アドビシステムズ 教育市場開発部 北川 久一郎氏 |
小・中学校で「総合的な学習の時間」がスタートしてから早3年、これまでにない授業運営に迫られ、教える側からは戸惑いの声も聞かれる。教育機関向けにフォトショップ・エレメンツやプレミア・エレメンツなどを揃えるアドビシステムズ株式会社では、「21世紀リテラシー」をキャッチフレーズに、これからの時代に必要とされる能力を現場の先生と共に考え、授業デザインをサポートしている。
「社是に『人々のより良いコミュニケーションを支援する』という文言があるように、弊社は一貫してコミュニケーションツールを提供してきた。『21世紀リテラシー』という言葉の根底には画像・映像・音声を含めた、コミュニケーションのためのリテラシーをどのように育んでいくか、という想いがある」そう語るのは教育市場開発部部長、北川久一郎氏。
文教市場への同社の姿勢は、教育専用のソフトを作っていないところからも伺える。
「教育用に機能を絞り込むと、ツールにあることでしか授業を行えない。また、子ども達が社会に出てからも役立つ力を育むには、世の中で使われているのと同じものを授業で扱うのが望ましい。ただ市販のものを単に学校向け価格で提供しただけでは、どう使ってよいのか迷われてしまうのも事実」。そのため同社ではツールを提供するだけでなく、環境面でのサポートも展開。02年から事務局を引き受けているD−projectはその取り組みの一つだ。先生がITに振り回されずに子どもの学びを見つめ、授業をデザインする姿を提案するという同プロジェクト。中川一史助教授(金沢大学)を会長に、ITを効果的に活用した授業の開発と、それら授業モデルを広く伝える場を提供している。
「DプロジェクトのDは『デジタルツールを使ってどのような授業をデザインしますか』との意図から、デジタルとデザインの頭文字をとっている。紙でやるべきところとデジタルツールでやるべきところを、必然性をもってうまく使い分けていくことが本プロジェクトの中心テーマ」。
同プロジェクトのメーリングリストには現在300名を超える教員が登録しており、ワークショップや公開研究会、10を超えるプロジェクトなど、ネット上での情報提供も含め現場の先生の貴重なコミュニティになっている。登録は先生個人の資格で行うことが可能。
「今後も子ども達がコミュニケーション能力を高めるサポートをしながら、『どのような授業を行なえば、どういう力が児童につくのか』を明確にして先生方の授業作りをサポートしていきたい」と語る北川氏。
同プロジェクトの実践は「小学生が作ったホンモノパンフ」(価格、1470円)としても紹介されている。
【2005年7月9日号】