台湾の修学旅行に多くの人が関心を寄せる |
(公財)全国修学旅行研究協会(岩P正司理事長)は、10月20日、親日的で修学旅行の行き先として安全な台湾への理解を深めるため「台湾修学旅行セミナー」を都内で開催。講演や事例発表などが行われ、海外への修学旅行に関心を寄せる多くの教育関係者が参加した。
偉人の功績で 日本は好印象 -―八田與一研究者 古川勝三氏
古川勝三氏 |
日本統治下の台湾で、総督府技師として大規模な灌漑工事を行い、今でも現地の人から愛され続ける「八田與一」。その研究の第一人者である古川勝三氏が「歴史から学ぶ日台の絆」を演題に講演を行った。
「現地の人から愛されているのに、台湾の日本人学校の生徒は、誰も八田與一のことを知りませんでした。日本人学校に限らず、日本人が海外で行った悪いことは教えても、善行は教えないという教育が行われています。そこで、八田氏について知ってもらいたいという思いから研究を進めました」。
今年2月、台湾で行った調査では、「世界で一番好きな国」として日本が44%で1位となっている。親日的な理由として、台湾が地震や台風などの災害に見舞われた際、全面的に日本が支援したことも大きいが、戦前の日本統治下時代の業績も関係している。八田氏が大灌漑計画を進めたことで、不毛の地だった嘉南平原は台湾最大の穀物地帯に生まれ変わった。
修学旅行において、日本人が海外で行った功績に触れるには、八田氏の活動は格好の素材といえる。平成23年には「八田與一記念公園」が完成し、烏山頭ダムでは統治時代の業績を学ぶことができ、近年は八田氏に関連が深い台南を訪れる学校も増えている。
事前学習を重ね 理解を深める―川口市立川口高校 木田一彦校長
木田一彦校長 |
台湾修学旅行の事例を発表したのは、埼玉県川口市立川口高等学校の木田一彦校長。木田校長は前任校である埼玉県立志木高校で、平成21年度から3年連続で台湾修学旅行を実施し、今年4月から赴任した川口市立川口高校でも、10月28日から31日まで台湾への修学旅行を行った。
平成21年度の志木高校が、埼玉県では県立高校初の海外修学旅行であったが、今年度は川口高校を皮切りに5校が台湾修学旅行を予定しており、約1400名の生徒が修学旅行で台湾を訪れるまでになった。
「現地での理解を深めるには事前学習が重要なので、志木高校では観光や地理に関する事前学習を13回、歴史に関するものを4回、危機管理について2回行いました。また、単なる観光で終わらないように、台湾の学校との交流をプログラムに取り入れています」
また、木田校長は参加する生徒と教職員の人数や氏名、性別、住所などを記載したルーミングリストを作成するように心がけている。万が一、事故が起きた場合、身元確認にルーミングリストが役に立つという。
国際的な視野が広がる 台湾の学校との交流
10月28日から31日まで行われた川口高校の台湾修学旅行には2年生約300名が参加。中国や韓国との関係悪化から保護者の不安を払拭するため、台湾観光協会東京事務所の江所長による台湾は安全というメッセージを保護者に発信した。
今回の修学旅行でメインとなったのが、台湾の板橋高級中學との学校交流。お互いの国の紹介だけでなく、現地の授業を受ける機会が設けられた。最初は戸惑っていた生徒も次第にクラスに溶け込み、真の国際交流が図れたという。
「交流をきっかけに視野を広げ、世界の人々と交流を深め、国際社会で貢献できる人になってほしい」と木田校長は語る。
【2012年11月19日号】