●コミュニケーション教育は義務教育化できるか (2005年11月16日)
某ブログを執筆するため、ネタを探しているとき、個人的に興味深い記事を見つけました。某でも紹介をしたのですが、こちらでも再度ご紹介。
この元ネタとなる記事には何が書いてあるのか。
「コミュニケーション教育は、義務教育課程に入れられるのだろうか?」
という考察、です。
■元ネタ記事の構成
【コミュニケーション教育として、SSTの可能性を考えてみる】
この記事では、SSTという、主に心理療法の一種として使われているグループワークを考慮に入れています。これを、コミュニケーションの育成ツールとして義務教育課程に入れたらどうなるだろう? という視点で、話は進んでいきます。
SSTというのは、コミュニケーションのやりとりに注力したグループワークの一種です。
まず、1対1、もしくは少人数グループで、構造化されたコミュニケーション(定型化されたやり取りが起こることが多いように作られたコミュニケーション。他のやり取りが起こる可能性が著しく低いため、どちらに転がるかがわからないタイプのコミュニケーションに比べ、安全です)を取り合ってみる。
その後、お互いに「ここ、こうしたら伝わりやすいんちゃうかな」「ここステキ」とか言い合いながら、お互いのコミュニケーション能力を上げていこうという風に考えます。
そのとき、この指摘自体も構造化されています。どういう意味か。多くの場合、表に基づいて指摘がなされるのです。よって、指摘する側も、指摘する側も、どういう指摘が行われていくのか、ある程度予想がつくのです。だから、少し、安心。
◇
こうしたSSTを、学校教育の場に入れることに対して、元ネタ記事を書いた方は、少し否定的です。その否定を導く論旨は2点。1:SSTを行うための、専門的教育を受けたカウンセラーは、学校にはさほど多くない。その予算はどうするのか?
2:時間が捻出できない。授業時間がギリギリの今、いったいどの時間帯に「コミュニケーション教育」をねじ込ませるのか?
ということで、この1と2とを、同時にクリアする(ヒントになるかもしれない)方法を、ここでご紹介しておこうと思います。
■授業時間内にSSTの考え方を取り入れる
その方法は、シンプルで、一般科目の先生が、通常時間内にSSTの考え方を導入するというものです。
どう行うか。
SSTとは、簡単に言えば「定型的なコミュニケーションの実践と、そのフィードバック」とから構成されているグループワークです。
したがって、なんらかの定型的なコミュニケーションが起こる状態さえ作り出せれば、あとはそのコミュニケーションに、適切なフィードバック(「危険でないフィードバック」と言い換えてもよい。要するに、傷つく可能性の低いフィードバック)を行えばよい、ということになります。
したがって、一般科目などで行う場合は、たとえば、こういった流れになります。
1:チーム単位で、ある程度の強度を持った課題を与え、調べ学習を行わせる。
このときの注意点。それぞれのメンバーが異なった調査を行うことになるよう、「調べ」を分担する過程をコントロールしておくのが肝心。やる子、やらない子などが出てこないようにする。簡単に言えば、
「誰かがサボったら、課題解決できません」
という状態に仕向ける。
2:チーム内で、課題解決を行うためのミーティングを行う。
調べたものの発表を、グループ内で行わせ、課題解決の方法を一緒に考えさせる。課題解決を行うための情報のパーツは、個々人しか持っていない。したがって、誰しもが発表を行う必要がでてくる。KJ法やマインドマップなど、考えるためのツールを、前もって先渡ししておくのもひとつの手。
また、ミーティングは、できれば複数回繰り返したい(調べ→ミーティング→調べ→ミーティング・・・(以下略))。複数回に分けておけば、「ミーティングのそれぞれの回で、「話し合いのための課題」を1つずつ分けて入れる」ことができる。
一斉にミーティングを行う中で「発表してる事柄が、他の人に伝わるようにするにはどうしたらよいのか?」「みんなの意見を、できるだけみんなが納得しながらまとめていくには、どうしたらよいのか?」ということを「話し合いのための課題」を通じて実感していってもらう。
先生は、各グループを見回りつつ、うまく行ってなさそうなグループに介入する。内容的にではなく、その話し合いがどこでストップしているのかということに注目して、アドバイスを行う。
3:ミーティングの範囲を広げていく
ミーティングの回数をある程度重ねることができるのであれば、各グループに与えた課題を解決するために、他のグループの情報が必要なように、課題設定をしておくとより好ましい。こうすると、グループの中で話し合いに加え、他のグループとの折衝を行う必要が出てくる。
相手の情報を教えてもらうということは、相手の話し合い・まとめの時間を削ることでもある。グループとしての折衝依頼を行うことになるだろう。
話し合いの場が、グループ内から、グループ外へと広がっていく。
また、最終的な終着点に、「学外の人への発表」を念頭に置くのも悪くない。その場合は「大練習会」などと名づけて、学内での発表会を企画することもできるだろう。
これによって、「グループ内→全体→学外の人」と、発表の発展的段階ループを長期的に組み込んでいくことができる。
以上のループだと、生徒間でのフィードバックが弱くなる可能性が高いです。「よかったチェック:声の大きさ。視線。姿勢」というような、定型的チェックシート。「すっごいよかった所」といった、フリーワードチェックシートなどを使いながら、正のフィードバックが起こる仕掛けをはさんでおくのも良いでしょう。(榊原)
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投稿者 kksblog : 2005年11月16日 13:22
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