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デジタルコンテンツ活用で
効果的な授業を実現
「国語デジタル教科書」で読みを深める

 小学校へのデジタルコンテンツ導入が進んでいる。「教育課程及び指導の改善等に関する調査研究事業」に取り組む横浜市では、デジタル教材を活用した指導方法の工夫・改善について実践研究を行っている。実践校は横浜市立平沼小学校(齋藤親夫学校長)と東中田小学校(敦岡幸夫学校長)。同校では、光村「国語デジタル教科書」及び電子情報ボードの効果的な活用について検証中だ。平沼小学校での授業を取材した。


集中力を増し興味関心持つ
  「読解力」育成に効果的


授業に集中しやすい教科書を投影することで
教科書を投影することで
授業に集中しやすい
 OECDの調査による「読解力の低下」が話題になっているが、国語科の学習においてデジタル機器やコンテンツの活用による学習活動はどのような効果があるのだろうか。平沼小学校では、平成14年度より市教委から研究指定を受け「豊かな言語活動ではぐくむ国語力の育成」をテーマに研究を行っている。同校では既に1〜2学年に「国語デジタル教科書」を導入、さらに昨年11月より4〜6学年に導入を開始した。

 取材当日は6年1組にて、命の大切さが重要なモチーフとなっている物語文「海の命」の授業が行われた。授業者は丹羽正昇先生。プロジェクタを活用して黒板に直接投影するタイプの電子情報ボードを用い、「国語デジタル教科書」を拡大提示。今日の課題を板書した後、デジタル教科書の「教科書ビュー」で、教科書本文にラインを入れながら前時までに学習した物語の流れを振り返る。

 「海の命」のクライマックスでは、海底で主人公の太一が父の命を奪った巨大なクエと対峙する。もりを突き出しても身動きせず太一を見つめるクエ。自分に殺されたがっているのだと思う太一。「こんな感情になったのは初めてだ。」という文章を取り上げ、各自が「こんな感情」とはどのような感情かをノートにまとめた後、それぞれの意見について発表。その際、デジタル教科書を使うことで、それぞれの意見の根拠となった部分を、前で教科書を指し示しながら説明することができるようになった。

 授業後、丹羽先生は次の授業で振り返りに活用できるよう、授業中デジタル教科書に引いたアンダーラインなどの情報をそのままコンピュータに保存した。

授業前のセッティングも児童らで
  休み時間も活用・授業も前向きに


 丹羽先生は「命がどう大切なのか、なぜ大切なのか。個人読みを拡げるためにも、集団での読み取りは重要です。デジタル教科書とプロジェクタを使って黒板に本文を投影しましたが、児童らが前に出て、どの部分の記述が自分の意見の根拠なのかを皆に説明する学習方法は非常に効果的ですし、児童からの評判も良いですね」と言う。デジタル教科書導入後、日常的にクラスで自由に使わせているが、「児童らは『筆順アニメーション』でクイズを出し合ったり、教科書本文に伏せ字をして当てるゲームをしたりして休み時間中楽しんでいました。授業中、本文のどこの部分なのか指示するときは教科書ビューを使い、言葉にこだわった指導のときは本文を拡大表示して書き込みましたが、この使い分けは、彼らの意見を反映したものです。また、文字の大きさやラインの太さや色も、最も見やすいものを子どもたちと検証しました」と活用の工夫を語る。
児童が教科書に線を引きながら説明
児童が教科書に
線を引きながら説明

 投影型の電子情報ボードを使っているため、デジタル教科書の活用にはプロジェクタのセッティングが必要だが、丹羽学級では授業前に子どもたちがセッティングを行う。「自分たちで準備をして授業に入るので、以前より主体的に国語の授業に集中するようになりました。日常的な使用が大切ですね」と、手間と考えがちなセッティングも教育的配慮で効果を上げている。

 授業を参観した横浜市教委の嶋田指導主事は「行く行くは機器を活用しながら確実な言葉の力をつけ、意欲関心の喚起及び継続できる指導方法を確立していきたい」と述べる。これまで模造紙に書いた教材文を準備していた時間が、デジタル教科書によって省略でき、教材研究に費やす時間も増えたという声もあるという。

 東中田小学校でも6年生で、漢字の書き取りや助詞・助動詞、敬語の使い分けなど言語活動で「国語デジタル教科書」を活用したところ、児童の9割以上が「楽しかった」「よく理解できた」という感想を持ち、ふだん発表をしない子も意見を述べるようになったという。デジタル教科書は、日々の授業において使いこなしやすく、かつ効果が目に見えて表れるという点で、導入校の教員からの評価は高いようだ。

【2006年3月4日号】


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