デジタルコンテンツを授業に活用する学校が増えている。中でも教科書会社が制作したコンテンツは・すぐに使えて便利・・使いやすい・と、現場教員の評判が高い。限られた学校予算の中、ハード整備を先行する傾向があるが、「使いやすい」「使いたい」コンテンツに先行投資することは、教員のITリテラシーの底上げに確実に貢献する。
■学校用CMS導入でHPが活性化
「Open School CMS」 内田洋行
■デジタル教科書を全学年に導入−東京都下目黒小
「光村国語デジタル教科書」 光村図書
■小学校で英語活動 PCソフトが学級担任を支援
「Say Hello!」「JuniorHorizon Hi! English デジタル掛図」 東京書籍
■「わかりやすい画像を子どもに見せたい」−神奈川県関東学院小
「たのしい理科『IT活用編』」 大日本図書
堀田龍也氏 |
■雑務生まぬ
“仕組み”実現
学校WEBページには、学校の基本的な方針と達成度の公開という使命があります。メイン・ターゲットである保護者の多くは30代から40代。職場や家庭からイ運用することができるというもの。内田洋行と静岡大学の学校用CMSに関する共同研究で開発された。「CMS」は何を目的に開発され、どのようンターネットに接続することは、日常的に行っており、学校WEBページに子どもたちの学習活動の様子や成果が掲載されていれば、ほぼリアルタイムにアクセス、知ることが可能な環境にあります。
文部科学省(H16年3月末日)の調査によると、WEBページを持つ学校の割合は、小学校64・1%、中学校63・5%、高等学校92・6%となっています。高校は別として、小中学校で約3分の1以上の学校がWEBページを持っておらず、保護者の要請を満たしているとは言えない状況です。
これまで、学校WEBページは、教員の中で一部のスキルの高い人、意欲のある担当者に任されることが多い状況にありました。しかし、WEBページを充実させればさせるほど、その管理・更新の負担は大きく、かつ転勤などによりその作業が引き継ぎ困難であるといった問題点が大きくなってきました。また、デザイン的に見やすいものにすることも、担当者にとっては大きな負担となっていました。
この事態を改善する方法を、「CMS」を「学校用に」開発することで見出せないか、それが今回の共同研究の主旨となりました。
学校WEBページ活性化のためには、情報発信からWEBページ掲載までの流れをよどみないものにし、そこに携わる教員の負荷の軽減が望まれます。発信すべき情報を、特別なスキルがなくとも簡単に発信できるインタフェイスを用意し、作成・更新が短時間で完結でき、かつ雑務を生まない「仕組み」が必要です。
「CMS」は、学校における校内・校外向け情報のテンプレートを持ち、学校ならではの情報の決済方式を把握した上で設計されています。
例えば、学年や学級ごとに新しいコンテンツを増やすと、ナビゲーションやリンクが自動的に生成されます。複数の担当者が同時に更新可能なため、担当者に負担が集中せず、情報が新しいうちに更新が可能です。また、デザインやアクセシビリティ、ユーザビリティにも対応したページが、特別な知識を必要とせずとも作成できるようになっています。
学校用CMS「Open School CMS」は、学校WEBページの活性化の大きな助けとなる可能性を持っていると考えています。(堀田 龍也・静岡大学情報学部情報社会学科・助教授・メディア教育開発センター・客員助教授・東京大学大学院ベネッセ先端教育技術学講座・客員助教授)
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デザインも統一感あるものに |
「CMS」では、インターネットブラウザを使った簡単な操作で、複数の担当者によるページの作成が可能だ。学校専用機能として、学校現場に適したイラスト集やデジタルカメラ写真を簡単にホームページに取り込める仕組みや、保護者など特定の利用者だけに公開が可能。学校内に設置されたパソコンからだけしかページ更新できないなど、情報セキュリティ機能が強化されている。
新しいコンテンツページを増やすと、ナビゲーションやリンクが自動的に生成されるので、管理の手間が大幅に軽減される。また、作成する側だけでなく、それを見る側にとっても利用しやすいものとなっている。学校という公共機関のWebページを作成するソフトということで、ユーザビリティとアクセシビリティに配慮した点も大きな特徴。また、教育センターのサーバーに「Open SchoolCMS」を導入し、その地域の全ての学校で活用するという場合、教育委員会の一括管理機能を使うことによって、各学校のページの更新状況が瞬時に把握できるほか、学校の代わりに教育委員会がページの承認を行える。
「Open SchoolCMS」の元になった「assetnow」は、すでに多くの学校や教育委員会に導入されており、兵庫県三木市では市内における幼稚園・小学校・中学校および教育センターの全てのサイトが「assetnow」で構築されている。編集作業が簡単になったことで更新頻度が上がり、それに合わせて保護者からのアクセス数も上がったという。
●問合せ
内田洋行 電話0120−077−266 E−mail:info@uchida.co.jp
集中力が増す・発表が増える 【光村図書】
■苦手意識を
上回る効果
「光村国語デジタル教科書」は、同校では普通教室やコンピュータ教室で、プロジェクタに投影しつつペンタブレットで操作しながら活用されている。
5年1組で行われたのは、物語文「新しい友達」の授業。本時の課題は「二人が仲直りするまでの気持ちの変化を追っていく」こと。「まりちゃんの気持ち」が表れている箇所に青いラインを、「ひろの気持ち」が表れている箇所に赤いラインを引いた子どもらは、「どこに線を引いたのか」を次々に発表、ペンタブレットを使って、自分の引いたラインをデジタル教科書上に次々と記載していく。一通り出尽くしたところで、線が引かれた箇所を教師と共にひとつひとつ検証していく。最後に、挿絵を拡大、二人の表情の変化を確認した。
ペンタブレットに書き込み プロジェクタで投影 |
■すぐに使えて
便利です
「読み取りのために教科書に線を引く」活動は国語の授業の中で頻繁に行われる活動だ。言葉で細かく指示を出さなくても「クラスの他の人がどこに線を引いたのか」が投影された教科書画面で、すぐに分かる。また、振り返りの際も、一目で説明したい箇所を提示することができる。
児童からは「大きいスクリーンに映っているので、今、何ページのどこを説明されているのかすぐに分かるようになりました」「教科書を読み込んで線を引くのが楽しくなりました」「挿絵を拡大することで、教科書を見ただけでは気づかなかった部分に気づくことができます」といった感想が聞かれた。
挿し絵を“拡大”して 表情の変化を読み取る |
授業者の寺尾千英先生は「同じ教科書なのに、前で大きくして見せることが出来るだけで、集中力がぐんと増しますね。低学年では国語の時間が多いので、コンピュータ操作が苦手、と言っている先生も、毎時間使いたいと要望が出ています。苦手意識を上回る効果があるからだと思います。高学年では発表する意欲や授業についてこようとする意欲が控えめになりがちですが、いい刺激になるようで、発表も増えました。また、指示が複雑になる段落分けや構造分析などを視覚的に出来るため、意見交換がしやすいと思います。いろいろなソフトが出ていますが、教科書会社が作った教科書がそのまま掲載されているものは、すぐに使えてとても便利ですね」と話す。
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■光村国語デジタル教科書
実践活用ガイド無償配布
「光村国語デジタル教科書1〜6年」には、スタンドアロン版と、ネットワーク対応版が用意されている。教科書の紙面をそのまま再現する機能、クリックひとつで挿絵や本文を拡大する機能、筆順アニメーション、動画や静止画などの豊富な材料、書き込みツールなどで、普通教室での一斉授業効果を強化する。
学校フリーライセンス価格各学年5万2500円(税込み)。「学校フリーライセンス」は、校内で利用するすべてのコンピュータで使用することができる。
現在、光村図書では、デジタル教科書の効果的な活用のポイントや使い方をまとめた「光村国語デジタル教科書」実践活用ガイドを制作中、5月末には完成予定だ。希望者には無料で送付する。
●問合せ
光村図書 http://www.mitsumura-tosho.co.jp/
プロジェクタに投影して発音練習 |
■「繰り返し」飽きずにできます
ネイティブスピーカーの
発音に慣れる
当日の授業は、5年2組、28名がオープンスペースに集まって行われた。まずアルファベットの歌「The Alphabet Song」やボディーアクションをつけながら歌う「Head,Shoulders,KneesandToes」の活動から開始。身体を動かしながら発声できる「歌」は、緊張がほぐれ楽しい雰囲気となり、導入として望ましい活動だ。歌のスピードが次第に早くなってくるに従って、子どもも歌と踊りについていこうと夢中になる様子が微笑ましい。
「ビンゴゲーム」では、英語で発音される数字を聞き漏らすまいと、真剣な様子。聞き取れず悔しがる場面もあったが、何度も聞いているうちに次第に聞き取れるようになっていく。
今日の課題は“I like〜”の使い方を知ること。まずコンピュータ画面のイラストから「好きな食べ物」を選択、コンピュータからの発声に合わせて“Cake”“Juce”“Pizza”などと発音を繰り返す。キャラクターの音声は、児童と同じ年代のネイティブスピーカーだ。歌やゲームなどの活動で十分にのどが開いている子ども達の発音は、とにかく元気だ。
次に、児童らが前に出て、それぞれ好きなものを英語で言う。“I like Juce!”と、画面の食べ物から選ぶ児童が多い中、“I like Doraemon!”などと自分の好きなものを言う児童もおり、教室が沸いた。
学習の振り返りでは「ビンゴ」を活用。今日の学習の中に出てきた食べ物の単語を「ビンゴ」の紙に書かせ、(英語でも、日本語でも可)ネーティブスピーカーの言葉を流し、ビンゴゲームを行った。
授業者の青木教諭は「コンピュータソフトの活用のメリットは、教員の能力や子どもの実態に合わせた活動が可能なこと。ゲームや歌、身体表現を入れて楽しく活動するのは、初等教育期には合っている。今回使用したソフトは、繰り返しよく聞く活動が飽きることなく出来る点が良かった。これからの英語活動は、クラスの実態をよく知っている担任が行うべきだと思う。しかし、慣れないうちは照れが出て、普段の授業ペースがなかなか出せず、また、英語らしい英語を教師が使うことができない。何度も授業を行うことでペースを掴めると予想している。その活動の支援となるものの1つとしてコンピュータの活用は、大変有効だと思う」と述べた。
ビンゴゲームでヒアリング | 「好きな食べ物」を発音練習 | 身体表現で英語を学ぶ |
▼小学校英語・国際理解「Say Hello!」
児童が個人・グループで楽しく学習を進められるよう、ゲームをはじめに10のコンテンツが用意されている。
基本的な指示は全て英語。
価格 1万2600円(税込)
▼JuniorHrizon Hi! English デジタル掛図
小学校英語活動用副読本「Hi!English」に準拠。普通教室において、マウス操作ひとつで紙面上の英語の音声や歌、アクティビティを再生できる。
校内フリー価格 5万2500円(税込)
●問合せ
東京書籍 http://www.tokyo-shoseki.co.jp/multi/index.html
八木沢薫先生、自宅の庭にて |
神奈川県郊外にある八木沢先生の自宅には、多くの種類の植物が植えてある。パセリやみかんの木、キャベツやチンゲンサイなどはキアゲハやアゲハ、モンシロチョウの「食物」になる。ソラマメやサヤエンドウなど実がなる食物は、その成長過程を撮影するためのものだ。ウサギや文鳥も飼育している。全て「いざというとき撮影できるよう」手製の小屋は仕組み済みだ。
自宅のスタジオで“接写”中 |
土日は8kg近くの重さがあるカメラや望遠レンズなど機材類を担ぎ、「そろそろヒトリシズカが咲いている頃」と思いながら散策、被写体を探す。この5年間で、2万ショット以上を撮りためた。先日、宮ケ瀬ダム(神奈川県)に隣接する公園で、ウスバシロチョウの幼虫を見つけた。
生徒が被写体を持ってくることもある。「先生、トカゲを捕まえたから撮影して」。今、「動き回るトカゲをどうやって生きたまま撮影しようか」思案中、トカゲはビンの中で待機中である。公園で拾ってきた庭の桜の木に仕掛けを作ってアブラゼミに卵を産ませた。ノコギリクワガタの卵は、無事に孵化、現在飼育中だ。1年待っても孵らなかった卵や羽化に失敗したキアゲハ、撮影順番待ちをしている実験器具などが自宅の一角を占める。
「教室でダンゴムシの説明をし、いざ子どもたちに捕獲させてみると、ワラジムシを捕まえてきたりする。細かい説明にも耐える画像を子ども達に提供したい、と撮影し始めたのがきっかけです。子どもの興味関心にすぐに反応できるようなるべくたくさん撮影したかった。教室に持ってきても小さくてよく見えないものや、教室になかなか持ってくるのが難しいものを中心に、毎週撮影に歩くようになりました」。当時より、ノートPCに撮影データを入れたまま持ち歩き、見せたい時にはテレビ画面に投影、すぐに見せていた。
「ここに卵があります」 |
「見せたいものが、子どもに分かりやすく、シャープに写っている、そんな写真を心がけています」。
種や昆虫の卵などを拡大、表面の模様も綺麗に撮影出来るよう、実体顕微鏡並みの拡大接写レンズも用意。撮影スタジオは自宅の一角だ。レフレクタランプを3つ以上、蛍光灯も駆使し、影の出ないよう撮影する。
新版「たのしい理科」教師用指導書別「IT活用編」には、先生が毎週のように撮影、取りためた貴重な
瞬間のデータが満載。現在、HPで体験版データを公開中。HP上で連載も続けている。
新版「たのしい理科」3〜6年生用 「IT活用編」販売開始 |
▼新版たのしい理科 教師用指導書別冊
『IT活用編』
価格 3年〜6年各学年1万8900円(税込)
●問合せ
大日本図書C&Vセンター 電話03−3561−3550
http://www.dainippon-tosho.co.jp/
【2005年5月7日号】