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2005年以降の教育を考える
学力の保証、現場へのサポート
“根本”解決する教育を

 前回は次期学習指導要領と・情報・の問題を中心に文部科学省初等中等教育局教育課程課の常盤豊課長(前・広島県教育長)にお話を伺った。第2回は、引き続き常盤課長に、学校における総合的な学習の実施、学習指導要領の記述の問題などについて話を聞いた。


 −−昨年11月の教育委員会委員長・教育長会議で、義務教育費国庫負担金の財源保証は当然として、もっと高いレベルの学力を国として保証してほしい、という意見が出ていた。どう対応するのか。
 「一つは、学習指導要領は基準性を踏まえ、基礎的・基本的な内容の確実な定着を図った上で発展的な学習を取り入れていくことができる。また、義務教育費国庫負担金の見直しとの関連で教育内容についても国がきちんと役割を果たすべきだ、という議論の一環として、河村前大臣の「義務教育の改革案」や中山大臣の経済財政諮問会議での説明において、義務教育の到達目標の明確化や、全国的な学力調査の実施の必要性が示されている。そういう中で教育内容についても国として関与すべき部分と地方に任せる部分と、その在り方を検討していく必要があるのではないか、という流れになっている」
 

 −−学校現場からよく出てくる意見として、教育改革により、総合的な学習の実施などが降りてくるが、それに対する明確なサポートがなく、やりきれないという声があるが。
 「従来、教育課程について自由度を高めてほしい、自分たちが責任をもってやりたい、というのが学校現場の長年の主張だった。現在、個々の学校、地域において、学力問題や生徒指導の問題は全く状況が異なる。そうした中で、学校が主体的に教育課程を編成して、自分たちで中身を高めていけるようになっている。そこで学校現場では自分たちでは使いきれない、返上してほしい、という話に本当になっているのか。私はそうは認識していない。
 また、総合的な学習について、文部科学省がモデルカリキュラムを示す、というのは総合的学習の時間の趣旨に合致しない。一方で、教科について教員の指導力が不十分であり、教材に関してサポートが必要だいうことは考えられるが、それこそ地方の自主性の中で、都道府県の教育委員会の教育センターなどが取り組むべきではないかと思う。ただ、教科書がない中で、先生方が子どもたちの能力を高める指導方法に慣れていないことは事実だと思う。そういう指導力を高めることについては、文部科学省としてももっと踏み込んで考えていきたい」


 −−学習指導要領の記述の仕方について。指導内容が羅列されているだけで読み取りにくい。学校の先生は、行間を読み取ることが必要になっている。 
 「学習指導要領については、大綱化、弾力化するように、という要請があり、そういう形になっている。それを解説書で理解しやすいように補足している。
 その当たりも含めて、到達目標の明確化という課題も出てきているので、学習指導要領の記述の在り方について、検討していかなくてはならないだろう」

 −−広島県の教育長を務め、今年度文部科学省に戻って思うところは
 「県の教育委員会にいた経験から、県レベルで持っている情報は非常に限られたもので、その中で文部科学省の進めている施策について理解しにくい点がある、という意見があることは私自身承知している。だからこそ、国民の方々にうまく理解していただける方法を工夫していかなければいけない。
 その一番重要な道筋はまず、都道府県の教育委員会に十分理解していただくことなので、きちんと説明していきたい。その場合、施策の結果だけでなく、施策の背景を丁寧に説明することが非常に大切である。そうしないと、文部科学省は唐突に新しい施策を出した、と受け取られてしまう」


 −−街頭や電車内で若者が年長者を敬わない、暴力や殺人が日常的に起こっている、といった殺伐とした中での教育。日本の教育の土台を作っていく教育課程課の課長として、これからの抱負について。
 「都道府県教育委員会に直前までおり、現場の今の実態について理解している方なので、それを踏まえて取り組みたいことが一つ。もう一つは、根本的な部分が問われている。例えば、電車の中で隣にお年寄りが来たときに、それに対して拒絶的な態度を取ってしまうということは人間としての根本的な問題である。長崎県佐世保市の事件も、人と人とのコミュニケーションの取り方について十分だったのか。我々が思っている以上に、根本的な部分について今の子どもたちは十分な経験やスキルを持っていなかったりすることがあると思われる。その根本的な部分にきちんとアプローチできるような、教育が重要だと思う」



【2005年1月1日号】