を買えといって寄ってきているのだ。フォートドーファンで多いのは、ブレスレット、そして首飾り。一度興味のあるふりをして「落ちんな?」。買え買えとうるさくなる。
(■=榊原の行動:▲=こどもたちの行動)
■ちょっと逃げてやる。
▲ちょっと追ってくる。
■もうちょっと逃げてやる。
▲もうちょっと追ってくる。
■思いっきり逃げてやる。
▲思いっきり追ってくる。
■転びそうになる。そのまま前回り受身をかます。
▲こどもの一人が笑って側転をする。
■ロンダード(側転半ひねりのこと)をする。
▲こどもの一人が真似をしようとする。失敗。
■転びそうなその子にダッシュで近づいて、わきの下をくすぐる。
▲大笑い。仕返しにくすぐりにくる。
■大笑い。仕返しにくすぐる。
▲大笑い。仕返しにくすぐろうとする。
■よける。ちょっと逃げてやる。
▲ちょっと追ってくる。
以下、似たような追いかけっこをなんどか繰り返した。
【追いかけっこ、振り返り】
○「逃げる/追う」というところでは、少しずつ行動をエスカレートさせている。
○「受身/側転/ロンダード」というところでは、行動を少しずつずらしている。エスカレートさせているのは一緒。
○「くすぐる/くすぐられる」というところでは、同じことを繰り返している。
→単純な行動で少しずつ刺激を上げて行くと、言葉が通じなくてもお互いに乗りあっていくことが比較的容易にできる。
しかし、こどもは容赦ない。同じことを何度も繰り返そうとするので、ちょっと疲れた。砂浜なので、走るのも疲れる。逃げるべく、水着を持ってきていなかったが、ズボンとシャツとを脱いで、トランクスで泳いでしまうことに決める。一緒に来た人たちに荷物を預けてしまい、海の中へ。物売りのこども達が一緒に来た人たちについていってしまったことを確かめた後、しばし泳ぐ。疲れて波打ち際に戻ったところで、水遊びをしていた5~8歳位のこども達と目が合う。
(■=榊原の行動:▲=こどもたちの行動)
■手を上げる(故いかりや長介さんの「おいっす!!」イメージ)
▲笑って手を上げる。
■顔をびろーんっと伸ばす
▲笑う
■顔をさらにびろーんと伸ばす
▲笑いながら近寄ってくる
■近寄ってきたこどもに片手で水をかける
▲笑って避ける
■しばし水中にもぐってみる
▲笑いながら近寄ってくる
■両手で水をかける
▲笑って避ける
以下、繰り返し。途中でこともが増え、最終的には7、8人になった
やはりこどもは容赦ない。同じことを何度も繰り返しても飽きない。そのうち、僕はこむら返りを起こしていたのが、こども達が笑いながらわらわら寄ってくるので、笑顔で水をかけつづけていたのだった。
KKS初公開、榊原写真。できるだけ快適な閲覧が可能なよう、何をやっていたかが分かる程度にまで自主規制で小さくしました。この時、笑ってはいるものの、実はこむら返りを起こしていて、榊原、内心涙で一杯です
【水遊び、振り返り】
○派手でない、すぐに真似できる動きでコミュニケーションをスタートさせると、お互いに乗りあっていきやすい。
○同じやり取りを繰り返したあとに自分の動きを変化させると、その変化した動きが繰り返されるやり取りになる可能性が高い。
○乗りあっているとき、時にはつらさに耐えることも(大人的態度として)必要。
→乗りあっているときは、多少大胆に行動の変化をさせても大丈夫。変化に抵抗があるときは、乗りあっている度合いが、その変化の負荷に比べて弱いのかもしれないと疑ってみる。
■3月5日 フォートドーファン
こどもたちとリアルままごと、砂浜サッカーをする
3月5日は自然公園に向かった。フォートドーファンの、すこし内陸部より方向に車で1時間ほど進む。横っ飛びで有名なサルのシファカやホシガメ、ワオキツネザルを見た。写真だけで記述は割愛。
シファカ
「暑いです」やる気のないシファカ達
ホシガメ
「なんかケンカ売っとんか、ワレ?」カメラに向かってぶつかってくるガラの悪いホシガメ
ワオキツネザル
レストランで昼の休みをとる。レストランの裏手でこども達が何かを一所懸命にむしっている。近づいてみると、それは鶏の頭なのだった。
この子は7、8歳くらいだろうか。鶏の頭の羽毛をむしっている
マダガスカルの地方部では、このような鶏が普通に放し飼いにされていることが多い
これは、こども達とその家族が食べるものとなるのだろう。しかし、彼女らにとってこの活動は手伝いではないらしいのだ。近づいて写真を撮り、カメラを収めてから、笑って手を上げると(いかりや長介風)、彼女も僕に笑い返して、まだ羽毛の取れきってない鶏の頭を渡してくれた。一緒にむしろうという訳だ。おそらく彼女にとって、この鶏の頭の羽毛むしりは、手伝いではあるものの、遊びが渾然一体になっているものなのだろう。
こども達のむしる方法を参考にしながら、僕も一緒に鶏の頭から羽毛をむしる。後ろの木陰では、赤ん坊が眠っている。
その後、僕はその頭の下にくっついていたのであろう鶏肉の料理を食べた。おそらく、そのとき、彼女達は、自分が、そして僕がむしった鶏の頭を食べていたはずだ。
【リアルままごと、振り返り】
行動は、それをどう認知するかによって遊びになったり、労働になったりする。
自然公園での見学を終え、ホテルに帰ってきた。少し休憩をした後、近くの海岸まで散歩をする。すでに夕方、日が沈みつつある時間。砂浜までは降りず、海を崖の上から眺める。
夕暮れ
砂浜では、集落のこども達がサッカーをやって遊んでいた。マダガスカルはサッカーの盛んな国のようで、そこかしこでサッカーをしている姿を見ることが出来る。ユニフォームを着ている場合もあるが、ない場合には「上半身裸チーム」と「服着用チーム」という風に分かれていることが多い。
崖の端に腰掛けてこども達がサッカーをしているのをしばし眺めていると、目のあった女の子が手招きをして、誘ってくれた。「笑うな!!」。挨拶をしてから、がけを落ちるようにして降りて、参加する。相変わらず、こどもにはモテモテになることの多い僕ではある(参考リンク:スマイルキラーと呼んでくれ)。
崖と海とに挟まれたサッカーグラウンド
上記したように、こども達のサッカー場は砂浜だ。サッカーグラウンドは長方形になっていることが多いが、この砂浜サッカー場も多分にもれない。グラウンドの長い辺の片方は僕の座っていた崖、片方は波打ち際。ボールが崖に当たったり、海に入って水に浮かんだりするとスローイン扱いとなる(グラウンドの横幅は、波の具合で変化する)。縦幅は本物のサッカーグラウンドと同じくらい。
ゴールポストは、砂浜に突き立てられた二本の棒。棒の間を通せば、ゴールとなる。この日はメンバーが少なかったので、キーパーはおいていなかった。かわりに二本の棒の間が50センチくらいしかない。ゴールするには、この間を転がさなくてはならない(上空を通しても、ゴールにならない)。
これは前日にとったもの。記述に比べて広いのは、この日はメンバーが多く、キーパーが居たせい
誰が仲間かわからない状況の中、ゲームは進んで行く。誘ってくれた女の子が仲間なのはわかった。あとは、誰がどちら側なのか分からない。なにせ、彼らはかなりサッカーに慣れており、ポジションを比較的守りながら動いているのだった(小学生の校庭サッカーにありがちな、ボールにわいわい群がっていくことはない)。ディフェンスラインに居るのは、どちらかどちらかわからない。少しずつ、手探りで仲間を見つけていく。
そんな状況なのにも関わらず、僕は何度もボールに触ることができた。僕が上手いのではない。彼らが上手くボールを渡してくれるのだ。
良く見ると、サッカーをやっているメンバーは12歳くらいの子から、20歳近いのではないかと思える子まで居る。これだけ年齢差があると、一緒に楽しく遊べるようボールを一様に回す術を自然と身につけるのだろう。
彼らにとって、渡さないことは簡単にできるだろう。例えば、年長でボール捌きの上手い子になると、片方のゴールから、もう片方のゴールまで、相手を避けつつ、一度もボールを下に落とさずにリフティングで持っていける技術を持っている。下は足場の不安定な砂浜なのにも関わらずだ。しかし、年長の彼らは、その技術を、あまりボールがいきわたってない相手にボールを渡すために使っているのだった。
そんな配慮もあって、僕は、何度かゴールの近くまで迫り、初めに誘ってくれた女の子(彼女がセンターフォワード役だった)にボールを渡すことができた。
ボールをゴール近くに持っていったり、相手のシュートをすんでのところで防いだりなどの良いプレイが起こると、敵味方関係なく行なわれるしぐさがあった。良いプレイをしたと思う相手に対し、
- こぶしを握り、腕を軽く上げる。
- そのしぐさをやられた人間も同じ動作をする。
- 上げた腕の手首同士を軽く打ち付ける
- お互い、自分のこぶしを自分の胸にかるく打ち付ける
こういう挨拶的な動作をお互いが気づいたときに行なうことで、お互いが認め合っていることを示すのだ。
まったく知らない動作だったため、初めはちょっと戸惑った。2~3回目くらいには慣れ、その後は自分から相手に向けても動作を始められるようになった。やられるととても嬉しいし、やって相手が笑顔で返してくれるのもとても嬉しいものだった。
【砂浜サッカー、振り返り】
・何かが「違う」という状況は、遊ぶ際の防ぐべき要因とはならない。むしろ連続した遊びのステージのもとでは、大きな成長の要因と転化する可能性がある。
・お互いが認めているということを、挨拶的(定型の)動作や言葉で簡単に表せるようにして、お互いに行なえる環境を作ると、とても場が楽しくなる。
【砂浜サッカーの後で】
暗くなってボールが見えづらくなると、砂浜サッカーは終わる。マダガスカルの地方都市では、まだ電気が通ってない家庭も多い。食事が始まり、あとは寝るだけとなる。先ほど紹介したしぐさをお互いにしながら、皆は解散していく。
僕は、炭の臭いのする通りを歩いてホテルに帰る。通りの両端には木造やレンガ造りの家が立ち並び、食事の準備をしているのが見える。炭の匂いは食事の匂いでもある。
まだ明るいフォートドーファンの、ホテル近くの町並み。見ての通り、木や藁でできた家も少なくない
隣には、初めにサッカーに誘ってくれた女の子が居る。彼女は『スティロ、スティロ』と繰り返す。鉛筆をくれと言っているのだ。
彼女にとって、僕はちょっと珍しい遊び相手ではあったものの、やはり経済先進国から来た裕福な人間でもある。鉛筆をくれ。そういう気持ちも分かる。
あげるべきか。あげないべきか。僕のポケットにはペンがある。あげてもさほど痛いわけではない。ホテルの部屋まで戻れば、まだペンは何本も残っている。
僕は、あげない方を選んだ。彼女は、このあといやがおうでも経済社会の中に巻き込まれていく。あげるのは簡単だが、それは「日本人には、ねだれば貰えるのだ」という態度や風評を作る。それは将来的に考えれば、彼女のためにも、広く考えるとマダガスカルの人のためにもならないだろうと、僕は思った。もっとも、こう考えるのは、経済先進国の人間の傲慢さなのかもしれないけれど。
彼女は、ホテルの入り口まで送ってくれた。彼女は何か一生懸命に伝えようとしている。僕はマダガスカル語はほとんど分からないし、フランス語は読むだけだ。英語で何とか伝えようとしてみるが、彼女は英語が分からない。
「みさおちゃん」
知っている数少ないマダガスカル語で、僕は彼女にお礼を言った。彼女は僕をじっと見たあと、ボールを蹴る真似をし、マダガスカル語で何かしゃべった。彼女の言ったことが、なぜか分かった。
『明日も同じ時間にやるんだ。来れる? また一緒にサッカーしようよ』
僕は、明日の朝の飛行機で、ここから数百キロ離れた都市、ムロンダヴァに向かう。
「ごめん。駄目なんだ。明日は別のところに行っちゃうからね」
日本語で返す。彼女も、日本語でも意味が分かったようだった。僕は彼女と握手をして、軽く彼女を抱きしめた。
彼女の胸のふくらみが意外に大きいことに気がついた。栄養状態のせいもあると思うが、特に地方都市のマダガスカルのこどもは、見た目より数歳年上であることが多い。12~13に見えるこの子は、ひょっとしたら15~16程度なのかもしれない。
背中をぽんぽんと二度叩いて、もう一度握手し、別れた。僕は、炭の匂いのする通りを歩いて帰って行く彼女の姿が消えるまで見送った。
マダガスカルの15~19歳の少女1000人あたりの出生数は137。平均初婚年齢は女性で20.6歳。地方都市であれば、平均初婚年齢はぐっと下がる。彼女はおそらく、数年のうちに結婚し、子供を生む。この国に訪れる機会がまたあって、この町の、この砂浜にもう一度来たとしても、彼女と一緒にサッカーをすることは、もうない。
(後編に続く)
【おまけ:とってもやさしい一言マダガスカル講座】
「落ちんな?(Ohatrinona:ウハ「チ」ヌナ)」 = いくら?
「笑うな!!(Manahoana:マナ「ウ」ァナ)」 = やあ!!
「みさおちゃん(Misaotra:ミ「サ」ウチャ)」 = ありがとう
注:「」で囲んでいる部分にアクセント。ただし、冒頭の日本語で言っても、十分通じる。
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投稿者 kksblog : 2006年03月15日 18:23
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