教育旅行・体験学習特集

【北部九州教育旅行現地視察会】教科と連動した学習素材を体感

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北九州マップ
九州教育旅行の情報=kyoiku.welcomekyushu.jp

九州新幹線の全線開通以降、交通アクセスも格段に向上し、教育旅行先として着実に実績を積み重ねている九州。特に近畿地区公立中学校修学旅行委員会の平成28年度調査によると、北部九州へ旅行先の変更を検討している学校は55校にのぼる。平和・歴史学習や自然体験などにおいて次々に新しい教育素材を提供する北部九州では、さらなる伸びが期待できそうだ。(一社)九州観光推進機構は、関西・中国方面の教員を対象に「九州教育旅行現地視察会」を実施。参加教員らは大分・福岡・佐賀・長崎の4県を視察し、個性溢れる教育旅行素材を体感した。

 



大分県 日田の町並みを散策 教育の原点に触れる

大分県の西側に位置する日田市は、博多駅から車で約1時間半、福岡空港から約1時間の距離。

【咸宜園教育研究センター】

大分1
塾の建物として使用されていた
「秋風庵」
大分2
風情ある街並みの豆田町

幕府直轄地「天領」として九州の政治・経済の中心地だった日田市。この地に江戸時代後期、儒学者で詩人の廣瀬淡窓が私塾「咸宜園」を開いた。「咸宜(かんぎ)」とは、「咸く宜し(ことごとくよろし)」という意味。入門時に学歴・年齢・身分を問わず、すべての門下生を平等に教育した。成績評価の方法としては、一人ひとりの学力を客観的に判断する「月旦評」を用いたという。

門下生はおよそ5000名。卒業後は郷里で私塾を開き、庶民の教育に尽力した者も多く、淡窓の教育は全国へと広がった。大村益次郎、高野長英、清浦奎吾、長三洲など名だたる著名人が「咸宜園」から巣立っている。

平成27年度には日本遺産に認定された。現在は「咸宜園跡」として、東塾敷地内の秋風庵と書斎の遠思楼が公開されている。

センターでは「咸宜園」について楽しく学べる映像も用意。タブレットを使って門下生の情報を検索できるシステムも整っている。「咸宜園入門ぼっくす」という教材も18種類。センターは「咸宜園跡」に隣接しており、多人数の場合は建物跡とセンター内を交代で見学すればスムーズに移動できる。

【豆田町散策】

咸宜園からほど近い豆田町には、淡窓旧宅や天領資料館などがあり、風情ある街並みを散策できる。平成16年には、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定された。

さらに日本型グリーンツーリズム発祥の地である大分県には、県下を5つの特色あるブロックに分けた「農村民泊」の体制があり、教育旅行受け入れの準備が整っている。


福岡県 戦争を今に伝える 命の尊さを実感

【大刀洗平和記念館】

福岡1
階段上から零戦のコックピットを見学できる(上)
兵士の残した直筆の遺書や写真を展示(下)
福岡2

筑前町にある大刀洗平和記念館には、福岡から九州自動車道を経由し、約1時間で到着。

戦前東洋一と謳われた旧陸軍大刀洗飛行場と、飛行学校などの関連施設があった筑前町田。軍都として栄えた町は、戦中の大空襲により多くの尊い命を失った。

館内には当時を語る資料を展示し、飛行場の役割や、歴史を伝えている。兵士たちが残した家族への遺書、「追憶の部屋」で公開されている犠牲者の顔写真から、数多くの尊い命が奪われた戦争の悲惨さが静かに伝わってくる。

「語りの部屋」では、空襲で立石国民学校の児童31名が命を落とした「頓田の森の悲劇」を伝える映像を上映し、朗読で戦争経験者の手記などを伝えている。心を揺さぶられる体験に、事後学習を加えることで、より深く厚みのある平和学習ができるだろう。

アジアの玄関口としての役割も持つ福岡県は、平和学習のほか、アジア交流の歴史、近代産業の隆盛から学ぶ環境学習など多彩な学習テーマがあり、それに沿った修学旅行モデルコースも豊富に用意されている。


佐賀県 泥だらけの干潟体験 偉人の魅力を再発見

【有明海ガタリンピック】

佐賀
日本の干潟の約4割を占める広大な干潟が広がる有明海

「道の駅鹿島」が開催する、有明海の広大な干潟を利用した「鹿島ガタリンピック」は、全国から参加者が集まる人気イベント。干潟上をムツゴロウを釣るための伝統漁具で滑るガタスキー競争や、潟上綱引き、潟フライ競争の3種類の種目を体験するミニガタリンピックは教育旅行向けの企画として、実施されている。

チーム競技やクラス対抗の形でも実施でき、どれも全身泥だらけで楽しめる内容になっている。競技の前には、スタッフからガタスキーの乗り方やルールについて丁寧に説明されるため、干潟を初めて体験する生徒も安心して楽しむことができる。

競技終了後には上位入賞者に鹿島市からメダルや賞状が授与される。

干潟展望館には有明海の珍しい生物の展示を行うミニ水族館もあり、干潟に住む生物について学べる。

【佐賀の八賢人おもてなし隊】

ホテル龍登園(佐賀市)では、魅力発掘プロデュース協会による佐賀の三賢人の物語が上演。

幕末・維新の日本に影響を与えた佐賀県出身の大隈重信、江藤新平などの八賢人を後世に伝えようと、「幕末・維新 佐賀の八賢人おもてなし隊」は、各地で公演している。

佐賀県には、弥生時代の遺跡・吉野ヶ里歴史公園や伊万里・有田焼など歴史や伝統文化を学べる見学施設が多い。

昨年からは有田焼の窯元で修学旅行生の受け入れを始めた。唐津市・玄海町では農村・漁村地域の体験型民泊を行い、受け入れ先の家庭との交流や体験活動の場も提供している。


長崎県 イルカが泳ぐ南島原 圧巻の歴史的建造物

【南島原市イルカウォッチング】

長崎1
イルカの群れを間近で見学
自然の素晴らしさを体感した
長崎2
イチゴ農家では収穫や箱づめを体験できる
長さk2
巨大な風力発電装置やタービンは圧巻
産業革命の時代を肌で感じられる

南島原市は長崎県の南部、島原半島の南東部に位置する温暖な地域だ。

イルカウォッチングへは口之津港から出港。口之津には約400頭のバンドウイルカが生息しており、イルカとの遭遇率は99%。生息域に到着後、すぐに群れを発見し、教員らは野生のイルカとの出会いに心を躍らせていた。体験の所要時間は1時間~2時間半程度で、運航船の定員は12名~72名まで。

雨天の場合も、波が高くなければ出港できるため、教育旅行の行程に組み込みやすい。

【有馬キリシタン遺産記念館】

キリスト教の繁栄と弾圧の歴史を語る原城跡・日野江城跡を後世に伝えるため、平成26年にオープン。館内では、250年間のキリシタン潜伏を支えた背景や、弾圧の経緯、島原・天草一揆について分かりやすく展示している。

原城跡からの出土品や発掘現場のレプリカからは、キリシタン弾圧の歴史を実感できる。

原城跡・日野江城跡と合わせて見学すれば、より知識を深められる。

【民泊受け入れ家庭視察】

近年長崎県で民泊を実施する学校が増えている。

海と山を併せ持つ南島原市も、基幹産業である農林漁業を活かした民泊を実施している。

平成23年から修学旅行生の受け入れを開始し、来年度には45校が実施予定だ。1日の受け入れ可能数は350名。
体験内容は受け入れ家庭によって様々だが、家業を手伝い、交流をすることで、最後には別れを惜しむほど深い絆が生まれている。

視察ではイチゴ農家を訪問。居間には子供たちからの御礼の色紙が飾られ、楽しい交流が続いている様子が伺えた。

郷土料理を一緒に作るなど、地域に根付いた文化・生活も体験できるよう配慮されていた。

【三菱重工長崎造船所史料館】

長崎造船所が近代化に果たした役割を後世に残そうと開設されたのが、三菱重工長崎造船所史料館。ユネスコ世界遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成資産の一つにもなっている。

史料館の建物は、1898年に三菱合資会社三菱造船所の鋳物工場に併設された「木型場」で、長崎造船所に現存する最古の建造物。

館内は「岩崎家」「三菱創業期」「戦後の造船」など13のコーナーに分かれ、時代の流れに沿った展示がされている。

【新・観光丸長崎港巡り】

「新・観光丸」は、1855年オランダ国王から徳川幕府に贈られた日本初の木造蒸気船を復元したもの。漆黒の船体に高くそびえる3本のマストが印象的な船だ。

教員ら一行は、大波止ターミナルから乗船。

クルーズでは、「明治日本の産業革命遺産」の構成資産を見学できる。明治42年に導入されて以来、現在も稼動し続けているジャイアント・カンチレバークレーンや、長崎造船所の迎賓館として、外交面を支えた木造洋館の占勝閣などだ。

教育旅行時には、ガイドによる船上での解説も行われており、五感で体感できるプログラムが実現できる。3月から11月までの間、1日2便(12:00、16:00出航)が運航している。

ターミナル近くには、班別自主研修時の食事場所として利用可能な「出島ワーフ」もある。出島やグラバー園などの歴史素材からのアクセスも良く、班別移動の拠点としての利用に便利だ。

他にも長崎県では、出島や軍艦島上陸クルーズなどの歴史的要素だけでなく、伝統行事であるペーロン競漕などアクティブな体験メニューも充実している。

 

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【2017年2月20日号】

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