学校法人で如何に児童・生徒の安全を確保するかが今、注目されている。神奈川県横須賀市のうわまち幼稚園では、池田市の事件以来監視カメラを8台導入、人感の無線アラームセンサーを導入するなど、園児の安全管理に力を入れている。昨年4月には、携帯メールで保護者に緊急連絡を行うシステム「携太」を導入した。「安全が保障されてこその幼稚園教育」という田中なごみ園長と田中貴章主事に、「携太」導入のきっかけとその使用方法、導入効果を聞いた。
■導入のきっかけは
地域で起こった火事 園のすぐ側で火事が起こった時のことです。電話連絡網で保護者に「至急お迎えに来て欲しい」と回したところ、不在で連絡のつかない家庭が非常に多く、200人の園児の家庭に連絡が徹底したのはその3時間後。その間ずっと職員4人が電話4台に張り付き、対応に追われていました。保護者からの問合せも多く、電話のベルは鳴りっぱなしで混乱、連絡網は滞り、本当に大変でした。
「緊急連絡」を徹底させるのに職員5名で3時間もかかっていては、一刻を争う時に大変困ります。もっと効率的に、確実に連絡を徹底させるシステムが必要でした。
そこで、携帯電話を使った緊急連絡網システムを導入しやすい価格で出来ないか、とTISさんに相談、私共の要望を伝え、メール連絡網「携太」システムが生まれたのです。
■メール連絡網で
停電でも確実に連絡 「携太」は、携帯電話を使い、緊急連絡を一瞬で保護者に伝えられ、かつ誰が確実に受信したのかが分かるシステムです。配信はコンピュータだけではなく、携帯電話からも緊急連絡を流すことができるので、避難先からでも「携太」を使った緊急連絡が可能です。
もうひとつ、携帯電話から連絡できることの重要なメリットは、停電時にも確実に連絡できる、という点です。コンピュータのみの配信システムでは、停電時には対応できませんから。
さらにサーバが大阪と東京2箇所に設置されており、万が一東京に大災害が起こって都市機能が停止したとしても大阪のサーバが機能し、確実に連絡ができる点も安心できます。
その園児の家族の「誰が」「いつ」そのメールを受信したのかをチェックできるチェックシステムは、大変重要です。
保護者の携帯電話や自宅あるいは職場のコンピュータアドレスなど、一園児につき5アドレスまで登録できるのですが、そのうちの一アドレスから返信が来れば、その園児の家庭には連絡済みである、とチェックされます。誰がいつ受信しているか、いないのかがひと目で分かるので、連絡の徹底を効率良く進めることができます。
■返信率は95%以上
導入費用も良心的 携帯電話への緊急連絡は、月1回程度練習を行っています。非難訓練同様、いざというときスムーズに機能を活用できるよう、日頃からの練習がお互いに必要だと思います。
初の試験メールへの返信率は75%でしたが、2回目以降は常に返信率95%以上。残りの5%には、電話で直接連絡を取ります。保護者はメールアドレスを頻繁に変えますので、月1回の定期的な試験メールはその確認にもなり、重要なポイントです。導入費用も大変良心的なので、保護者に負担をかけず導入することが出来ました。
不審者1人でも、神経を尖らせる必要のある時代。幼稚園は女手が多く狙われやすいので、考えられる限りの防犯対策を行っています。「携太」もそのひとつ。「携太」があれば、火事のときあんなにハラハラドキドキしなかったのに、と思いますね。横須賀市で生まれた技術が全国に広く浸透してくれれば嬉しいですね。
【2005年2月5日号】