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ジョハリの窓から体験型学習プログラムの構築法を考える (2006年01月18日)

ジョハリの窓。とても使いやすいツールなので、色々な教育系・心理系ワークショップで理論的説明に使われることが多い。知っている読者の方も多いと思う。今回は、このジョハリの窓をつかって、体験型学習の流れの考え方をご紹介。

前置き-ジョハリの窓ってなんですか?

ジョハリの窓とは、自分自身のことを2つの軸で表現した図のこと。

軸1:自分自身が(知っている自分/知らない自分)
軸2:他人が(知っている自分/知らない自分)

それぞれの軸に2つのカテゴリがあるので、計4つのスペースがある図となる。

【明るい窓】
自分自身が知っている自分/他人が知っている自分
自他共に認める自分
【盲目の窓】
自分自身が知らない自分/他人が知っている自分
知らぬは自分ばかりなり。言い方や思考のくせなど
【隠された窓】
自分自身が知っている自分/他人が知らない自分
見せてないため、他人は気づいていない自分
【未知の窓】
自分自身が知らない自分/他人が知らない自分
誰も気づかない、自分の可能性

つまり、ジョハリの窓は、「自分自身や他人から見ると、自分はどんな人間か?」という観点から作られた図ということになる。アメリカの心理学者、ジョー・ルフトとハリー・イングラムが共同で考えた図であり、ふたりの名前の頭をとって「ジョハリの窓」と名づけられた。


成長するとはどういうことか

ジョハリの窓で人間像を捉えた場合「成長」する方法は2種類ある(僕は、3種類あると考えていますが、今回は1つ割愛します)

・自己開示
・フィードバック

これらは、「明るい窓」を押し広げる方向に働くと考えられている。


自己開示-オープンに行こうよ

自分自身を回りにアピールする。つまり、自分自身をオープンにする。自分が見る自分と、他人が見る自分の差を少なくすることにより、心理的には「楽になる」と考えられている。ジョハリの窓で考えると、「明るい窓」を「隠された窓」方向に押し広げる方法だ。「隠された窓」だった部分が、「明るい窓」に変わることになる。

しかし、自分の格好悪い(と自分が考える)部分を他人に見せるのは怖い。ひょっとしたら嫌われてしまうかもしれないとも思う。「楽になる」のは、それほど簡単なことではない。

とりわけ、彼女/彼氏に対しては、なおさらだろう。かくして、結婚してから「こんなはずじゃなかった」という悲喜劇が繰り広げられることになる。ことも、ままある、かもしれない。


フィードバック-ダメ出しを受けとる

フィードバックとは、自分自身について他人からコメントをもらうこと。コメントを受けることで、自分自身を省みて、成長を促せると考えられる。ジョハリの窓で考えると「明るい窓」を「盲目の窓」方向に押し広げる方法だ。「盲目の窓」だった部分が、「明るい窓」に変わることになる。分かりやすい言葉で言えば「ダメだし」。

ここで、自分を振り返って考えて見よう。ダメだしは、時によってはいやなものだ。素直に受け取れるかどうかは、ダメだしをもらう相手にもよるし、状況にもよる。

例えば、初めて会った人に「いやあ、あなた声がもごもごしてて、話が分かりにくいですねえ」とか言われたとする。どんなに感じの良い人で、敵意も嫌味もない雰囲気で発せられたとしても、その瞬間に反感を覚えるはずだ。

また、どんな良い内容のダメだしを受けたとしても、自分が体力的に疲れているときなどは、「もう止めてくれよ」と思うこともあるかもしれない。


フィードバックは「ダメだし」だけではない。相手への「ほめ言葉」も含まれる。しかし、ほめ言葉でも反感を覚えてしまう場合が、実はある。それは相手がかなりの自信を持っている分野に対するほめ言葉の場合だ。

例えば、トリノオリンピックにいけるレベルのフィギュアスケート選手に対し

「いやあ、○○さん(お好きな選手の名前をどうぞ)、スケートお上手ですねえ」

と言ってみる。○○さんは、にこやかに「ありがとうございます」というだろう。しかし、内心『そりゃ当たり前だろ』と思うに違いない。ケンカを売ってるのと同じである。

「フィードバックが大事」と一言で言う事が多い(特にビジネス系)が、実はかくのごとく難しい。


体験型学習の順番は、自己開示→フィードバックが基本

自己開示/フィードバックは、どちらにしても心理的には「怖い」ものだ。フィードバックは、それにくわえて、他人からごちゃごちゃ言われる「嫌悪感」が付きまとう。

よって、体験型学習の活動を組み立てるときには、心理的負担の低い方から高い方へ、すなわち「自己開示」→「フィードバック」という流れになる。アイスブレイクに自己紹介をするタイプのものが多いのは、自己紹介はフィードバックの発生しない、定型的な事実(つまり話しやすい)の自己開示となることが多いからだ。自己紹介をすることで、お互いの警戒心を解くという意味も、もちろん多分にある。

こういう、自分開示の中でも言いやすいタイプの事柄を話すという、いわば自己開示の練習期間を経て、少し話しにくいタイプの「こう考えた」「こう思う」という、深い自己開示活動に入っていく。


フィードバックは、自己開示活動がこなれたころ、徐々に絡めていく形となるのが普通だ。ただし、このときも、

事実レベルでのフィードバック(定型的)→事実レベルでのフィードバック(非定型的)→「私は、○○さんの事をこう思った」というタイプのフィードバック

と、順番に進めていく。特に最後の段階は「私はこう思った」という自己開示と「君の事をこう思う」というフィードバックとを兼ねた段階にあたるため、十分に集団の状態がこなれている必要がある。

内省を含むタイプの体験型学習は、上記のような段階を踏んでいけると好ましい。ただし、その集団がある程度の自己開示とフィードバックができる段階なのであれば、わざわざ手前の段階に戻る必要は、さほどない。


おわりに-ちょっとだけ注意点

以上、ジョハリの窓を元にして、体験型学習の構築法を考えてきた。構成的エンカウンターなど、アクティビティ集を購入してはみたものの「さて、どれをやったらいいものやら」と悩んでしまっている時には、参考にしてもらえるだろう。

ただし、このレベルで考えただけでは、長時間のプログラムを組み立てたり、自分自身で新しいアクティビティを考えたりするときには、ちょっと足りない。こういう場合は、ほかにも考えるべきことがいくつもある。その話は、また別の機会に(榊原)



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投稿者 kksblog : 2006年01月18日 20:04


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