新連載

学校評価で学校改善(1) 新しい学力の育成は定期テストの廃止から

小山宣樹
小山宣樹
11年間教育行政に従事。工業高校学校長として学校改革に着手。現在全国工業高等学校長協議会で文科省委託事業の運営委員。

新しい学力観を視野に入れた教育改革の推進が求められている。しかし現場からは、時間がなくて新しいことに着手できない、という声をよく聞く。この理由は、受験対応型の教育システムにある。そこで大学入試が変われば良いとの発想になる。しかし、それで解決するだろうか。もっと発想の転換が必要だ。

そこで、中間・期末考査をなくすこと、それに代わり生徒のやる気を引き出す到達度テストの導入を提案したい。

高校においては、新しいテスト「高等学校基礎学力テスト(仮称)」は2019年度から実施される予定だ。新テストは到達度テストとして何回でも受けることができ、希望する学校ごとに受けられるようにする方針で、大学の推薦入試やAO(アドミッション・オフィス)入試で大学に進学したり、就職したりするためのものという位置づけだ。

中学校でも同様に、中間・期末考査に替えて到達度テストを導入すれば良い。何度でもチャレンジできると、自分が思う成績まで到達しようとするため、能力の伸びが期待できる。さらに中間、期末考査の廃止により、年間で150時間の授業時間と50日の部活動時間が確保できる(和歌山県立和歌山工業高等学校のカリキュラムで計算)。教職員や関係者に話したところ賛同者は多かった。

授業時間が確保できれば、新しい学力観に基づく授業も導入しやすくなり、部活動の連続性による競技力の向上と定期的な休養も可能になる。

このような仕組みを導入するためには、データベース(テスト問題の蓄積場所)の構築と無線LAN環境、タブレット端末が有効である。問題作成には、業者の支援も必要だ。

データベースには、難易度(5段階)別に作成した問題を沢山入れておく。無線通信機能を備えたタブレット端末から問題を取り出し、解答する。CBT方式を導入することで、正答の時は、問題の難易度が上がるようにする。この仕組みは、自分が納得するまでやれる自己評価観の育成や、PISA型学力や21世紀型学力に対応した授業時間の増加にもつながる。小学校においても同様のテストを導入で、同じ効果が得られるはずだ。

この中間・期末テストの廃止案は、多くの解決すべき課題があった県立工業高校時代における様々な学校改革を踏まえたうえでの提案でもある。次回はその工業高校時代の事例を紹介する。

 

【2015年11月2日】

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