2月2日、福岡市のパピヨン24ガスホールで第46回教育委員会対象セミナーが開催された。また2月15日、名古屋市の名古屋国際センターで第47回教育委員会対象セミナーが開催された。各講演の内容を紹介する。次回の第48回教育委員会対象セミナーは、3月24日に金沢市の金沢商工会議所で開催される。
春日井市では平成30年度から、各校40台から200台の児童生徒用タブレット端末の導入が決まっており、平成34年までに全小中学校への配備を目指す。平成25年度からは「かすがいスタンダード」が市内で推進されている。この元となったものが、春日井市立出川小学校の取組だ。同校の水谷年孝校長がその経緯を報告した。
市のICTの取組みは約20年前、校務の情報化から始まった。市教育委員会と市内小中学校52校を結ぶセンター型の教育ネットワーク「ハルネット」が平成11年10月に立ち上がった。当時は校務支援システムという言葉すらない時代。「ハルネット」で学校がつながり、情報を共有することで学校間の連携が強固になった。
校務支援システムの構築は、ハルネット導入初年度から。スムーズな活用のカギは「何のために活用するか」「使わざるを得ない仕組みづくり」「活用を支える組織」の3点だ。校務の情報化により、市教委の連絡や校内の連絡などは連絡掲示板で情報を共有。児童の出欠情報や在籍管理など各種データを一元管理し、業務の見直しを図ったことで子供と向き合う時間は確実に増えた。教員が「ICTは便利なもの」と認識することにつながった点は大きい。
普通教室のICT化は平成18年度から段階的に行った。
第1のステップは教員が使う「拡大提示環境」の常設だ。市内全学校の普通教室に、ノートPC、プロジェクター、実物投影機などを整備。デジタル教科書も指導者用を全教科導入。大型スクリーンも導入し、教材を大きく提示できる環境が教室に整った。
現在、出川小学校では低学年の教室に2台の大型スクリーンを並べ、1台のスクリーンに教員の手元を実物投影機で大きく映し出し、もう1台にはデジタル教科書の画面を提示するなど各教員が工夫して使っている。
教員研修も工夫。授業のどの場面でICTを活用するかに重点を置き、模擬授業などを研修に取り入れている。
教員が授業でICTを活用することに慣れたところで、次のステップとして児童生徒用のタブレット端末を導入。無線LANや授業支援システムも整備した。
児童生徒がICT機器を使いこなし、情報活用能力を育む基盤として、出川小学校では「学習規律」を徹底。落ち着いて授業を受けられる学校環境とした。
ローマ字を習得した3年生の時点で、キーボード入力練習を開始している。
ICT活用による成果は「児童が習得したことを活用できる授業が日常的に実践されている」こと。タブレット端末を導入したことで、児童が必要な情報を読み取ることや、課題解決のために自分の考えを試行錯誤できるようになり、自分の考えを書き込み比較・共有する授業を実現。校内研究では県外からも他校の教務主任や拠点校指導員が参加し、授業でのICTの活用法などを学んでいる。今では出川小の取組を参考に、各校の実情に合わせた取組が行われている。
【講師】愛知県春日井市立出川小学校・水谷年孝校長
【第47回教育委員会対象セミナー・名古屋:2018年2月15日】
教育家庭新聞 教育マルチメディア号 2018年3月5日号掲載