永野和男教授 |
過去7回にわたり全国各地で活躍しているICT支援員を取材してきた。ICT支援員と一口に言っても業務内容は幅広く、求められる能力も様々だ。その能力を認定する試験が昨年6月からスタートしている。ICT支援員能力認定試験を主催しているNPO法人情報ネットワーク教育活用研究協議会(以下JNK4)の理事長を務める永野和男教授(聖心女子大学)に、試験創設の経緯や今後の展開について聞いた。
■能力認定試験創設の理由
JNK4では2001年より「教育情報化コーディネーター(以下ITCE)※」の認定試験を主催してきた。ITCEは教育委員会や関係企業など教育現場の情報化に関わる人や組織の間に立ち、より良いICT環境整備の為のオーガナイザー的な活動を行う人材として位置づけられている。
一方、ICT支援員は、より現場に寄り添う形で活動する。総務省のフューチャスクールでは実証校に1名が常駐し成果を上げ、その存在と重要性が認知された。
永野教授は試験を創設した経緯について「ICT支援員の配置について、ボランティア的活動ではなく予算を投じた事業として制度化する中で、ある程度の能力を保証する必要性が高まってきた。学校現場に入り、日常的に支援する為には、技術的な知識に加え、教員や子供たちとのコミュニケーション能力が重要である。これらの能力を正当に評価する為に、新しい方式の認定試験が必要になってきた」と語る。
■資格試験の内容とポイント
試験はA領域「技術的分野と教育分野」とB領域「教員への説明場面の動画提出」の2つで構成されている。
A領域はICTの正しい知識と教育行政や学校現場、著作権など関係法令の理解が求められる。
この試験では、ビデオ提出によるコミュニケーション能力の評価をしていることにも特色がある。例えば「職員室のプリンターに印刷ができないと連絡があった。対応方法を教員へ電話で伝える様子を動画で撮影し提出する」といった内容だ。複数の審査員が全受験者の動画を視聴して、説明力、対応力などを評価している。
興味深いのは、技術的知識が豊富な人材が必ずしも高評価ではないという点だ。
専門用語を正しく使い、正確な説明が大切だと思われるが、言葉や表現が難しければ教員に伝わらない。相手の立場で考えた内容かどうか、安心させる表情や口調かどうか、といった部分が評価されている。
■増える企業の受験者
試験は6月と10月の年2回。過去3回の試験で約200名が受験。そのほとんどは、ICT支援員業務を受託している企業が団体で受験するケースだ。社内評価だけではなく、ICT支援員の入札における必要条件として示される事もある。試験の認知が広まれば、受験者はさらに増えていくと予想されている。
■支援能力向上の機会を提供
ICT支援員に求められるコミュニケーション能力を育成するには、学校の実情や文化、教員の考え方などを理解する必要がある。
今後について、永野教授は「ITCEの上級者で組織するITCE2級の会と連携し、B領域の場面設定に隠れている部分を読み取り、教員への伝え方や対応方法について議論したり、説明する姿を参加者同士で評価し合うようなワークショップも検討していきたい」と話す。
今後、教育の情報化が進むにつれ、現場から求められるICT支援員。
1人でも多くの認定者が誕生し、教員や子供達から信頼され、頼りにされる存在になることを期待している。
【NPO法人情報ネットワーク教育活用研究協議会】
1997年「ネットワーク教育利用促進研究協議会」として発足。
2001年「情報ネットワーク教育活用研究協議会」に改名
2003年 特定非営利活動法人(NPO)として認定され、現在に至る。
※ 教育情報化コーディネーターには、1級、2級、準2級、3級のレベルが用意されている。1級は国や都道府県レベルの長期計画を設計、提案するだけでなく運用上の課題解決ができ、ITCEの指導者としても活躍できる人材。2級は市町村レベルの数年単位の設計、提案、助言ができる専門家人材とされている。
【2014年10月6日】
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