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アサーティブで行こう!! (2006年01月11日)

近年、教職の世界でも、アサーティブトレーニングが各地で行われている。

自分の主張したいことを、卑下するでなく、居丈高になるでもなく、相手も尊重しながら、丁寧に伝える。アサーティブな自己主張は、それなりに訓練しなければ、実践することが難しい。そして、それは論理的な論旨展開にも通じるものがある。

今回は、ミニアサーティブトレーニングを誌上で展開してみよう。

■そもそもアサーティブって何ですか?
アサーティブには、いろいろな定義があるだろうが、ここでは冒頭にも書いた

「自分の主張したいことを、卑下するでなく、居丈高になるでもなく、相手も尊重しながら、丁寧に伝える」

を使おう。

この定義の中で大切なのは、「相手も尊重しながら」の部分。自分の主張したいことを尊重するのと同じように、話をする相手と相手の主張したいこととを尊重する。自分が一方的に引くわけでもなく(「卑下するでなく」)、相手を一方的に引かせるでもなく(「居丈高になるでもなく」)、フェアな対話を目指すこと。これがアサーティブの概要。

この「相手も尊重しながら」がクリアできてしまえば、アサーティブ的な対話は、ある意味とてもシンプルで簡単だ。

1:自分の「主張したいこと」をはっきりさせる。
2:はっきりさせた「主張したいこと」を「伝わるように伝える」

これだけ。


■アサーティブな対話が始まるために ~ 「主張したいこと」がないと始まらない
この定義をちょっと分解して、違った角度から捉えてみる。

行動する主体         = 人間
行動する主体の行動内容  = 対話
やりとりされるもの      = 主体たちの「主張したいこと」
やりとりの行なわれる状態 = アサーティブな態度

アサーティブな態度とは、「対話を行なう人間」が居て「その人間の「主張したいこと」」があった上で、初めて展開されるものだ。したがって、「主張したいこと」がない場合には、アサーティブは必要ないこともある。

例)動物園にて
A「ゾウさんだね」
B「うん、ゾウさんだね」

こういう会話にアサーティブは必要ない。なぜなら、ゾウさんはゾウさんでしかないから。


例)彼氏・彼女の関係の二人
A「今度のデートは、スキーに行きたい」
B「今度のデートは、ネズミーランドに行きたい」

こういう風に思っている二人が会話をする時に、アサーティブは初めて必要になってくる。お互いに主張したいことがあり、しかもその内容が違っているからだ。お互いを尊重していないと、関係はすぐに崩れてしまう。

(注:もちろん、男性が引っ張りまわして、女性が引く。女性が引っ張りまわして、男性が引く、という関係もあるだろう。それは、アサーティブな関係ではない。アサーティブではないが、それでもお互いが幸せだと感じる関係もあるかもしれない。アサーティブな対話を繰り広げていても、幸せでない関係もあるだろう《例:「Aのとる行動の一挙手一投足で、僕は嫌な感じを覚えるんだ」「Bのそういう無神経な言葉づかい、すごい悲しい」》。つまり、アサーティブであるかないかと、お互いが幸せであるかどうかは、直接的な関係はない。恋愛って難しいすね)


アサーティブな会話をするための第一歩とは、


1:自分の言いたい事をはっきりさせる


ことだ。「自分の主張したいこと」は、いわゆる主義主張だけでなく、「感じたこと」や「気持ち」といったことも含まれる。


■「伝わるように伝える」 「主張したいこと」をシンプルに
先ほどの動物園の会話でも、第一声が

A「大きなゾウさんだね」

という事になると、話が変わってくる。「ゾウである」という事実に、「大きい」という価値判断が入ってきているからだ。ひょっとしたら、Bさんはこう思うかもしれない。

「インドでみたゾウの方が大きかった」

この時、Bさんはどういえば良いのか。

「こんなん小さいよ。インドで見たゾウのほうがずっと大きかった。世界のことをもっと良く知ってから物を言ったほうが良いね」

と、自分の知識を強調してみるか。

「うーん、そうだねえ」

と、話を濁しつつ、ちょっと反論のあることを挑戦的に匂わせるか。

「・・・」

何も言わず、Aさんの顔を立てるか。

もしくは、

「うん。大きいね。でも、僕の君への愛は、このゾウなんかよりずっと大きくて、重いのさ」

と言って、あきれられるってのはどうでしょう? 駄目ですか。そうですか。


アサーティブな会話だとこういう内容になる。

A「大きなゾウさんだね」
B「うん。大きいね。インドに行った時、もっと大きなゾウを見たよ」
A「へえ。ゾウって、もっと大きくなるんだ」

Bさんの「主張したいこと」は「インドでみたゾウの方が大きかった」という事でしかない。だから、1番目のように相手をやり込める必要はないし、2番目のようにさりげなく匂わせて相手を不安にさせる必要もない。かといって、3番目のように自分が引く必要なんて全くない。自然に、自分の「主張したいこと」を、さらっと伝えれば良いのだ。

アサーティブな会話をするための第二歩、

2:自分の主張したいことを見定め、さらっと伝える。

以上で、アサーティブ、おしまい。

■アサーティブが難しい場合 大きな感情の波、そして習慣
これだけシンプルなアサーティブではあるが、アサーティブが難しい時や、そもそもアサーティブな対話が難しい人もいる。その理由は大きく分けて二つ。

1:大きな感情の波の中で対話に臨んで、相手を尊重することが難しくなるから
これが起こりやすいのは、激怒している時。相手を徹底的にやっつけたくなってしまう。感情が揺れるのはしょうがないし、必要以上には抑える必要もない。問題は、ほんのちょっとの小波でも、アサーティブな会話ができなくなってしまう人も多いということだ。そういう人は、

2:くせ
アサーティブでない会話のくせがついてしまっているのだ。その人毎に会話のパターンというのがある。いつでも自分を卑下している会話をしている人は、そういう会話をしている時が一番しっくり来るだろうし、いつでも相手を圧倒しようと居丈高な会話をしている人は、そういう会話をしている時が一番しっくり来るだろう。

同じく、いつでもアサーティブな会話をしている人は、そこが一番しっくりくる。たとえ激昂してしまっても、感情の波が凪いでこれば、アサーティブな会話に戻ることができる。

この辺り、あいさつと同じだ。あいさつは「家で普通にあいさつしているから」「家で普通にあいさつしてないから」という理由だけで、できる/できないが決まってしまうことが多いという調査がある。人間の行動は、かなりの部分が思考ではなく、習慣で決まっている。

そのため、一般的なアサーティブのトレーニング(アサーション・トレーニングなどという)では、自分がとりがちな会話のパターンや、そのパターンがおこるシチュエーションを、選択式のテストなどをもちいて、トレーニングのはじめに把握する。

その後、トレーニングを受ける人自身が苦手なシチュエーションで、上手くアサーティブな対話ができるようにしていく。会話のくせを作り直していくわけだ。その作り直しの過程は、方法に違いはあるものの、先ほどからも紹介してきた

1:自分の言いたい事をはっきりさせる。
2:自分の主張したいことを見定め、さらっとつたえる。

という流れとなる。


■例題 アサーティブな会話
上記の会話のくせを作り直す訓練では、ロールプレイが使われることが多い。ということで、最後に、アサーティブな会話を考えるためのロールプレイ例題をだしておく。一人で考えても良いし、一緒にやってくれる人がいる場合は、実際に会話をしながら考えても良い(ここに書いてないシチュエーション詳細は、ご自由に決めてください)


1:
A「今度のデートは、スキーに行きたい。」
B「今度のデートは、ネズミーランドに行きたい」

自分の行きたいところを相手に伝えて、相手を説得しましょう。相手のことや相手の行きたい場所をおとしめない。


2:
80歳になりました。電車の中で立っているのがどうしてもつらい。目の前には、音楽を聴いているのでしょうか。イヤホンをつけた若者が眠りこけています(フリ?)。座らせてもらえるよう、頼んでみましょう。先に明示しておきます。「近頃の若いもんは」と聞こえよがしに言うのは、アサーティブではないですよ。


3:
あなたは、10人以上の部下を抱えるサラリーマンです。部下が頼んでおいた資料を持ってきました。ところが、指示していた内容の50%もできていません。部下も、出来を分かっているのでしょう。目を合わせようとはせず、すまなさそうな顔をしています。

この資料は、明日の会議の冒頭の発表で使う大事なもの。開始時刻までには丸1日以上あります。

他の部下は、それぞれの仕事を抱えては居ますが、緊急の仕事があるのは一人だけ。全員でかかれば、会議の初めにはともかく、会議途中には何とか間に合いそうです。

A:もともと、この資料を作り上げるはずだった部下を叱りつつも、今から行なわれる資料作り作業のコアメンバーとして動いて欲しいことを伝えましょう。

B:他の部下に、それぞれの仕事を切りのいいところで引き上げ、こちらの資料作りにかかるよう、要請しましょう。

C:明日の会議メンバーに、この件を伝え、会議の内容を変更、もしくは順番を変更できないかどうか、頼んでみましょう。

(榊原)



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投稿者 kksblog : 2006年01月11日 16:04


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