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教育ICT

OECD教育2030を公表 “生き延びる力”とは

2018年3月5日

21世紀型スキル後に必要な力を規定

OECDは2月16日、「OECD LearningFramework2030」を発表した。2月27日、上松恵理子氏(武蔵野学院大学)と山田肇氏(ICPF理事長)は、都内で開催した「ICPF情報通信政策フォーラム」でその内容を紹介した。


OECD LearningFramework2030(以下、OECD教育2030)は、国連2030グローバル4・7 二乗 目標(地球レベルの視点で持続可能な開発を可能にする)の達成を目指すものだ。

生き延びる力は学習で獲得できる

2010年、ATC21Sにより21世紀型スキルが定義された。その後、一層グローバル化は進み、AIやIoTなど科学技術の進展による社会変革、資源枯渇の問題、サイバーセキュリティやプライバシー保護の問題、生活水準の不平等、日本においては顕著な人口減少など、多くの困難で新たな課題に対応するために必要な能力や教育手法を整理。OECD教育2030として「生き延びる力」の育成が必要であるとし、学び手や教え手のあるべき姿を示した。「生き延びる力」は「反省、予測、行動」というプロセスの中で「学習できる力」であるとしている。

OECD教育2030では「生き延びる力」を次の3つに分類している。

  • 新しい価値を創造する力(Creating new value)~新しい製品やサービス、新しい社会モデルを他者と協力して産み出す力。適応性、創造性、好奇心、他者をオープンに受け入れる心
  • 緊張とジレンマの調整力(Reconciling tensions and dilemmas)~平等と自由、自立性と地域利益、変革と継続性など様々な競合する需要間のバランスをとる力
  • 責任をとる力(Taking responsibility)~自らの行動の将来の結末を考慮する力、自分の仕事の成果について責任をもって説明できる力、自ら評価できる力。自己効力感、責任感、問題解決能力、適応能力など。

すべての人が学習者に

「生き延びる力」とは、世の中を変える力を持ち、周囲にプラスの影響を与え、他の人の意図や行動や気持ちを理解し短期的または長期的な影響を予測できる力である。

これを育むためには、知識、技能、態度を基盤としながら、メタ認知能力や共感力、自己効力感、情報技術活用能力ほかの様々なコンピテンシーを総動員して課題解決に取り組むこと。

学習者を取り巻く教員、保護者、コミュニティ、仲間もまた「学び続ける存在」であることを求めている。

カリキュラムを再設計する

なお「OECD教育2030」をカリキュラムに盛り込むため、OECD関係者は設計原則も作成している。

〇コンセプト

  • 学生に刺激を与え、事前知識、技能、態度、価値観が認識できるようにデザインされたカリキュラム
  • 挑戦的で、深い考えを必要とする課題
  • 基本的なものから高度なものへ段階的かつ年齢的に積み重ねることができる
  • 新しい学びを評価できる新しい評価方法の開発
  • 知識、スキル、態度、価値観を1つの文脈で学び、転用できる
  • 十分な事前情報のもと、様々な課題やプロジェクトを選択できる

〇プロセスデザイン

  • 専門知識や専門スキルを活用できるような環境の保証
  • 協調的な学習により学習体験を現実の世界に結び付け、目的意識を持たせること
  • 課題が現実の生活や他の課題と関連していることを発見する機会を与えること
  • 更新、調整し続けることができるカリキュラム

OECDでは以上のような学習を行うためのベストプラクティスやアイデアを収集している。

以上の報告について、多くの教育関係者は「初めて聞いた気がしない」と感じるかもしれない。

これらの理念は、新学習指導要領にその多くが盛り込まれている。21ATCSが「21世紀型スキル」を提唱して数年後、文部科学省では「21世紀型学力」の育成を目指し、新学習指導要領に向けて多方面に検討してきた。「21世紀型学力」は「OECD教育2030」と同様の概念を既に盛り込みながら新学習指導要領としてまとめられている。
公開資料=www.oecd.org/education/2030

■21世紀型スキル=次の4領域10スキル

  •  思考法(Ways of Thinking(1)創造力とイノベーション (2)批判的思考、問題解決、意思決定 (3)学びの学習、メタ認知(認知プロセスに関する知識)
  • 仕事の方法(Ways of Working)(4)情報リテラシー(5)情報通信技術に関するリテラシー(ICTリテラシー)
  • 仕事のツール(Tools for Working)(6)コミュニケーション(7)コラボレーション(チームワーク)
  • 社会生活(Skills for Living in the World)(8)地域と国際社会での市民性(9)人生とキャリア設計(10)個人と社会における責任(文化的差異の認識および受容能力含)

■キー・コンピテンシー

  • 言語、シンボル、テクストを活用する能力
  • 知識や情報を活用する能力
  • テクノロジーを活用する能力
  • 他人と円滑に人間関係を構築する能力
  • 利害の対立を御し、解決する能力
  • 大局的に行動する能力
  • 人生設計や個人の計画を作り実行する能力
  • 権利、利害、責任、限界、ニーズを表明する能力(OECD『The Definition and Selection of KEY COMPETENCIES』)

教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年3月5日号掲載

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