連載 教育ICTデザインに想いを込める

【第11回】テレビ会議で合同授業・協働学習 <三好市立下名小学校中川斉史教頭>

人口減少が予測される中、教育活動の多様化に遠隔授業が有効な手立てとして考えられている。徳島県の最西端に位置する三好市では平成27年度、文部科学省の「人口減少社会におけるICTの活用による教育の質の維持向上に係る実証事業」に採択され、市内の3小学校をテレビ会議システム等でつないだ双方向型の協働・合同学習に取り組んでいる。そのうちの1校が下名小学校だ。同校の中川斉史教頭に、これからの遠隔授業に必要なシステムやノウハウについて聞いた。中川教頭は教育情報化コーディネータ1級も持つ。

下名小学校1
遠隔で協働・合同学習を行っている(下名小)

前任の東みよし町立足代小学校では、総務省のフューチャースクール推進事業や校務の情報化等、教育の情報化とその活用に先駆的に取り組んできた。現場教員という立場と、教育情報化コーディネータ(※1)の1級取得者という専門家としての知見を活かし、教育行政や学校現場、機器やシステムを提供するメーカー等関係者間の調整や、目的に適う環境整備、有効活用のための課題把握と改善等に手腕を発揮している。

テレビ会議で
 普段の授業を

今回の実証事業の特徴は、同じ地域の学校間をICTでつなぎ、協働・合同学習に取り組むというもの。遠距離での交流授業で見られる特別なものではなく、日常的な活用を想定している。この「日常的」をどう捉えるかが環境デザインに反映されている。

「子供たちが普段の授業のように学習に集中して取り組むためには、その場にいない相手への意識の持たせ方が重要。相手の存在を認識するだけではなく感じることができるICT環境を求めた」と話す。

3つの小学校をつなぐために、クラウド型のテレビ会議システムと授業支援システム、複数台のiPad Proを整備。今回の環境をデザインするにあたり、テレビ会議システムの選定に一番時間をかけたという。テレビ会議システムは、各学校に「教卓」「教室全景」という2つのカメラを設置して利用する。これにより、教卓に立つ授業者と相手校の全体の雰囲気を把握できるようにした。

下名小学校2
iPadProで相手校の児童とグループ活動

授業支援システム上には3校共通の連絡用ツールが用意され、通信状況や授業の様子などをリアルタイムで共有する。

iPadProは、およそ2人に1台の割合で導入され、授業中は標準で搭載されているTV電話機能(FaceTime)を相手校のiPadProと常時接続している。今回取材した授業では、下名小学校に4台のiPadProが設置され、7人の児童が1、2名で利用していた。

姿と声をクリアに
 伝える環境を整備

子供たちが相手を感じ、活動に集中できるように、随所に細かな工夫が施されている。

イヤフォン端子には分配器が取り付けられ、各自がイヤフォンを挿入することで児童や教員が同時に相手校からの音声を聞くことができる。音量調整が省ける上、他のグループの聞き取りの妨げになることもない。カメラ部分には広角レンズアダプタが取り付けられ、児童の顔をしっかり写している。iPadProを使用しない場面では、紙のカバーで画面を覆う。電源ONの状態とFaceTimeの接続を維持して、素早い再開に備えるためだ。

大切なのは遠隔地とつないだ活動を授業として成立させること。そのためには「主として授業を進める教員と相手校の児童の姿や声がクリアに伝わることが必要条件」という。「遠隔授業では、音声の違和感やノイズの軽減が重要。一斉指導の場面ではマイクスピーカーシステム(※2)を活用し、子供同士の密な活動ではiPadProのイヤフォンを活用している。相手が映る画面が大きくて高画質なので、その場にいない相手を感じて学習に集中できる」と話す。

学校間の連絡調整も重要だ。システム的な調整だけでなく、授業進度や学習内容の共有が不可欠だ。中川教頭は「多忙な学校現場でも取り組むことができるノウハウを模索したい」と話す。

(※1)教育情報化コーディネータ=学校や高等教育機関など教育の情報化をコーディネートできる人材を認定する制度。1級、2級、3級があり、1級は国内で3名のみ。(※2)マイクスピーカーシステム=YVC‐1000とYVC‐300(YAMAHA)を規模に応じて使い分けている。

 

【2016年3月7日】

 

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